【第10回】差別化し、新たな商品づくりで利益確保 (株)愛菜華(あいさか) 田中ファーム 代表取締役 田中 稔久氏(福岡)

田中稔久社長

(株)愛菜華(あいさか) 田中ファーム 代表取締役 田中 稔久氏(福岡)

福岡同友会・月刊同友2020年9月号より抜粋

ダリアとの格闘

愛菜華田中ファーム

 2008年に福岡県南部のみやま市瀬高町で江戸時代から続く農家を継いだ田中稔久氏((株)愛菜華代表取締役、福岡同友会会員)が目をつけたのは、当時ブームになり始めていたダリアでした。ダリアは暑さ寒さに弱く、管理の難しいデリケートな品種の花です。各種数値のデータ化や生産者仲間と情報を共有し合いながら育成のノウハウを構築すると、徐々に産地としての知名度も上がり始め、全国のホテルや花屋からの需要も増えていきました。

法人化し、障害者雇用に踏み切る

 2016年には法人化し、障害者雇用にも取り組みました。初めはなかなかうまく対応できないこともありました。しかし当時を振り返って「障害者には優しく説明しなければなりません。やがて社内全体が優しくなってきました。彼らも明るくなり、今ではいなくてはならない存在です。初めて給料を渡したときの笑顔が忘れられませんね。うれしさのあまりその場で封を切り、財布に詰め込んでいました」と語ります。そうして新たな仲間も増えていきましたが、法人化後1~2年は売上は伸びるものの赤字の状況が続きました。

同友会との出合い

ダリア

 田中氏はこれ以上にないくらいに働いていましたが、利益は上がりません。同友会の存在を知ったのはそんな時です。2018年の福岡同友会経営者フォーラムに一人で参加しました。そこで大きな刺激を受け、入会するやいなや例会や経営指針作成セミナーに積極的に参加しました。そこで『恵みを活かし、ひとを活かす』という理念を作り、経営計画についても学びました。以前は「20万本生産出荷し利益が足りなければ、気合いと根性で50万本作ればいいんだ」と考えていましたが、大量生産・売上重視の構成とならないよう差別化を図り、粗利の高い商品開発に取り組むようになりました。そうすることで生産量を減らしても付加価値により利益を上げられるように変わってきました。赤字経営がなんとか、少しだけ黒字に転じはじめました。

コロナ禍の決断

 この間にダリアは売上の8割を占めるようになりましたが、ダリアの売上も新型コロナウイルスの影響を受け始めます。今年2月上旬には一部品種が市場の半分以下に値崩れするという情報を得ました。当時はまだJAも市場も生産者仲間も状況を楽観視していましたが、田中氏は冷静に月次と品目別単価を比較し、ダリアの最盛期にあたる3月を目前に半数を処分することにしました。そして同友会で学んだことを生かし、経営計画を急遽変更しました。生産者仲間は懐疑的でしたが、コロナが早期に終息したとしても粗利の高い3月を逃したら終わりです。田中氏は早期に栽培品目を切り替える決断をすることで、被害を最小限に抑えることができました。

 減産したダリアは付加価値の高い通販に挑戦することに決めました。インターネットでダリアの直販をしている企業はほとんどありません。もともと品質には自信がありました。通常、市場を通すと2日ほどしか品質が保てないダリアですが、(株)愛菜華 田中ファームのダリアは直販により5日ほど品質を保つことができ、付加価値の高い商品として好評を得ました。現在は10月下旬の本格始動へ向けて更なる付加価値アップのため準備を進めています。「他と同じことをしていてはダメ。失敗しつつも検証し差別化して、他にない商品を作り利益を確保していくことが大切」と、コロナ禍の中でも前向きに取り組んでいます。

©富谷 正弘(福岡同友会会員)

設 立:2016年
資本金:300万円
年 商:3,500万円
事業概要:切り花のダリア、とうもろこし、きゅうりなどの生産
所在地:福岡県みやま市瀬高町高柳870-1
従業員数:12名
TEL:0944-63-8107
URL:https://www.aisaika-tanaka.co.jp/