【第3回】同友会は学び方を学ぶ会 橋本電子工業(株) 代表取締役 橋本 正敏氏(三重)

橋本正敏社長

橋本電子工業(株) 代表取締役 橋本 正敏氏(三重)

 松阪市東部、高須町の松阪流通センター内に所在する橋本電子工業(株)(橋本正敏社長、三重同友会会員)は、医療機器をはじめとする電子機器の設計から製造まで担う会社です。三重同友会が創立(1984年)された翌年の1985年に会社設立(創業は1983年)と同時に入会。橋本氏の会社経営は三重同友会の歩みとともにあったといっても過言ではありません。橋本氏は「学び方を学ぶ」大切さを三重同友会に浸透させてきました。

ニッチオンリーワン商品の開発

ゼブラフィッシュ受精卵自動回収装置

 起業当時は下請け全盛時代。親会社が仕事・材料・設備・生産技術を準備した上で、人と場所のみ用意し生産だけを実施するというやり方が主流でした。これに対して橋本氏は研究開発志向で人、そしてモノ・資金・情報はすべて自前で準備してきました。1990年代後半には医療機器開発に着手し、2000年代末には標的組織にだけ薬を送り届ける、薬物送達システム(DDS)への活用をめざして「リポソーム(脂質人工膜)自動製造装置」を開発。近年ではマウス・ラットに続く実験動物として注目される「ゼブラフィッシュ」の卵を使用してタンパク質を24時間で作る「ハイスループットたんぱく質自動生産システム」および受精卵自動回収装置、また、マウスやラットに替わって、ゼブラフィッシを使って薬が効果あるかどうかを調べるために、多くのゼブラフィッシュを同時に観察できる「ゼブラフィッシュプレート」を開発。さらに、脳梗塞の早期発見・予防治療に役立てるため頸動脈にて微小栓子を検出する、超音波微小栓子検出装置「FURUHATA」などの開発を行っています。

 橋本電子工業(株)の強みは企画から開発・設計・製造・販売まで一気通貫で行うことができること。一方で弱みは販売力と企画力。ニッチオンリーワン商品を開発していますが会社の知名度が低いため販売につなげるのにとても時間がかかっています。市場をよく知るベンチャー企業と組むなど販売力をいかに高めていくかが課題となっています。

学び方を学ぶ

第1回海外視察研修会(三重)レポート

 橋本氏は同友会のよさを次のように語ります。「同友会は本音で話ができる。それからベテラン会員がえらそうなことを言わず、若い人の考え方を尊重するところ」。

 橋本氏の学びは県内会員企業のみにとどまりません。三重同友会の第1回海外視察研修会を企画し、ロサンゼルス・サンフランシスコを中心に米国の企業訪問を行いました。「経営者はグローバルな視点を持つことが必要であり、その上で地方は中小企業が引っ張っていくべきだ」と橋本氏は言います。

 「同友会でどのようなことを学び実践してきましたか?」そのようにたずねると、橋本氏は次のように話します。

 「私はエンジニアなので経営のことは何も知らなかった。同友会にすべて教えてもらったといってもいいかな」。そして次のように続けます。「学び方を学ぶ。これにつきるんじゃないかな」と。

 仮説を立て課題を解決する方法や手段を考える。その一つひとつのプロセスが大切だと話す橋本氏。具体的に「〇〇を取り入れた」という話が出てこないところに橋本氏の学びの深さがうかがえます。異業種の経営者の話を聞いて、自分の会社に置き換え、当てはめて考えること、他社の問題を自社に置き換えたらどうなるかと問うこと。「変化球ニ回転ひねり」ともよばれるこの思考のプロセス自体が、経営者として橋本氏を大きく成長させてきました。

 中同協設立50周年に寄せて「これからもずっと続いてほしいね」とやさしく微笑む橋本氏。「学び方を学ぶ」ことで会員や会員企業に大きく成長を遂げてほしいとの期待をしています。

会社概要

設 立:1985年
資本金:2,000万円
事業内容:電子機器の設計製作
従業員数:社員65名、パート27名
所在地:三重県松阪市高須町3866-12
URL:http://www.hashimoto-inc.co.jp/