【第19回】多種多様な仲間から学び自社で実践 (株)高橋ふとん店 代表取締役 高橋 武良氏(徳島)

高橋武良社長

(株)高橋ふとん店 代表取締役 高橋 武良氏(徳島)

倉庫外観

 徳島阿波おどり空港の真横に物流拠点を置く(株)高橋ふとん店は、6つの実店舗とWEB店舗で寝装・寝具、インテリア用品小物などを販売している会社です。くるみんマーク、えるぼし(3つ星)の認定を取得し、徳島子育てサポート大賞、またEC事業部での数々の賞を受賞される背景にはさまざまな苦労や葛藤がありました。

 両親が創業した1967年に現代表取締役の高橋武良氏(徳島同友会会員)は誕生しました。創業当初は店舗を持たない職域販売で毛糸を売っていましたが、サマーベッドの販売を始めたことが現事業のきっかけです。「裸一貫から立ち上げたこの事業を長い期間続けられたのは、両親が勉強熱心であったことと、地域・お客様・取引先と真摯(しんし)に向きあい経営に大切な思いを深めてきたから」と高橋氏は語っています。

同友会との出合い

 1992年に高橋氏が入社した当時、徳島県には同友会がありませんでした。1994年に準備会が発足し、その翌年、世話人からの勧めにより同友会に入会。準備会の期間を経て、徳島同友会は1996年6月に会員数53名で設立総会を迎えました。当時の徳島同友会は手探り状態で、全国大会に参加して学びを徳島に持ち帰ることを繰り返しながら活動していました。同友会で経営方針発表会の存在を知り、自社で最初の経営方針発表会(のちの社員総会)を開催してから毎年継続的に行っていますが、当時は「お客様を大切にする」「うそのない商売をする」という思いを社員と共有していたものの、成文化された理念や明確な方針はありませんでした。2001年に経営指針成文化セミナーに参加して理念を成文化し、毎年更新を行う中で少しずつ内容を充実させていきました。そして入社11年後の2003年に代表取締役に就任しました。

 高橋氏にとって同友会での学びに目覚めるきっかけとなったのは、2000年に立ち上げた共同求人委員会で委員長を担い、新卒採用を始めたことです。県外の会員さんから毎年採用することが重要であると学び、その意味も分からないまま採用を続けました。就職氷河期という追い風もあり新卒採用はスムーズに進み、それから毎年採用することができましたが、当時は新卒社員を定着させる仕組みがなく、高橋氏自身や先輩社員も困惑する中で多くの新卒社員が退社していきました。採用しては退職することが続き、悩みを抱えて同友会に参加する中で「共育」の重要性に気づきました。退職した社員への申し訳ない気持ちと、社内の雰囲気がよくない中でも働き続けてくれた社員への感謝の気持ちが「よい会社づくり」のきっかけとなりました。社員の待遇改善はもちろんのこと、社員「共育」を通して悩みや課題に寄り添える会社になるように取り組むことに決めました。

仕事の様子

 同時期に同友会で社員共育委員長に就任しました。東京大学名誉教授の大田堯氏の思想に出合ったことで「人は育つもので育てるものではない」「人は一人ひとり違うのだから、違いを尊重した教育をしていくべき」という教育のもととなる考えが形成され、これは同友会の根底にあるものと一緒だということに気づきました。

 こうして、人材補充から始まった新卒採用が新卒定期採用へ、効率を上げるために始めた社員教育が社員定着を目的とした社員共育へと変わっていきました。その中で中途採用を中心とした既存社員の定着率も高まっていきました。長年新卒採用をしてきたことで人材の厚みがあり、就職氷河期に採用した社員は今では核となり働いています。

EC事業への取り組み

 知り合いの家具屋さんで高級家具がインターネットで売れたという話を聞き、2000年にインターネット販売を始めたことがEC事業を始めるきっかけでした。社員の趣味の延長から始めた事業ですが、今では年商30億円規模にまで成長し、社員数も大幅に増えました。毎年新卒社員が配属され、経営理念を日々唱和することで理解が深まり、「自分たちが地域に貢献しているのだ」という意識が芽生えてきています。地方問屋が減り取り扱い範囲が狭くなる中で、寝具という商材を軸に多面的な販売をしていることは、高橋ふとん店の大きな強みとなりました。

同友会への期待

 高橋氏が考える同友会の最も素晴らしいところは、多種多様な会員がさまざまな経営課題に継続的に取り組んでいることです。その時は自分に必要だと考えていない課題が、次の段階では重要課題となることは珍しいことではありません。同友会では同じ理念を持った仲間の中にその課題に取り組んでいる人たちがいて、学びたいと思ったときに最新の学びを得ることができるのです。また、同じ理念を持った仲間の取り組みだからこそ取り入れやすく、仲間の企業と比較することで自社の立ち位置も明確になります。

 「同友会での学びを自社に持ち帰ることが重要だ」と高橋氏が語るように、高橋ふとん店の経営と同友会での学びは大きく結びついていると感じました。今後も多種多様な学びが深まっていくような同友会であってほしいと思います。

会社概要

創 業:1967年
設 立:1976年
資本金:5,000万円
年 商:47億円 
事業内容:寝具・インテリアの小売業
従業員数:185名
所在地:徳島県板野郡松茂町豊久字朝日野6-5
TEL:088-624-8680
URL:https://www.futonten.info/