【第28回】同友会で学び地域と共に歩み続ける (株)山形ピッグファーム 会長 阿部 秀俊氏(山形)

阿部秀俊会長

(株)山形ピッグファーム 会長 阿部 秀俊氏(山形)

農場

 山形県の南東部に位置する山辺町で養豚業を展開する(株)山形ピッグファーム(阿部秀俊会長、山形同友会会員)は、県内最大規模の農場で現在27,000頭を育てています。

 創業は1965年、現会長の阿部秀俊氏が20歳の時に農業経営の一部として繁殖母豚4頭を飼育したのが始まりです。その後、豚の繁殖から子豚肥育までを手掛ける一貫生産を行い、1987年には山辺町松山の広大な丘陵地に農場を新設移転し、事業を発展してきました。その歩みは、仙台市に豚肉のレストランを出店し撤退するなど、バイタリティーあふれる阿部氏の挑戦と失敗の歴史でもあります。

 山形同友会へは1987年に入会し、その後1996年から1998年に山形支部長、1999年から2006年には代表理事を務めました。入会当時の会社は従業員が10名となり、社員との関係はどうあるべきかなどを考え始めたころで、「高校を卒業して農業の道に入り、会社を経営するということも、自らの立ち位置も分からなかった。同友会で『労使見解』を学び経営指針をつくり、経営者としてどうあるべきかを見出すことができた」と振り返ります。

地域ブランド「舞米豚」

子豚

 同社には地元の農家が生産した飼料米と山の澄んだ空気と水で育てた自社ブランドの「舞米豚」があります。ネーミングには「おいしいお米を食べて、舞い踊る豚」という意味が込められています。

 きっかけは、減反政策により食用米をつくれなくなった田んぼを活用するため。町の水田農業推進協議会に飼料用米推進部会を立ち上げ、地元の飼料米で育てた地元の豚を町のブランドにしようと2008年に取り組みがスタートしました。

 「舞米豚」は肉質が柔らかく脂肪が少なめで甘みがあることから、おいしいと評判です。また、豚の排泄物が堆肥となり、農家の田んぼに還元され、循環型の生産システムとなっていることも特徴の一つです。

 町の子どもたちの食育活動や給食への提供、「舞米豚」を使用したアイデア料理コンテスト、「舞米豚」のしゃぶしゃぶのたれのコンテストなどのイベントも開催され、町と一体となった取り組みにより、町の新たな特産品として注目を集めています。

全社一丸をめざして

 山形同友会では1996年に経営指針セミナーが始まり、阿部氏も第1期セミナーを受講。「何のための経営なのか」を問われ、納得できずに悶々としたこともありましたが、手探りで経営指針書を作成し、考え方を学ぶことができたと言います。そして、「安全で最高においしい豚肉を真心で提供する」を使命とした経営指針書を発表し、社員とのかかわりを大切に活力ある楽しい企業をめざしてきました。また、毎年の経営指針セミナーには修了生として参加し、受講する会員の方にかかわりながら自らも学んできました。

 阿部氏は社員教育委員会の初代委員長でもあります。社員教育を学ぶために委員会で北海道の会員企業を訪問した際、社員のあいさつ、いきいき働いている姿に感動し、社員教育に力を入れて取り組みます。山の農場で仕事をしていると、人との接点も少なく視野が狭くなってしまいます。そこで、会社行事には日頃お世話になっている取引先やお客様を招き、接する機会をつくったり、町の産業祭りに社員と一緒に参加して自社の豚肉や加工品を販売したりしながら、お客様・取引先・地域と社員が接点を持てるように工夫をしてきました。

 また、同友会の社員研修や他社の農場へ研修に出すなど、積極的に人材育成を図ってきました。その結果、社員からの提案で豚舎に入る時と出る時にシャワーを浴びる「シャワー・イン・シャワー」のシステムを導入するなど、改善につながっています。そして、豚舎火災や東日本大震災による停電で困難な状況に陥った時も、全社一丸となって大きな危機を乗り越えることができました。

事業承継

 社長と会長

 阿部氏が会長となり現社長の阿部秀顕氏に交代したのが2010年。事業承継にあたっては、創業40周年記念パーティーで「5年後に交代する」と宣言をしました。後継者には心の準備と覚悟が必要と経営指針作成セミナーの受講をすすめました。「親子で一対一では感情もあり難しい面もあるが、めざす方向が同じ仲間からの意見やアドバイスは受け入れやすい。そして、後継者がどういう考えで何をめざして経営するのかを知ることができた」と阿部氏は言います。

 近年、養豚業界を取り巻く環境が厳しさを増し、後継者問題もあり事業所数は減少し続けています。そんな中、同社では二世代にわたって同友会で学び、経営指針を成文化したことで、事業承継を確かなものにすることができました。

同友会へのメッセージ

 最後に阿部氏は「同友会は多種多様な業種の経営者と出会い、学びあう場がたくさんある。経営をしていると、いろいろなことが起き、仲間に励まされたり、助けられたりしながら歩むことができるのが同友会のよさである。今、後継者問題が大きくなっているが、同友会に後継者と一緒に参加し、経営指針づくりを通して事業承継を図ってほしい」とメッセージを送りました。

会社概要

創 業:1965年
事業内容:養豚業
従業員数:46名
所在地:山形県東村山郡山辺町大字根際249(本社)
TEL:023-664-5280
URL:http://www.pigfarm.co.jp/