【第21回】自社と同友会と地域社会。共に学び、共に歩んだ45年 (株)いしとも 取締役会長 相澤 友夫氏(千葉)

相澤友夫取締役会長

(株)いしとも 取締役会長 相澤 友夫氏(千葉)

 千葉同友会のみならず、地元船橋市や業界団体、市民団体をはじめ、かかわっている多くのコミュニティで、欠くことのできない存在が(株)いしともの相澤友夫会長(千葉同友会会員)です。行く先々で会う人々とにこやかに握手を交わし、仲間を労う言葉を忘れず、ありたい未来を妥協せずに語る姿は、「人々をその気にさせる」運動を担うリーダーの姿です。

職人気質の業界にサービス業の風を

会社外観

 (株)いしともは1973年に創業、お墓・葬式・仏壇・仏具までワンストップで供養をサポートしている会社です。創業46年になる企業ですが、歴史を重んじる石材業界では新しいほうで、年輩の人には「伝統がないけれど大丈夫?」と言われることもあります。

 創業前、全国を旅しながらさまざまな社会経験を積んできたという相澤氏。長男の誕生をきっかけに「地に足をつけて仕事をしよう」と選んだのが石材業界でした。「古いしきたりの残る業界だからこそやりがいがある」と考えて、墓石の販売だけでなくリフォームや葬儀サポートサービスなど一貫して担える「総合供養サービス」の提供をめざしてきました。今でこそ、こうしたサービスは珍しくはありませんが、当時は石職人が「石屋」を営む時代。職人の技や心をサービス業に転換し、お墓や葬儀について不安だらけの顧客の相談に一つひとつ応じてきた同社は、業界のパイオニアであったといえます。

働く人の誇りと学ぶ環境をつくる「お墓ディレクター資格制度」

 石材・墓石業界の改革にも力をいれ、産地・加工・運送などいくつにも分かれていた業界を5年がかりで統一。このことによって行政とのかかわりが一本化され、業界の要望が実現しやすくなったと言います。

 また業界で働く人のために、お墓の知識と教養を問う「お墓ディレクター資格制度」をつくりました。より質の高いサービスを提供するためというのもありますが、お墓にかかわる現場で働く人の地位向上と、仕事への誇りを醸成するというねらいも込められています。

 相澤氏がこうした運動を展開してきた背景には、故・大田堯氏(東京大学名誉教授)に出会い、定期的な「大田先生を囲む共育懇談会」に参加してきた経緯があります。「大田先生から一番学んだことは、人間が『その気』になるのは、ほかから強制されてではなく、自分自身の内からわき出てくるもの。したがって、人が育つには『その気』になる環境や仕組みをつくらなければならないということです」と話します。

企業の社会的役割を見つめて―条例普及にかける思い

 そんな相澤氏は、千葉同友会の設立発起人の一人です。1975年、創業2年目32歳のとき、初代の代表理事に「これからは君たちの時代だよ」とかけられた言葉の通り、活動の中心を担っていきます。千葉同友会設立の2年後には、早くも青年経営者全国交流会(青全交)を千葉に招致。仲間との大きな挑戦が、会を飛躍的に発展させるダイナミズムを肌身で体験した世代でした。常に「現場から学ぶ」ことを欠かさない相澤氏は、今も中同協総会や中同協全国研究集会(以下、全研)、支部活動にも欠かさず参加しています。
 
 同友会のさまざまな学びの中でも相澤氏を突き動かしたのが、「企業の社会的役割」です。「企業というのは、つくるきっかけは何であれ、できた以上は社会的な存在であり、社会にお役に立つのが使命であると自覚したことが大きかった」と語り、石油ショックで一部企業による売り惜しみや便乗値上げが発覚した1974年、全研で「われわれは悪徳商人にはならない」と決議したことを印象的な出来事として挙げています。

 地元船橋市の海老川の浄化や、桜の植樹などの環境整備、民間図書館の創設など同氏の社会的な活動は数多くありますが、同友会の中では一貫して中小企業振興基本条例の普及に尽力しています。行政との勉強会を重ねて開催し、2007年に制定に至った千葉県の中小企業振興条例の普及と合わせて、「地域の課題に目を向けるなら市町村単位の条例運動を展開していくべき」という考えです。船橋支部ではその思いを引き継いで、行政の方も交えて2016年から23回にわたり「条例学習会」を開催しました。その記録は相澤氏の全面協力で冊子にまとめられ、学習を引き継いでいくための大きな財産になっています。

社員さんとともに

他責にせず、自分自身がどれだけ夢を語れるか

 最後に、今後の同友会への期待について。「同友会発展の柱というのは、自主・民主・連帯の精神、学びあい、共に育つことを大事にすることの3つだと思います。会員増強運動にもいえることですが、大切なのは『会員それぞれの違いを受け入れる度量をしっかり持つこと』ではないでしょうか。ともすると、運動が進まないと、ほかの役員がどうだとか、事務局がどうだとか、ほかに責任を求めがちになります。他責にせずに、自分自身がどれだけ同友会の夢を語ることができるか、自分自身がどれだけその気になっているのかを見つめられる、そんな人たちの集まりが同友会であってほしいと私は思います」

会社概要

創 業:1973年
資本金:3,000万円
事業内容:霊園・墓石の総合プランナー、葬儀一式、寿塔墓石・記念碑・仏壇
従業員数:43名
所在地:千葉県船橋市馬込町1199-9
TEL:047-439-1114
FAX:047-430-2184
URL:http://www.ishitomo.com/