【第19回】農業・福祉の連携でスタッフの自立を育む (株)ハコニワ・ファーム 取締役会長 小島 和之氏(栃木)

小島和之会長

(株)ハコニワ・ファーム 取締役会長 小島 和之氏(栃木)

ハコニワ・ファームの誕生

 中央税理士法人(栃木市)の代表、小島和之氏はある障害者施設の顧問を施設開設時から務めていました。当時その施設では、近隣の60年以上続く養鶏場で、障害者が作業の手伝いしていました。養鶏場の作業は、どんな障害特性のメンバーでもできる作業があります。たくさんのスタッフが活躍できる養鶏場は、彼らにとってありがたい仕事でした。

 しかし、ある時この養鶏場が倒産してしまいます。設備や建物は老朽化が進み、事業継続が難しい状況に陥っていました。障害者施設の施設長から「何とか事業を継続していきたい」と相談を受けた小島氏は、養鶏場の弁護士と相談し、鶏を引き取り、直接販売を行う(株)ハコニワ・ファームを設立することにしました。

高級卵「茜」の誕生

 鶏卵は「経済の優等生」と言われます。1975年以降ほとんど価格が変わっていないためです。当然、小規模での経営は難しく、これまでの市場取引では経営の継続は困難です。そこで小島氏は卵の価値を高め、価格の設定を変えることにしました。

 鶏は純国産の希少種「もみじ」でしたので、その特性を生かすため、それまで鶏舎に入っていた鶏を平飼いにしました。価値のある卵を提供するにはまず鶏が幸せでなければいけない。そのためには鶏が自由に歩き回れる環境と、栄養の行き届いた食事が要ります。その環境整備の一環として鶏舎内の環境データはIOTシステムで収集・管理し、難しいと言われていた平飼いを行いながら、スタッフが働きやすい環境づくりも同時に進めました。遺伝子組み換えのない国産の穀物に、たまごの味わいに直結するといわれる魚粉も普通の約10倍にしました。

 こうして生まれた卵は鮮やかなオレンジ色の黄身と、臭みのない芳醇な味わいを兼ね備えました。卵は「茜」と名づけられ、1個300円の高級卵として売り出されています。 

コロナ禍での取り組み

 「茜」は当初、近隣の契約販売と高級店での利用が主な需要でしたが、コロナ禍の今年、市場はインターネットに移りました。小島氏はこの夏からZOOMを使ったオンラインマーケットも行い、全国から訪れるお客様に卵かけご飯用の醤油などもセットにして販売することで送料負担が軽くなるよう工夫しました。ネットでは値段より動機が大切になります。「身近で良質な贈りもの」として、日を追うごとに販売量が増えました。さらに栃木県真岡市の「ふるさと納税」の「お礼の品」では1位から3位を独占するなど、一気に売上を伸ばしています。

同友会は語り場

 「ハコニワ」の取り組みは、その誕生から成り行きを栃木同友会県南支部例会の中で報告され、その後に起きた問題や、その解決策の数々が、ZOOMでの座談会の場などでも話されるので、参加者はだんだんわがことのように「ハコニワ」のことを考えるようになります。

 「自社の現状を認識することは、自分一人で行うのはとても難しいこと」と小島氏は語ります。黙って聞いてくれる場があること、相談できる仲間がいることで自社が進んでいる方向を確認することができる。コロナ禍で関わり合いが希薄になりそうな、こんな時だからこそ同友会に集い、話せる場を持ち続けることが大切です。

※ハコニワ・ファームはクラウドファンディング実施中です。
 https://camp-fire.jp/projects/view/356659

ミッション

ニワトリのしあわせ、障害者の働く喜び、お客様の笑顔の循環を創造する。

ビジョン

1. ニワトリ達にしあわせな生活を提供し、唯一無二のたまごを創る。
1. 体験・購入・食事を通じて驚き・感動・共感をお客様に届ける。
1. 障がい者が働く喜びと誇りがもてる仕組みを確立する。
ハコニワ連携スキーム

会社概要

設 立:2018年6月
事業内容:養鶏場の運営、障がい者雇用機会の創出、プリンなどスイーツの生産・販売
従業員数:7名
所在地:栃木県真岡市下籠谷2593-1
TEL:0285-81-6788
URL: https://haconiwa.co.jp/