【第9回】信じてやってみることが大切 イワイ(株) 代表取締役 岩井 保之氏(福井)

岩井保之社長

イワイ(株) 代表取締役 岩井 保之氏(福井)

社屋外観

 イワイ(株)は1946年、石川県金沢市広坂通りにて広坂タイプ商会として創業し、1948年に法人化し、三度の社名変更。広島県の(株)弘法での修行を終えた岩井氏が約30年前に入社したのは、イワイ(株) 福井支店(1950年開設)でした。その福井支店は、1992年に分社して福井イワイ(株)となり、岩井氏は専務取締役に就任(代表取締役は父親)。福井同友会への入会もちょうどそのころで、当時代表理事だった小林眞氏(福井コンピュータ(株)。故人)に誘われ、1993年に入会しました。その後、岩井氏は2005年に代表取締役に就任。2011~2016年には福井同友会の代表理事も務めました。

 現在の事業は、県内事務機器・印刷機部門と国内ASUKUL部門に分離。新たに新規商品販売部門が走り始めたところです。県内事務機器・印刷機部門において、同社はシェアナンバーワン。福井県内の学校が小中高大ほぼすべてお客様であることは強みになっている一方、学生減少による学校の統廃合でのパイの縮小がそのまま影響し、弱みにもなっています。

学び、実践してきたこと ~新卒採用

 「同友会で最初に学んだのは社員の採用です」と岩井氏。帰福当時、同社には12名の社員がいました。しかし、7年間で全員が退社してしまいます。中途採用のパッチワーク人事で対応するも、数年で退社の繰り返し。そんな時、先輩会員から学んだのは新卒採用でした。「仮に社員が平均40歳で、採用がなく10年経てば、平均50歳。さらに10年経てば、高齢化して会社はなくなってしまう。また、若い社員ほど伸び代は大きい。今は戦力にならなくても、10年後、20年後の会社を支え伸ばしていくのは、成長した彼らである」と。理屈は分かりますが、当初は半信半疑。20年前から始めた新卒採用は中途採用との併用でした。定期採用を続けるうち、10年ほど前からは新卒採用のみに。20年が経ち、新卒で入社した社員たちと会社の成長を目にしてきた岩井氏は「やはり本当の意味で会社を成長させてくれるのは新卒採用だった」と実感を口にします。

 そして、定期採用を続けたからこそ気づいたことも。「指導する側とされる側、社員同士の年齢が近い方が厳しく育てられるようなのです。自身の体験とのギャップが小さい分、どこまで厳しくしてよいかが体感的に分かるのではないか」とは岩井氏の分析です。

海外研修で信頼関係を構築

 また、できる年とできない年がありますが…と前置きをして語ったのは、毎年の海外研修。同社のそれは、実施毎に4人組をつくり、課題に沿っていろいろな物を見聞きし、それをレポートにまとめるものです。その根底には「普段の生活に流されていくのではなく、時間を取って物事を見聞きしてほしい。それも、今まで知らなかったもの、実際に見たことのなかったものを、いつもとは違った視点、日本とは違う価値観で見て、触れて、体験してほしい。そこからくる感動や新たな気づきは必ず人間としての成長につながる」という、学びと気づきを大切にする同友会の考えに通じるものがあります。

 きっかけは、新婚旅行でした。訪れた先、ヨーロッパでカルチャーショックを受けた岩井氏は、全社会議で「福井は国内慰安旅行を海外研修に切り替えたい」と発言。当時は分社前で、石川本社・富山支店・福井支店、どこにも前例がありません。しかし、大半が否定的な中、たった一人「じゃあ、それができることを証明してみればよい」と言ってくれたことで覚悟を決めました。

 実施していく中で意図していなかった成果もありました。海外では日本語が通じないことも多々あり、普段と異なる環境を特定のメンバーで過ごすことで、特別な信頼関係が構築されたのです。また、着実に回数を重ねることで、特別な信頼関係が幾重にも重なり、社内の結束力もより強固なものになっていきました。

障がい者雇用を実践

新聞記事

 そして、社内の結束力という点で外せないのが障がい者雇用です。実際に良い会社を見て、そんな会社を作るために障がい者雇用をやってみたことで、人を生かす経営がより分かるようにもなったと岩井氏は言います。「働くこと」ひとつ取っても、彼らは向きあい方が違うのです。健常者にとっては当たり前のことでも、彼らにとっては特別なこと。普段、「ありがとう」と言い続けている自分が「ありがとう」と言ってもらえる。そんな特別な場所は他にありません。これはひとつの例ですが、働くことに対して真摯に向きあう彼らの姿や交わした言葉から、健常者も本来はそうであること、そこで得られる「特別」のために働いていることを知らされます。それは、経営者だけでなく一般の社員も同じです。また、一緒に働く以上は、彼らのハンディキャップを把握し、できることできないことを理解して動かなければ問題も起きます。しかし、普段からそういったことに気を配っているうちに、健常者であっても得意不得意があるのだというところまで思考が及び、社内の助けあいの精神が強くなりました。

 岩井氏は「法律で定められているから障がい者を雇用しただけなら、きっと結果は違ったと思う」と振り返ると同時に、こうも述べました。「先輩経営者が勧めてくれたお陰です」と。「やってみて得られたものがあるから、成功する可能性が高いから『やった方がよい』と先輩経営者は言うのです。それが、必ず成功するわけではなく、全く同じものが得られる訳でもなく、やってみないと何が得られるのか分からないのは、会社の置かれた状況が異なるから。けれど、信じてやってみることが大切なのです。そして、そうした先輩経営者に出会えたのは、同友会に入会したから。経営者として成長するために、外の世界、自分の知らない世界に足を踏み出す。その第一歩が同友会に入会することだったのだと思う」と岩井氏は話を締め括りました。

同友会への期待―中同協50周年に寄せたメッセージ

 同友会運動も会社と同じで、続けていくことがこれからもたくさんの「よい会社」と「よい経営者」をつくっていくことだと信じています。先輩会員の方々、事務局の皆さん、誠実でやさしい方ばかりでした。50年の人と歴史にただ感謝です。

 これからについては、社会の縮図かもしれませんが格差をどうなくしていくかが課題だと思います。都市部と地方、規模の大小、格差は各地同友会にも会員企業にも問題となるでしょう。積極的に解決に向けてかかわってほしいと思います。

会社概要

創  業:1946年(1992年に分社)
事業内容:事務用機器全般、オフィス用品通信販売(ASUKUL)
従業員数:32名
TEL:0776-53-1010
FAX:0776-53-1009
URL:http://www.iwai-gr.com/