【第43回】「勝ち残る」事業をめざして そうま屋米酒店 代表 相馬 康穫氏(青森)

相馬康穫代表

そうま屋米酒店 代表 相馬 康穫氏(青森)

 そうま屋米酒店(相馬康穫代表、青森同友会会員)は『津軽の奥座敷』大鰐(おおわに)町に移転・開業して70年を迎えました。同店は相馬氏の祖父母が樺太(現サハリン)の地で「木村屋」の屋号で始めた雑貨商店が礎で、その頃から数えると80年の歴史があります。相馬氏は青森同友会が発会する1年前、1997年の準備例会から参加している創立メンバーです。人生の師と慕う経営者から誘われ、一も二もなく活動に飛び込んだ相馬氏。創立準備を進める中で初代代表理事の蛯沢勝男氏とも知己を得て、発会後は全国行事へも積極的に参加し続けています。

斜陽業態だからこそ、攻めの経営ができる

 樺太から引き揚げてきた祖父母が定住先として選んだのは、当時温泉場としてにぎわっていた大鰐町でした。当初は青森駅周辺で仕入れた商品を鉄道で大鰐町まで運び、荷物を背負って売り歩く「行商」を行っていたと言います。その後、1953年に酒類販売免許を取得し、店舗を構えての営業を開始。周辺の温泉旅館などへの販売で売上を伸ばしました。

 相馬氏は31歳で同店の経営を引き継ぎます。これは奇しくも青森同友会の創立と重なります。当時から「町の酒屋さん」はコンビニエンスストアやディスカウント業態に押され、衰退しつつありました。元来、人と同じことはしたくない性格の相馬氏は「うちにしかできないこと」を掲げて経営に乗り出します。まず手掛けたのは大手の商品に比べて小ロットながら価格決定権を握れるオリジナル商品『津軽路ビール』の開発とOEM生産でした。根強い人気がある地ビール市場で津軽路ビールは年々名前を拡げ、首都圏での販売も伸びています。

 同友会の全国行事には極力参加するようにし、現地では日中の分科会で経営について深め、夜は営業も兼ねて繁華街に繰り出します。「全国に行きつけの店ができるし、売上にもつながって、同友会の全国行事は一石何鳥にもなりますね」と笑います。

常に新しいことに挑戦する

そうま屋米酒店の店内

 近年は新規店舗のドリンクメニュー開発の依頼が全国から舞い込むようになりました。業態や想定客単価から構成を検討し、ほかでは扱っていない商品で独自性を持たせる。相馬氏のそんなアドバイスは高く評価され、依頼が増えています。

 そうま屋米酒店の強みは青森県内すべての酒蔵の商品を取りそろえていることです。「ちょっと他では見かけない商品」が陳列棚に並びます。「近所では『安くもないし、品揃えも多くない。だけどつぶれない、不思議な店』と言われていますよ」と笑う相馬氏。県内での売上は古くから取引のある飲食店への業務販売を中心に全体の6割程度。残りは県外で、個人客への通信販売と飲食店向けの販売です。20年前にはほぼゼロだった対県外売上は年々増え続けていると言います。

 県外での売上を伸ばす一方で、地元との結びつきも大切にする同店。「日常愉しむお酒は量販店で買ってくれればいいんです。うちは『特別な日に大切な人と』楽しんでもらうための商品を揃えていますから」と語るとおり、こだわった商品構成で量販店との差別化と、地元での認知度向上を果たしました。

自分が受けた恩をつなぎたい

 青森同友会創立から約10年間、足しげく全国行事へ参加した相馬氏。今も機会を見つけては足を運びますが、以前ほどの頻度ではなくなりました。なぜでしょうか。

 当時は自分の「今」を携えて参加し、それを先輩経営者にぶつけ、叱咤激励を受けて帰ってきて実践に生かしたことが現在を形作っていると言います。「これからの地域を担う若い世代にも、同じように全身が痺れるような感覚を体験してほしい」と語る相馬氏。今までの経験を若手に伝えていくことが自分の使命であり、受けた恩を次代につないでいくことだと言います。自分と同じように悩む経営者を一人でも助けるために、自分磨きは続いていきます。

 2020年4月、来る事業承継に向けて店舗をリニューアルし「地酒の駅 そうまや米酒店」として新たにスタートしました。店内には創業当時の樺太の店舗のほか、後継者である子どもたちと相馬氏が写る写真が多く飾られ、歴史の積み重ねと未来を感じさせる雰囲気が醸し出されています。

同友会への期待~中同協50周年に寄せたメッセージ

 新型コロナウイルス禍は、全国全土で大変な影響を及ぼし、今後もその影響は続いていくことが確実な状況です。同友会で学んできた仲間といえども、出口の見えない悶々とした日々を過ごしている方も多いと思います。

「けれど」。

 ブレずに、諦めないで自分を磨き続けましょう!学んだことを実践し、全国4万7,000名の仲間とのネットワークを生かし、互いが勝ち残っていく会であり続けましょう。「ピンチはチャンス」。簡単ではありませんが、進むべき道は必ずあることを忘れずに運動が進んでいってほしいと願っています。

会社概要

創 業:1939年
事業内容:酒類・食品類販売業、不動産業。津軽路ビールの開発、販売。
従業員数:4名
所在地:青森県南津軽郡大鰐町湯野川原109-7
URL:https://furusatobin.jp/soumaya/index.html