【第23回】未来のあり方は現在の矛盾の中にある (株)タケウチ 代表取締役会長 竹内 昭八氏(静岡)

竹内昭八会長

(株)タケウチ 代表取締役会長 竹内 昭八氏(静岡)

 (株)タケウチは1931年創業、日用品雑貨・化粧品の卸問屋を営む会社です。2代目社長であり、現在代表取締役会長の竹内昭八氏は1977年に静岡同友会へ入会。1981年から86年は代表理事を務めました。また、地元富士宮支部の設立をはじめ、県東部地域の新支部設立にも尽力しました。中小企業憲章と出合い、県広報情報化委員長、中同協憲章推進本部委員などを歴任。ここ数十年間日用品雑貨の卸売業を取り巻く環境が変貌する中で、中小企業憲章と自社の生きる道を重ね、学び続けています。

激動と混迷の平成

 戦中・戦後の人々の生活を支え、地域とともに生きてきた(株)タケウチですが、1990年代の経済グローバル化とともに危機を迎えます。1990年の日米構造協議以降、急激な規制緩和が進み、大店立地法が制定されたことにより、事実上、地域小売店の声は無視の、競争至上主義の世の中になっていきました。

 このような社会の流れの中で、地域小売店の売上は激減し日常的に倒産や廃業、合併などが全国的に聞かれるようになりました。同社もその煽りを受け、売上が大幅に減少。会社を閉めるか悩むほど深刻な状況でした。

「Think Small First」の精神こそ自社の生きる道

 2003年、中同協第35回定時総会(福岡)にて、「中小企業憲章運動」が提起されました。そんな中、竹内氏は2000年に制定されたEU(欧州連合)の小企業憲章と出合い、「Think Small First(小企業を第一に考える)」の精神に衝撃を受けます。そこには「小企業こそ『ヨーロッパ経済の背骨』、『雇用の主要な源泉』、『ビジネス・アイデアを産み育てる大地である』」と謳われていました。日本では大規模小売店舗立地法が制定され、地域小売店が淘汰されていく一方、時を同じくしてヨーロッパではこのような憲章が制定されている。この違いを理解する中で自社の将来の展望が見出せるのではないかと感じ、中小企業憲章・中小企業振興基本条例の学習へと力を注いでいきました。そして学びがカタチとなったのは、(株)サプリコという問屋ネットワークへの参加でした。(株)サプリコは現在全国68社の問屋で組織しており、共同仕入ではなく、(1)共同企画販売、(2)PB(プライベートブランド)商品開発、(3)共同納入(本部商談代行)を行っています。竹内氏は「同業他社と価格で競うのではなく、同業他社に負けない売場づくりをして、消費者目線の情報共有でお互いに高めあう『競争的共存』の関係をめざすことが自社発展の方向である」と、憲章運動を通して改めて認識します。「『競争的共存』、すなわち共存のための競争こそが中小企業を守り、真に地域を豊かにする」と竹内氏は話します。

卸問屋から加工業へ (株)タケウチの挑戦

 しかし、中小の卸小売店の現状は憲章の精神とは反比例し、厳しい局面を迎えています。大規模小売店の乱立、社会インフラとして変化・発展しているコンビニ、ネット通販の台頭やAmazonなどのプラットフォーム企業の席捲など多くの障害が立ちはだかり「リアル店舗」そのものが曲がり角に立たされています。一方で、そのコンビニでさえも、あり方を変えざるを得ない状況にあります。2008年のリーマンショック以降、日用品雑貨を扱うサプライチェーンにおいても信用の収縮が起き、支払い期日の大幅な短縮などお金の流れが変化しました。地方の小規模問屋として地域のお客様からの期待に応え続けながらも、永続して歩んでいくために、問屋業だけではない自社経営のもう一本の柱を模索していきました。

 そこで着目したのが「化粧品加工業」でした。地元に化粧品製造の会社があったことや倉庫の空きスペースの利活用、卸問屋として化粧品になじみがあったこと、なにより、「パート社員の元気は会社の元気」という社風が根づいており、現場の最前線で働くパート社員が働き続けられる環境づくりに自信があったこと。これらの理由から化粧品加工業への挑戦につながりました。パート社員が主力の同社では、ともに働く仲間として接し、働きやすい会社づくりに取り組んでいます。(1)仕事より子ども優先、(2)試用期間は社員が会社を試す期間、(3)ミスが出ても個人の責任としない、という3つの約束を取り決め、一人ひとりの事情に合わせた働き方を選択できるようにしています。「加工業を行う会社は地域内に多い。しかし、社員との『共育ち』こそが他社との差別化につながり、自社の強みにもなる」と竹内氏は語ります。

一人ひとりが自立した集団をめざす

 「他者を認め、自らが成長することで自立することができる。(株)タケウチでの仕事を通して、人間として自立してほしい。そして、一人ひとりが自立した集団として和を大切にし、それぞれを思いやる中で成長できる企業をめざしている」と語る竹内氏。社是に掲げる「創造」と「共生」には、「働くことを通じて豊かな人生を創造してほしい」という竹内氏の企業づくりに対する熱い思いが込められ、息子であり現社長の竹内いさや氏へと受け継がれています。

中同協設立50周年に寄せたメッセージ

Think Small First

 同友会には経営の学びがたくさんあります。本を読んだり、会員同士で話す時間が長くなると、「同友会らしい」人に自然となってゆき、会社も少しずつ同友会の理念に沿ったものになっていくと感じます。同友会で故赤石義博氏(中同協元会長)の経営哲学と中小企業憲章に出合い、学び続けて自社の今があります。社会環境が変化しても「生きる、暮らしを守る、人間らしく生きる」という故赤石氏の言葉と、「Think Small First」の精神を忘れず、小企業に寄り添う同友会であってほしいと思います。

会社概要

創 業:1931年
資本金:2,000万円
事業内容:日用雑貨卸販売、一般化粧品卸販売、化粧品の包装加工
従業員数:41名
所在地:静岡県富士宮市大岩522-2
TEL:0544-24-0123
URL:http://takeuchi0123.world.coocan.jp/takeuchi/takeuchi.htm