【第2回】赤石さん・大久保さんに背中を押されて (株)土橋製作所 代表取締役社長 土橋 悦子氏(山梨)

土橋悦子社長

(株)土橋製作所 代表取締役社長 土橋 悦子氏(山梨)

社屋外観

 「土橋さん、自己実現だけでは小さいですね。同友会はもっともっと大きな志があるんだよ」。故赤石義博・中同協会長(当時)に会社の現状と今後のあり方を話した際に土橋悦子社長がかけられた一言です。

 1996年、山梨同友会の設立準備会に参画したときから土橋氏の経営者としての学びと経営実践が始まりました。

 (株)土橋製作所は1951年に父である先代が旋盤一台で創業した会社です。今では半導体製造装置の金属部品の切削加工、自動化設備の設計製作など幅広くてがけ、入会当初1億円の売上が現在では20億円を突破し、従業員数も70名を超えるまでになりました。

 30年ほど前に土橋氏が実家に戻ったころは円高不況の最中。月1千万円の売上が80万円まで落ち、銀行借入も限界に達する中で土橋氏は営業に繰り出します。必死で駆けずり回り、何とか図面をもらっては夜中に納品するという厳しい毎日でした。仕事の目途が立つ中で1989年に法人化に踏み切ります。その時の思いは「銀行からお金を借りてくださいといわれる会社にしたい」というものでした。

学ぶとは素直な心で

社内の様子

 当時、10名いた職人からは「どうせ社長の娘だから」という冷たい目を向けられることもありましたが、就業規則を作成し、正月明けに社員を前にして「この就業規則に沿って会社を経営していきます」と宣言しました。徐々に仕事量も回復させることができましたが、忙しくなったらなったで、職人からは不満の声がでます。お客様の納期に応えなければ会社の未来はない。何とかしなければ、と悩んでいた時に同友会に出合いました。

 当時を振り返って「同友会3つの目的に私は共感しました。よい経営者になりたい、よい会社をつくりたい、よい経営環境をつくりたい、と一心に思っていたことを思い出します」と土橋氏。

 入会後には中同協定時総会や中小企業問題全国研究集会、役員研修会などどこへでも参加し、何のために経営するのか、どんな経営者になるべきなのか、綿が水を吸うように学び、会社で実践の日々でした。

 故大久保尚孝・北海道同友会代表理事(当時)からの「土橋さん、学びとは素直な心であることだよ」との一言が忘れられないと土橋氏は言います。

厳しくて温かい企業文化

 山梨同友会入会後、3年から4年かけて現在の経営理念に辿りつきました。経営理念は、下記の通りです。

○お客様、社会に信頼され、お役に立つ強い企業を目指します。
○仕事に誇りと喜びを感じ、みんなで幸せになる企業を目指します。
○仕事を通じて成長し合い、厳しくて温かい企業文化を創ります。

 土橋氏は、社員が幸せになり、よりよい世の中にしていきたい、またよりよい世の中をつくっていける社員に育ってほしいと「厳しくて温かい企業文化」にこだわります。

 同社では従業員全員が内部監査の資格を持ち、経営方針や経営計画の進捗管理、社内委員会活動などのPDCAを回しています。部門責任者が前年対比で数パーセントを超える数値計画を提出してきた際には、はっきりとその根拠を問います。「この数値目標で会社が掲げる方針を達成できるのか、他の社員に自信をもって発表できるのか」と。一方では社長も例外なく社員から監査を受けます。「経営者として今期目標に取り組んだ成果をどう評価していますか。経営理念は社員にどのくらい浸透していますか」と。

今日の「こんちくしょう」は10年後の「ありがとう」

 2017年には主要取引先からサプライヤー特別表彰を受けました。その表彰状には「貴社は独自の経営理念に基づく生産改革を継続的に展開し…」という一文が入っていました。お客様が自社の経営理念を理解し、それを評価してくれました。従業員が経営理念を自らのものとし、日々の仕事に取り組んでいる成果でした。この特別表彰は今年(2019年)も受賞となりました。

 「同友会の学びあいは本当にありがたいです。まさに鋤柄修・中同協前会長の『今日のこんちくしょうは、10年後のありがとう』ですね」と笑顔で会員に語りかけています。

社員さんたちと

会社概要

創 業:1951年
設 立:1989年
資本金:1,000万円
従業員数:70名
事業内容:精密機械加工部品(主に半導体製造装置関連)、各種産業機器設備の設計開発および製作
所在地:山梨県笛吹市八代町増利五反田365-1
URL:http://www.dobashi.co.jp/