【第38回】「社員育て」は自分たちで (株)斉藤光学製作所 社長室 齊藤 大樹氏(秋田)

齊藤大樹氏

(株)斉藤光学製作所 社長室 齊藤 大樹氏(秋田)

わが社の実態を把握

社屋外観

 (株)斉藤光学製作所は、1977年に腕時計用カバー硝子を研磨加工する会社として埼玉県で創業・設立し、1985年に誘致企業として美郷町(みさとちょう)で工場の操業を始めました。今年で34年を迎えます。業種は、半導体用石英フォトマスク端面研磨および、酸化物単結晶研磨生産を手掛ける製造業です。もともと定期的に新卒採用をされてきた企業であったため、社内の教育体制の土台は一通りありました。しかし、会社に対する不満が積もり、「管理職から一般社員まで社員間のコミュニケーション不足、業務スキルや基礎知識の不足が見られ、社員がいきいきと働いている姿がないことにがく然とした」と振り返るのは、現社長齊藤伸英氏の息子、社長室の大樹氏です。2017年5月、大手化学メーカーを退社し、入社した際に感じた同社の現状でした。

本音を語れる信頼関係に積極的改革!

 会社に対する不満の鬱積(うっせき)はなぜ?と考えた大樹氏は、社員の思いや要求を言える社内体制が整っていないことが原因の一つだと理解しました。また、全社的な経営課題や情報の共有も図られておらず、管理職もまた会社の体制に不満を持っていることにも気づきました。

 その解決策にと考えたのが、全社の横断業務や事業戦略を構築する『社長室』の設置です。直接評価権限のない社長室主導(メンバーは大樹氏を含め3名)で、3カ月に1度全社員との面談を実施しました。他言無用で社員名を出すことはないため、社員からの本音が出され、会社の仕組みでおかしいと思っていることなどを声に出してもらい、速やかに対策に反映できるものから取り組み始めました。また会社全体にかかわる案件は経営会議にかけ、審議するという仕組みを整えました。その経営会議では全社的な課題や情報の共有はもちろん、月次決算を月初めの7日までにまとめ、迅速な経営判断ができる会議とし、管理職もしっかりと会社経営にかかわれる体制を作りました。「少しずつですが会社に対する信頼感を築き始めている」と大樹氏は言います。

企業の成長は『人』を育てられるか否かによる!

研磨の様子

 そのような関係性を築きつつ、これからは人を育てられる企業価値を持ち合わせない限り、企業の成長はなし!と悟り、「働きやすさ・働き甲斐」「人材育成」に注力する事を決意しました。そして従来の教育体制を再構築し始めました。採用から職場配属までの研修期間を13日間から29日間と変更し、一般教養の充実や、社会人スキルの内容には自分の考えをまとめて述べるプレゼンテーション研修を取り入れたり、技術的な専門知識への時間も強化しながら研修時間を充実させました。そのことによって、製造業務においては、素材や薬剤の特性を考えながら作業ができる為『単純作業要員』というネガティブ意識の解消につながっています。

「社員育て」は自分たちで

業務の様子

 さらには、社員のキャリアアップのための社内研修に取り組みました。社員同士で講師を務めながらワークショップを取り入れての試みでしたが、講師役の社員のレベルのばらつきや、社員が必要としている研修内容ではないなどの課題が浮上。社内体制の構築とともに個人のキャリアビジョンの紐づきを施した研修内容に変更し、再度挑戦しています。

 同社では、基本的に研修は社長室の人員で考えた内容で進め、外部業者や講師に委託しての研修は行っていません。なぜなら、「自社の社員を育てることに、よそさまに一から預けて育つのか疑問です。まずは自社における教育体制の構築にチャレンジしなくてどうするの?」と大樹氏。社員が講師を務めることにより、現業務の整理や人へ説明する力の向上に役立っています。

 秋田同友会の社員共育および共同求人委員会の研修会には、大樹氏が入社してから積極的に関わっています。2017年からの取り組みは始まったばかりですが、少しずつ社内が明るい雰囲気に変わり始めています。「社内での会議でも発言が多くみられ、2つの事業部間のコミュニケーションもよくなってきている」と大樹氏は言います。社内で実践した改革については、必ず従業員からのフィードバックを貰い検証し、次への対策を講ずるPDCAサイクルをしっかり回しています。

 また、自社の強みや社内の取り組みを外部に発信し、自社をアピールしてきたことで、地元の小学校から高校における職場体験やインターシップの依頼が増加しています。

 これからは、大卒採用ができる企業にと地域の企業と連携し、その仕組みづくりに力を注いでいます。

社員さんと

社員さんの声

社員さん

氏名:藤井 優和(ゆうわ)さん(入社3年目)

Q1.入社の動機は?
 地元の企業に就職したいと思い、工業高等専門学校に入学し、卒業研究のテーマでもあった研磨加工を行っている会社で働きたいと思っていました。決め手は、研磨企業でありながら、製品の生産のみでなく、前加工から検査まで一貫して行っているところと、製造だけではなく技術サービスとして研究や開発を行っているところに魅力を感じ入社を決意しました。

Q2.現在の仕事内容を教えてください
 モノを磨く「研磨」という作業を行っている会社ですので、生活の中でも身近に存在するガラスを磨いたり、普段触れる機会がないような結晶の材料を磨いたりしています。現在は加工業務のみならずインターンシップの担当者、社内広報担当として、HPの更新作業をするなど幅広い仕事を任せてもらっています。

Q3.社内の雰囲気は?
 10代から20代の若い世代が全社員の約35%を占めているので、これから就職してくる皆さんとも年齢が近く、仕事の話だけではなく趣味の話や日常会話などもしやすいと思います。作業を一貫して社内で行っているため、仕事の内容が幅広く、社員一人ひとりが自分に適した仕事を行える環境があることもわが社の魅力です。

Q4.働きがいは?
 特定のものしか研磨できないのではなく、あらゆる材料を研磨できるところ、また、それぞれの材料を効率よく磨くためのノウハウがあるところがわが社の魅力だと考えています。働きがいを感じるのは、今まで加工をしたことがない材料や、とても硬くて加工するのが難しい材料を、先輩たちからアドバイスを受けながら仕上げることができたときです。

会社概要

創 業:1977年
設 立:1977年
資本金:1,000万円
事業内容:半導体用石英フォトマスク端面研磨および酸化物単結晶研磨、半導体ウエハー研磨生産を手掛ける製造業
従業員数:63名
所在地:秋田県仙北郡美郷町本堂城回字若林118-3
URL:https://saito-os.com/