【特別版】中小企業運動の新しい道を切りひらく 中同協顧問/(株)千代田エネルギー会長 田山 謙堂氏(東京)

田山謙堂顧問

中同協顧問/(株)千代田エネルギー会長 田山 謙堂氏(東京)

(第43回青年経営者全国交流会 特別報告より)

 1930年東京で生まれた田山謙堂氏は、慶應義塾大学経済学部を卒業後、1956年父親がオーナーである千代田製油(株)(1992年に(株)千代田エネルギーに社名を変更)に入社。1958年東京同友会の前身である日本中小企業家同友会に入会した後、同年に社長に就任します。1969年には中同協発足と同時に幹事長となり、1985年に会長に就任。1991年より相談役幹事、1996年には顧問に就任し、現在も中小企業運動をけん引しています。

私が入会した当時の同友会

 私は1958年に親父の会社を27歳で引き継ぎました。

 その前年、1957年に知人に誘われて参加したのが日本中小企業家同友会(現東京同友会)の第2回定時総会でした。その時の総会の参加者は30数名でありながら、経営者の意志と情熱、志の高さが私の心をつかみ、すぐに入会を申し込みました。当時は経営の話ではなく中小企業を取り巻く環境をどのように変えていくべきかという議論が中心でした。

 当時の同友会運動を石井正雄氏(中同協元会長)が「同友会は道なき道を自分たちの道でつくる」と表現されていました。自前で自主的な活動を行う団体など同友会しかありませんでした。

困難乗り越えてきた歴史に感動

 試行錯誤の中、五つの同友会と二つの準備会(東京、大阪、愛知、福岡、神奈川、北海道と京都は準備会)が立ち上がり、1969年に中同協が設立されました。なぜ中同協を設立したのかは、設立準備会が1969年3月に発表した「全国の皆さんに大同団結を呼びかける」(『中同協30年史』所収)の文書にすべて網羅されています。「呼びかけ」は冒頭で、「私たち中小企業家は、日本経済の重要な担い手としての自覚と誇りを持っています」を前提に、大きく整理すると次の3点を基本方針としました。

 第1に、会員相互の交流を深め、強い体質の企業づくりのため、経営者の自覚と姿勢を正していくこと。第2に、日本経済の平和的繁栄、国民経済と地域経済の発展に寄与すること。第3に、国および地方自治体に中小企業家の要望を反映させ、その実現に努力する、としています。これが中同協規約として実り、さらに中同協の役割として、「未組織の地域に同友会を結成するために努力する」が加わります。

 同友会は、「中小企業は日本経済の担い手」という自覚と誇りを持ち、経営姿勢を正すことを設立当初から訴えてきました。1975年に「中小企業における労使関係の見解(以下、労使見解)」を発表し、経営指針の成文化運動を広げ、社員教育の実践も積み重ねてきました。こうした企業づくりにかける思いが多くの中小企業家の期待にこたえることになりました。

 もう一つは、経営環境改善運動です。日本経済の中で果たす役割にふさわしい環境づくりのため現在は中小企業憲章、中小企業振興基本条例制定運動に取り組んでいます。大変困難な条件を乗り越え、今日ここまで到達したこと、実力をつけてきた歴史に感動します。

「労使見解」という誇りと財産

 1975年の1月に「労使見解」が発表されました。当時は多くの中小企業で労働組合が組織され、経営者と対立をしていました。

 労使は力によって問題を解決しようとするのではなく、互いに誠意を持って話し合いで問題解決をすべしという同友会の考え方はなかなか組合側の理解を得られませんでした。そういった苦労の中、労使関係の安定や信頼関係を築くことを議論して生まれたのが「労使見解」です。

 経営者にとって労使の信頼関係をどのように確立するかは切実な願いでした。

 そのためには経営者の姿勢が重要であり、「労使見解」では「経営者の責任」の項目にまとめられています。経営者が自分の経営姿勢を示し、全社が一丸となり企業を動かしていくしか方法はありません。

 同友会には「労使見解」があるという誇りと財産を認識してほしい。企業の労使関係は一つひとつ異なっています。人のまねではうまくいきません。一番良い労使関係を探していくことには経営者の知恵が試されます。

同友会の三つの目的

 しかし、同友会がどのような会であるかを示す明確な目的は当時ありませんでした。その後、議論を重ねて1973年に「同友会三つの目的」が成文化され、1990年に同友会理念(同友会三つの目的、自主・民主・連帯の精神、国民と地域とともに歩む中小企業)を採択しました。これらは長い間同友会の先人がどうすれば魅力ある会にできるのか、多くの会員を招き入れることができるのかという経験と教訓を集約してきたのです。

理念問題を大切に

 同友会は理念を大事にする団体であり、中小企業が社会的に果たす役割を考え、利潤追求だけではない経営をいかに実現するかを真摯に追求していると評価しています。理念問題は組織が大きくなればなるほど大切にしなければなりません。

 私は、理念の基本で大切なことは自主的、民主的という会の性格だと考えます。これは同友会の前身である全中協(全日本中小工業協議会、後に全日本中小企業協議会)が1947年発足の時以来の精神です。
 戦前の業界運動の反省の上に立ち、官僚支配と統制ではダメだ、さらには力の強いボスの意向に左右される組織であってもいけない。自主的とは自立すること、自分たち自身の知恵と努力こそ運動の創造力とエネルギーの源であること。

 同友会は相手が政府であろうと自分たちの考えははっきり打ち出す、これは同友会の生命ではないか。そのためには、会内では自由かっ達な議論を保障することです。

 理念に基づく運動の展開をしてきたのが今日の発展の力であり、これは今後も変わりません。

 経営者の知恵と経験の蓄積が同友会の長い歴史を築いています。同友会の今日までの発展について歴史を勉強する機会をつくってください。同友会は素晴らしい理念と歴史、経験を持っていることを学び、その運動を担っていただきたいと思います。

会社概要

創 業:1947年
資本金:4600万円
事業内容:石油製品小売業・貸室業
所在地:東京都千代田区神田紺屋町13山東ビル
TEL:03-3256-7911
FAX:03-3254-7052