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【第39回】大工をめざす若者が集まる会社 (有)岩木建設 代表取締役 岩木 勝志氏 / 専務取締役 岩木 節子氏(青森)(2019.04.10)

岩木節子専務と岩木勝志社長 (有)岩木建設 代表取締役 岩木 勝志氏 / 専務取締役 岩木 節子氏(青森)

 青森県十和田市を中心に住宅建築を手がける(有)岩木建設(岩木勝志代表取締役社長・岩木節子専務取締役、青森同友会会員)は2010年から新卒採用に取り組み、紆余曲折を経ながら着実に採用を行っています。

新卒採用への取り組みを始めたきっかけ

 岩木節子専務が入社した24年前は、よくも悪くも職人気質の社員がほとんどでした。気に入らないことがあれば現場を放棄して帰ってしまうし、事務方と衝突することも日常茶飯事でした。2003年に青森同友会で学び経営指針成文化に取り組みましたが、そこで年代ごとに層を構築し技術の伝承と世代交代をしていくことの大切さを痛感しました。その後同友会での共同求人活動本格化に合わせて取り組みをはじめました。

 また、岩木勝志社長が若いころの大工職人は独立志向が強く、早く下積みを終えて独立したいと考える職人ばかりで、自然と工務店は請負で仕事をする一匹狼たちの集団になりがちでした。同社もベテランの職人が顔をそろえている状況でしたが、「自社の将来を考えると資格を持った常傭(じょうよう)の社員大工を育てていかなければいけない」と岩木社長は考え、新卒採用を決めました。

 同社が新卒採用に乗り出したときは、リーマンショック、東日本大震災と大きな出来事が続き、各企業が採用を控えていた時期と重なりますが、将来的な企業の永続を見据えた上で採用活動に踏み切りました。

取り組む中で変えたこと

 同社はもともと日給月給制でしたが、新卒採用に取り組む中で順次月給制に移行しました。また、以前は社会保険の加入状況も各自まちまちだった状態を全社員完備に切り替えるなど、入社してくる人が不安を覚えないように待遇面の均一化と向上にも着手していきました。

 慣習的な面が強い職人の世界にあって、ルールを策定していったことも大きな取り組みです。以前は棟梁の権限が大きく、指示があるまで下につく職人は現場には指一本触れず、車の中で待機するのが常識でした。直行直帰も当たり前、雨が降れば自己判断で休みにしてしまう、といった具合でしたが、現在は朝礼の実施や日報の記入、当番制での事務所や作業場の清掃などで一日の仕事のリズムを決め、日々のルーチンワークを組み込むことができています。

 「腕前よりも人間性を重視した」(岩木専務)ことも大きな変化でした。「自分の腕一本で稼ぐ」といった気風が強かった当時は、現場の整理整とんやゴミやタバコの吸い殻の扱いも雑、顧客への応対も横柄な態度が見られました。同社では、若手大工や新卒で採用した社員をマナー研修会などに積極的に送り出して「人間力の向上に力を入れた」(岩木社長)ことで、徐々に社内の雰囲気がよくなり、今では施主や他社からも「岩木建設さんの社員さんは応対がとてもよい」と声を掛けられるようになっています。

 現在では建築大工技能士や施工管理技士などの各種資格の取得とマナー向上を並行して奨励し、総合的な人材育成に取り組んでいます。

 現在、同社の社員は事務に現場にと日々活躍しています。岩木社長は新卒採用を機に、指示命令系統の見直しを図りました。それまでは指示、指導などやり取りのすべてを社長から直接全社員に行う「2階建ての組織」だったものを、社長から先輩社員、先輩社員から新入社員へと伝達していく「3階建て」にしました。この事によって、より伝わりやすく、「組織」をイメージしやすくなりました。

新卒採用で変わったこと

社員さん01  「私も含めて各自の意識が一番変化しました」と岩木社長は語ります。組織体としての成長とともにコミュニケーションの大切さが浸透しています。岩木社長自身も「昔は頭ごなしにしかりつけたりすることもありましたが、それではせっかく採用できた若い人材が長く勤めてくれるはずがありません。理解できるように、こちら側も『伝え方』を意識してコミュニケーションを取ることを学びましたね」と笑みを浮かべます。

 現在、2名の新卒採用社員が在籍しています。入社9年目の佐々木明人さん(27歳)は父と同じ大工になることをめざし、地元の実業高校を卒業後に入社しました。「入社当時は社内の平均年齢も高く、年齢差からくる人間関係の難しさに悩んだこともありましたが、今はそんなこともなくなりました。お客様に喜んでいただくために自分の技術を磨き、自分が携わった家屋に自信を持てるようになりたいです」と佐々木さんは語ります。

社員さん02  佐々木さんの3年後輩で小学生のころからものづくりに興味を持ち、大工になることをめざしたという入社6年目の三田貴士さん(24歳)は「年齢差からくるギャップを感じずにやってこられたのは、先輩の佐々木さんが気にかけてくれて、コミュニケーションを取ってくれたからだと思います。今はそこにずっと残っていく家をつくっていることに充実感を覚えています」と明るく語ります。

 2019年春には青森同友会が発行する企業情報冊子「WING」を見て応募してきたという新卒者も加え、(有)岩木建設の採用、育成、成長の輪はますます広がります。

会社概要

設 立:1956年
資本金:400万円
年 商:2億円
事業内容:建築・リフォーム・土木等
従業員数:社員7名、パート1名
所在地:青森県十和田市洞内井戸頭175-1
URL:http://www.iwakinoie.co.jp/

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