【第12回】同友会で出合った、わが人生のバイブル 有希化学(株) 代表取締役 本間 雅樹氏(新潟)

本間雅樹社長

有希化学(株) 代表取締役 本間 雅樹氏(新潟)

企業の強みと弱みは表と裏

社屋の外観

 2019年、有希化学(株)は、中性洗剤のメーカー・化学薬品の卸売業として創業した1968年から52周年を迎えました。1970年に海外メーカーの新潟県の総代理店として創立し、金属用洗浄剤を販売していた家業へ現代表取締役の本間雅樹氏が入社したのは、1980年で、1997年代表取締役に就任しました。新潟同友会へは1992年に入会し、その後2004年から2008年は代表理事、2008年から2018年は会長を務めています。

 「Wash&Clean , Safe&Happyを有希化学(株)は追及します」の経営理念のもと、食品工業用殺菌剤・洗浄剤、化学工業薬品や酪農分野における動物医薬品、自社製品の開発やOEM製品の製造など、お客様のニーズに合わせた商品を提供しています。

 海外の大手メーカーから事業部を譲り受けるなど、事業の拡大できた要因を、本間氏は「積み上げてきた技術力が信頼された」と語ります。

 有希化学の武器。それは社員の技術の高さにあります。取り扱い製品の幅が広く、その知識の中からお客様が求める商品・サービスを提供するだけでなく、お客様の困りごとにトータルでサポートをすることで、お客様の生産環境に安全と安心を届けることができています。逆に言えば、個々の能力が高い分、個人商店化になり易く、組織的で戦略的に動く部分は弱みになっているととらえ、改善に向けた取り組みを始めています。

同友会で出合った「経営指針」

社内の様子

 本間氏が新潟同友会に入会したきっかけは、知り合いの先輩経営者からのとある誘いでした。「本間君、経営指針は持っているか?経営理念は考えているか?経営計画あるか?」としつこく同友会での作成を誘われていました。初めは、同友会のこともわからず、経営者のお遊びの会だと決めつけ、「経営計画くらいありますよ!」と答えて避けていたものの、経営理念ってなんだ?という興味から入会と同時に「経営指針を創る会」で経営指針の作成に参加することを決意します。実際は、作成にかかる100日の期間(当時)が終わったら退会するつもりでした。ところが、指針の発表会が終わると「終わったんだから次を手伝ってくれ」と言われ、現在まで26年間経営指針を創る会の「メンター(サポーター)」を続けています。

 そんな経緯で作成した経営指針が今の同社を支え、その実践が会社を拡大できた一番のポイントだと本間氏は話します。

 経営指針には、経営者の覚悟が込められています。経営理念・経営信条には、「社員と社員の家族の幸せ」「お客様の喜び」「地域貢献」など、きれいな言葉が並んでいるかもしれません。しかし、経営指針として掲げる以上、企業はその実現をめざします。そのためには、まず経営者が指針をバイブルとして体現していかなければいけません。5年・10年ビジョンで具体的な数字を見据え、基本方針で会社のスタンスを示し、社内の各部署の取り組みなど、企業がめざす「あるべき姿」を明確化することで、社員とともに経営指針書の実践を続けてきました。

10年ビジョンが貼り出してある10年ビジョン

 1993年に最初の指針書を作り上げたものの、2カ月で一通り確認しあって以降、机の中にしまってしまいました。1996年に、朝礼をめぐる社員との問答をきっかけに経営指針を作り直し、そこから毎朝社員とともに指針を確認するようになり、現在も継続して行っています。同社では、2019年に取締役の本間英樹氏が作成した10年ビジョンを事務室の壁に大きく貼り出し、毎日の朝礼で確認する指針とともに、社員全員の共通認識になるよう取り組んでいます。

 経営指針は毎年見直し、年度ごとに各部門の目標や取り組む課題を記載、それを四半期ごと、部門ごとに自己採点を行います。3カ月ごとの進捗を比較していくことで、あらためて問題点に目を向け、課題を見つけます。今年度達成できなかった項目は、次年度の経営指針にも記載し、常に現状を知ることができる環境をつくりました。

 「もし、私が同友会に入らず、経営指針を知らないままだったとしたら、今の有希化学はないだろう」と本間氏は断言します。

学びと実践 赤石氏の言葉

 同友会で得た学びの中で、赤石義博氏(中同協元会長)の「学要実践」という言葉が大好きで、まさにめざすものとしてとらえたと本間氏はこう話します。

 「例会やグループ討論など同友会にはたくさんの学びの場があります。いい話だった、知識が増えただけで終わらせたら、本当の学びでない。私たちは評論家でも学者でもなく、中小企業の経営者なので自社や自分に照らし合わせて『よい会社・よい経営者』をめざして、実践しなければ意味ない。

 また、この言葉に私は『成果』を加えることが、中小企業家に必要な要素だと思っています。『学んで実践したが赤字だった』では企業として存続はしていけません。『学び・実践・成果を出す』これに尽きると思います。それが、本気で学ぶということだと思っています」

中同協設立50周年へのメッセージ
~各同友会とともに歩む中同協

 中同協は、各同友会を先導する、リーダーのような存在です。設立50周年を迎え、現在中同協が多角的に行っている活動には敬服します。さまざまな委員会・部会等の主催で全国の同友の交流を深める役割を担っていただきありがたく思っています。今後もさらなる拡充で全国の会員に発信をいただきたいです。
組織が設立50周年を迎え、この先の時代に進んでいくために、盤石な組織体制を築きながら、60周年・次の時代へ各地の同友会とともに前に歩んでいただきたいと思います。

会社概要

創 業:1968年
創 立:1970年
事業内容:工業用薬品、洗浄剤、金属表面処理剤、洗浄設備、排水処理設備・薬品の製造販売、提案
従業員数:20名
所在地:新潟県新潟市江南区両川2-3927-21
URL:https://www.yuki-chemical.com/