【第8回】つくる人を増やして、世の中を変える (株)オクタケ 代表取締役 奥村 高志氏(福井)

奥村高志社長

(株)オクタケ 代表取締役 奥村 高志氏(福井)

 (株)オクタケ(奥村高志代表取締役、福井同友会会員)は、オクタケグループの1つ。クレーン・据付・運送を行う会社です。奥武建設工業(株)の重機部として始まったこの会社は、1993年に奥村氏の入社と同時に法人化して分社。現在の社員は41名ですが、当時はわずか5名でした。

採用をはじめたきっかけ

社屋

 「クレーン1台、1日いくら」で請け負う仕事なので、数を増やさないと利益も増えません。数を増やすためには運転士も育てなければならず、仕事を受注し続け一定の稼働率を確保する必要もあります。バブル経済が弾けた後、生き残るためにはこの方法しかないと決断しました。周囲は不景気で事業縮小や廃業をしていく中、県内に仕事がなければ県外の同業者を頼って出張に行き、現場で運転士を兼ねながら空いた時間は営業の繰り返し。睡眠時間を削り、死に物狂いで営業をし、仕事を増やし、機械を増やし、社員を増やしていきました。

リーダー育成の取り組み

 社員が20名を超えたころから、伝達事項がうまく伝わらず、ミスが目立つようになりました。一人でできる限界を感じた奥村氏は、リーダーを育てることにしました。「理念経営」に出合った奥村氏は、まず主な仕事のリーダーを集め、現在の思いや今後の展望を伝えましたが、リーダーたちの反応は思わしくありません。しかし、そこは社長としてトップダウンで進めます。なかなか浸透しない中、毎週のように勉強会を続けていると、少しずつリーダーに変化が見えてきました。率先してリーダーだけで集まって話をするようになり、部下に伝達するために班を分けて全員が参加できる場をつくったり、そこで会社に対する意見や取り組みを話し合ったりするようになり、自発的に社会貢献で清掃活動をするようにまでなりました。「そうなったら、社長は口出しをしないで放っておくのが一番。たくさんの失敗や成功があって、初めて自分の意見や考えを持ち、行動するようになるものだから」とは奥村氏の言。基本的に奥村氏は、リーダーである役職者が話し合いで決めたことは、余程のことがない限り却下はせず、その代わり、自分たちでやると決めたことだからと厳しくチェックは入れています。

あってはならない事故を経て

 ただ、順調な時こそ落とし穴があります。1つの事故が起きました。奥村氏も社員も初めての経験でした。この事故から奥村氏も社員も安全というものを今一度見直しました。コンピュータ解除キーの回収、作業前の計画書、送り出し教育など、安全なくして会社の存続はないと、安全を第一優先に管理体制を見直すことに。また、松下幸之助氏の言葉に「事業は人なり」とあるように、どんなに素晴らしい機械を入れても、どんな立派な歴史や伝統、仕組みを持った会社であっても、最終的には人次第だと考えた奥村氏は、さらに人材の教育に力を入れていきます。新入社員には、新入社員研修として外部でのビジネスマナーを基礎に、即戦力の技能を身に着けるために資格取得学校に1カ月ほど通い、そこで約6種類の免許を取得して帰ってきます。この学校にはコースがいくつかあり、同社に入社して1~2年くらいしてから建設業の基礎的な部分を学びに行くようにもなっています。

世の中を変えていける会社に

 最近の建設業は深刻な人手不足です。就業者数は年々減少し、ピーク時から約28%も減少しています。年代別で見ると、55歳以上が全体の約34%、29歳以下が約11%と年々高齢化が進行しています。これから10年後を見据えた時、このままでは今の55歳以上の就業者の大半は引退することに。しかし、今の若者の就職先の選択肢には入っておらず、まず選択肢にどう入れるかが課題です。そして同社では、高齢化しないよう、年齢構成を平均化するように、若い人材を毎年採用するようにしており、現在55歳以上が23%、29歳以下が20%となっています。

 そんな同社の取り組みにこのようなものがあります。まず、動物柄のクレーン車の採用。第1弾がトラ柄、第2弾がゼブラ柄で、そこには3つの狙いがあります。一つ目に、クレーンという職種の認知度アップ。二つ目に、運転士の意識の向上です。注目されることで、安全運転を心がけ、クレーン自体もきれいに保ち、何よりも本人のモチベーションがアップします。三つ目に、会社の宣伝です。普通はCMや広告を出すのでしょうが、同社にはクレーンという大きくて目立つ広告塔が身近にあり、そのアイテムを最大限有効活用したのです。次に、大型商業施設でのイベント参加。子どもたちがクレーンの運転席に座り、運転士を体験してもらう企画を実施ししたところ、喜ぶ子どもたちの「カッコイイ」「ありがとう」の声を受け、社員も非常に嬉しそうだったと奥村氏は振り返ります。

 最後に「こうしたことができるのも社員の協力があったから。自分一人では到底できなかった。社員にきっかけをつくり、社員がどうしたら仕事がしやすいかを考え、より多くの情報を拾い、どう会社の舵を取るかを考えるのが社長の役目。こうして、自分たちで考え、動く社員のおかげで自分は今、福井同友会に参加したりいろいろな方とかかわりを持ったりする時間ができ、勉強させてもらっている。そこで得られるヒントは非常に役に立つものばかりで、それを生かし、今後オクタケは、社員と共にいろいろなことに挑戦し、理念通りにつくる人を一人でも増やして、世の中を変えていける会社にしていきたい」と奥村氏は語りました。

トラ柄クレーン

社員さんの声

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氏名:酒井 一幸さん(入社5年目)
クレーンオペレーター 

Q1.仕事内容は?
 クレーンを使用し、鉄骨や木造の建物づくりを行っています。スーパーマーケットなどの商業施設から一般住宅まで、いろいろな建物を手掛けています。

Q2.入社した理由は?
 高校に来ていた求人票を見て新卒で入社しました。説明会や面接での雰囲気が明るくてフレンドリーだったのが好印象でした。

Q3.やりがいを感じるときは?
 鉄骨や木造の建前を行い、完成した建物を見たときは、やりがいを感じます。入社当時お客さまとコミュニケーションを取るのに苦労しましたが、少しずつ慣れてきて、「ありがとう」「またお願い」と言われるようになったときにも、手応えを感じました。

会社概要

設 立:1993年5月
資本金:1,000万円
事業内容:クレーン工事高所作業車リース、重量物運搬設備機械重量物据付、鉄板等リース
社員数:41名
所在地:福井県福井市下河北町8-17-2
TEL:0776-38-3031
URL:http://www.okutake.jp/company/okutake/