【第42回】必ず、乗り越えることができる! (株)丸栄堂 代表取締役 三浦 大英氏(秋田)

三浦大英社長

(株)丸栄堂 代表取締役 三浦 大英氏 (秋田)

経営指針を創る会(秋田同友会第7期)を受講してからの大転換

葬儀場

 (株)丸栄堂(三浦大英代表取締役、秋田同友会会員)の3月の社内会議でのことです。

 新型コロナウイルス感染拡大に危機を感じた社長が「新型コロナウイルスに感染して亡くなった方の葬儀については、社員への感染を防ぐためにお断りするしかないのではないか」と言うと、社員からは「社長、当社には葬儀社としての役割と責任があります。経営理念もあるのですから、そこに立ち返って考えるべきなのでは?」「『故人と、ご家族の心をつなぐ』という事が基本だとすれば、社員の感染予防の手立ては尽くすとしても、葬儀は、お引き受けしなければならないのではないですか」などの意見が出されました。結論としては、感染予防については可能な限りの防護策を講じつつ、コロナウイルスに感染して亡くなった方の葬儀についても、お断りしないということになりました。

  三浦氏は「当社の会議で、このような意見交換ができるようになったこと。そして、その考え方の素晴らしさに、自分の会社ではありますが、胸を打たれました」と語ります。

 (株)丸栄堂は、1975年の創業。三浦氏の父が創業し百貨店の中で営業を開始した葬祭部と石材部が前身になります。創業の地は、武家屋敷で知られる桜の名所、秋田県角館町 (現在の仙北市角館)です。

夫人の目に見えていた社長の姿

三浦由紀氏

 24年前に茨城県から大英氏のところに嫁いできた三浦由妃氏は「うちの会社が、現在のようになってきたのは、6年前からですよ」と、ふり返ります。

  二人が出会ったのは27年前。出身地の茨城県で働いていた20歳の時、石材会社に修行にきていた大英氏とのおつきあいが始まりました。曰く「男らしくて魅力的に見えたんでしょうね(笑)」とのこと。3年後、角館に嫁いで来ました。しかし、男らしい夫は「妻の言うことには耳を貸さない、ひどい夫でした」。愛想を尽かして、何度も実家に帰ったそうですが「そのたびに、親に諭されて、結局、戻ってきました」。

 由妃氏は、最初は会社で働いていませんでしたが、結婚して4年後に義母が病気になったため手伝うようになりました。でも、しばらくは「言われたことだけをやる、という働き方でした」。

社長就任、そして、業績急落の時に

 大英氏が専務から代表取締役になったのは2012年です。その年度(2013年9月決算)の年商は、約6,500万円でしたが、翌年度には5,800万円に下落。当時は、会社でも社員の言葉に耳を貸さない経営者でした。経営者と社員間での意思疎通が難しいという会社の業績が上るわけがありません。社員からは「会社を辞めたい」という声も聞こえていました。大英氏は、一人で悩んだ末、根本的な解決策を求めて、2014年6月から秋田同友会の経営指針を創る会(第7期・6カ月の講座)を受講します。同友会には、5年前に入会していました。

「この人は、本当に辛いんだ」と心から感じて

社員さんとともに

 由妃氏は「経営指針を創る会受講の6カ月間で、社長は、変わったと思います。『いままでも悪いとは思っていた。申し訳なかった』と謝罪もされました。また社長は、『つらい』『悲しい』と私に愚痴を言うようにもなりました。『みんなは、わかってくれない』と私の前で、初めて涙も見せました。そんな社長の姿に、この人は、今、本当につらいんだと思い、私も、それまでの言われたことをやればいいという気持ちから、一緒に会社をやっていくべきだと気持ちが変わりました」と語ります。

 大英氏は社員の話に耳を傾けるようになり、「社員のために、こうしたい」と熱く語り、思いやりが感じられるようになりました。その変化の中で、退職を希望していた社員が会社に残ってくれることになりました。また、一度退職した社員が、再び会社に戻ってくれるといううれしい出来事も生まれました。

 経営者とその夫人が変わったことで、会社全体が変わりました。業績は、2015年度6,100万円、2016年度8,100万円、2017年度6,900万円、2018年度10,600万円、2019年度9,300万円 と、急速に上向き、社員も5名から11名に増えました。

 その間には、家族葬などの需要が大きくなってきたため、小規模でも立派な葬儀にしたいという要望に応えるために葬祭場の新設や新しい葬儀プランの開発に取り組みました。また、2018年にはお墓に対するニーズに変化が感じられたため合葬墓を開設。霊柩車も新車を導入するなどの努力も重ねてきました。

 変化を生んだ鍵の一つは、顧問税理士(兼コンサルタント)を同友会会員の税理士に変更し、毎月、社内会議を開くと同時に、そこで月次の決算報告を行うようにしたことです。大英氏は「数字は、月次の会議で社員にすべて見せている。そのことで、よい結果が生まれている。経理の公開をせずに危機感だけを伝えても、経営者が期待したいものが社員の中に生まれるとは思えない」と語っています。また、「経営指針を創る会の受講が大きな転機となった。全社一丸体制へのスタートを切ることができた。みんなで考えることが、営業実績の上昇に直結している」とも言っています。

どんなに大変でも、同友会で学び合えば、必ず、よい会社になれる!

 新型コロナウイルスの影響はあるものの、今期の4月までの業績は、ほぼ前期と同じ推移になっています。また、最近、長男も入社して働き始めました。由妃氏は「かつては、いつ離婚しようかと思っていたが、今は、一緒に生きてゆきたいと思えるようになりました」と笑っています。

 大英氏は「会社が、どんなに厳しい状況になっていても、同友会の会員になること、そして、仲間をつくり、学び合うこと。さらに、経営指針を創って実践することで、必ず、よい会社(と、よい夫婦)になってゆくことができる。そのことを、一人でも多くの経営者の方に伝えたい」と力を込めて語ります。

会社概要

創業・設立:1975年
資本金:1,000万円
年商:9,300万円 (2019年度)
事業内容:葬儀施行、墓石設計・施工、墓苑管理、墓地分譲、仏壇仏具販売、慶祝生花花
輪、ギフト販売、少額短期保険代理店
従業員数:11名 (役員を含む)
所在地:秋田県仙北市角館町角館下菅沢195-1
TEL:0187-54-2267
URL:https://marueido.jp/