【第45回】人を幸せにするための人間尊重の経営をつらぬいて 税理士法人総合会計 代表社員 金巨 功氏(山口)

金巨功氏

税理士法人総合会計 代表社員 金巨 功氏(山口)

社歴<同友会歴

 山口県内3カ所(山口市・下関市・周南市)で税理士業を行う税理士法人総合会計。代表社員の金巨功氏(山口同友会会員)は同友会で学び、実践を続け、気がつくと県内有数の税理士事務所となっていました。

 金巨氏が、会計事務所を立ち上げたのは1995年。当時共同経営をしていた大阪の会計事務所から、故郷の山口で独立開業しました。1995年3月31日、会社立ち上げを翌日に控えてしたことは、山口同友会への入会でした。社歴=同友会歴です。実際は、大阪の会計事務所時代に大阪同友会で入会していたので、厳密には社歴<同友会歴となります。

 山口同友会入会の翌日、借家の6畳の和室の4分1にカーペットを敷き、古いパソコンと知り合いからもらったFAXやコピー機を設置して開業。人手がないので、事務職に一度もついたことのない妻に無理を言って手伝ってもらうことで事業をスタートしました。

 それから25年間、業績は右肩上がりで一度も赤字を出すことなく、下関市・周南市にも事務所を開設、社員数も33名という税理士事務所に成長しました。

人間尊重の経営をめざして

社員さんと

 総合会計がめざしているのは単なる税理士事務所ではなく「お客様の夢が実現し、スタッフがいきいき働けるお悩み解決サポート業である」と、金巨氏は語ります。

 その実現には、まず社員が幸せである経営でなくてはなりません。社員の個性を尊重し、時代や環境のせいにせず何があろうと、とことん社員ひとりひとりの命、生活を守ることにこだわった「人間尊重の経営」を実践してきました。

 そのためのこだわりの一つが、全員参加型経営です。自立的・自覚的・自発的社員をどんどん増やしていくために、毎週社員の提出する週報に対するアドバイスを大事にしています。「経営者の思いを伝え、社員一人ひとりが自主的に仕事をしていくことで、皆がいきいきと働ける職場に徐々になるのだと思う」と、金巨氏は語ります。日常での気づきや感謝を手書きでメッセージを贈ったり、課題図書を与えてレポートを書いてもらったり、毎週月曜日に5分間、最近感動したことや世の中の情勢を伝え、事務所で発生したクレームなどを経営理念と結びつけて話をして、できるだけ自分の思いを伝える機会を持ち、一人ひとりと細やかにコミュニケーションを取りながら、同じ方向を向いてもらうように努力を重ねています。

 また、「早いうちに同友会の民主的経営に触れて、全社員が経営に参加する意識をもってもらいたい」との思いから、新入社員には最初の株主総会までに自社株を購入してもらう制度を取り入れています。全員参加型経営をめざし、何事も全員の議決により決定しています。冷房の設定温度まで株主総会で議決するほどの徹底ぶりです。金巨氏はこれまでを振り返り、「全員で物事を決めて全員でそれを実践しながら成長していくということが、段々と自分の喜びと思えるようになってきました。言っていること、やっていることは全部同友会のパクリですけどね(笑)」と話します。

 2000年3月に始めた全員参加の事務所会議は現在も続いており、年2回の株主総会(本総会・中間総会)でも、今では議案書や膨大な資料も全部社員で準備し、運営も全員で執り行い、金巨氏はあいさつだけすればよいというところまできています。

「税理士法人 総合会計」人間尊重の経営を次世代に

 同友会型経営の実現にひた走る金巨氏には、「この会社を次世代にどのように引き継ぐか」という課題がありました。経営者交代の準備は進めていましたが、これはという人が税理士試験を突破できないなど、なかなかうまくいきませんでした。また、事務所を増やすにあたって、どうしても税理士を増やさなくてはならないときに知人からの紹介で出会ったのが、現在金巨氏とともに代表社員(2018年6月から複数代表制)を務める中村氏です。当時、別の税理士事務所に勤めていた中村氏と何度も会い話し合いを重ねることで、入社を決意してもらいました。

 中村氏は、「前の事務所は、トップダウン型の事務所で、民主的な経営といってもピンとこなかった。初めは入社のためのセールストーク位にしか思わなかったが、何度も話を重ねるうちに、金巨さんの言うことにウソはないと感じ、興味が増した」と、出会った当初のことを話します。

 中村氏が入社して一番驚いたのが、顧客・社員・スタッフ全員でともに歩み、よい会社を一人ひとりが作り上げるという社風でした。「会計事務所は縮小傾向です。そのような経営環境ですが、顧客とともに会社の悩みも一緒になって考える姿勢を評価していただいています。税理士事務所には厳しいこんな時世ですが、自社には新しい悩み多き経営者が次々と来られます。金巨さんの実践してきた人間尊重の経営が多くの方に受け入れられていることだと思います」と話し、自身も同友会で学んでいます。

 金巨氏は言います。「実際のところ、いくら民主的経営をめざしても、根本的に経営者と社員は立場が違うという議論もある。ただ、経営者と社員はそれぞれが川の対岸で向かい合わせになるのではなく、ともに同じ方向(上流)をめざすことができると同友会の先輩たちから学びました。最初は川幅が広く、声を出して叫んでも何も届かないことも経験しました。しかし、対話を重ね理念を共有していけば、いつかは握手できる距離に近づくことはできる。川の源流までさかのぼり、一心同体になるにはまだまだ先の話で、艱難辛苦(かんなんしんく)の営みが必要ですけどね」。

 この一言が、金巨氏が歩んできた理想と辛苦、中村氏がバトンを受け継ぐことの重みを表現していました。

金巨氏と中村氏

会社概要

設 立:1995年
年 商:2億7,000万円
事業内容:法人・個人の税務相談・決算・申告、不動産など譲渡所得の税務相談・申告・事業継承などの相続税対策の相談、申告、企業の経営計画の立案、経営相談記帳相談・コンピュータ会計などの導入相談
従業員数:33名(役員含む)
所在地:山口県山口市小郡下郷1256-16-101(山口事務所)ほか
URL:https://www.sogo-k.net/