【第20回】手作りマスクから環境企業へ (有)五島糸店 代表取締役社長 五島 哲也氏(徳島)

五島哲也社長

(有)五島糸店 代表取締役社長 五島 哲也氏(徳島)

はじめに

店舗写真

 (有)五島糸店(五島哲也代表取締役社長、徳島同友会会員)は、縫い糸やゴム紐などの卸売として1931年創業。昭和50年(1975年)ごろの毛糸の手編みブームに乗り、手芸材料のなど趣味的な商材も始めました。平成に入り卸売が縮小する中、五島哲也氏が婿養子として入社し、2006年代表取締役に就任しました。小売の拡大や手芸教室部門を立ち上げ、6年前よりネット販売も手掛けています。

綱渡りの仕入れ

マスク用品

 2020年3月末に新型コロナウイルス感染症による有名タレントの死去が伝えられた翌朝、店の前に開店を待つお客様の車が並んでいました。

 毎年花粉症のお客様のために、季節商材として手作りマスクの材料である型紙や表地、裏地となるガーゼを揃えており、それを知っている人たちでした。その後ひっきりなしに来店され、ガーゼなどマスクに関わるものがわずか2週間で1年分売れました。

 ガーゼ生地、糸、ゴム、洋裁用品などが大量に売れ、明日売るものが無いと心配することもありましたが、それまで取引のなかった問屋がガーゼの在庫を融通してくれたことや、多くのメーカーから増大する物流コストを度外視して安定供給してもらったため、価格を安定させることができました。

社員の使命感から社会貢献へ

 来店客が増えていくと朝礼が劇的に変わりました。それまでの朝礼は業務伝達と前日の売上発表でしたが、その日ごとの売り方の作戦会議となりました。

 例えば午前中にネットの発送を終え、午後は店頭販売の応援をしたり、商品ごとで店頭に出すタイミングを考えたりしました。また、3密回避のために、買い物かごやショッピングカートをお渡しして距離をとりながらゆっくり買い物をしていただけるようにロールプレーイングで検証を重ね、毎日大量に入荷する商品を、どうすればお客様に安全で的確にお渡しできるかの意見交換をする場になりました。

 社員が自らコロナをまん延させない、店内から感染者を出さないと、手洗い・うがいを徹底し、店内にアルコール消毒液を何カ所も置きました。また「ドラッグストアにマスクを求め早朝から並んでいる人を手作りマスクで救いたい」との声も出ました。

 ウイルスは見えないため、接客で自分たちが感染する危険性もありますが、使命感から不安を声にする社員はいません。

 社内では、以前は自社商品が社会とどう関わっているのか、社会貢献にどうつながっているのかをあまり意識したことは無かったのですが、コロナ禍で仕事に使命を感じ、社会との関わりを考えるようになってきました。7月からのプラスチック製レジ袋有料義務化をきっかけに、レジ袋をコストでなく、地球環境として話し合うようになりました。徳島県の『「プラごみゼロ」とくしまスマート宣言』に賛同し、お客様や地域も巻き込み手作りエコバックやペットボトルカバーの推奨など、楽しみながら「プラスチックごみ問題」に取り組んでいます。

今後の展開

 今では、使い捨てマスクでは肌が荒れるので手作りマスクを作り始めた方や、材料やキット、アクセサリーも増えたため、お客様の幅が広がっています。また、マスクから手作りの楽しさを知り、ミシンや毛糸の編み機を購入する人も増えています。

 かつては必要なものしか買わない、作らない、環境にやさしい手作りの生活や文化がありました。コロナ禍で既製品のマスクが品薄になり、マスクの手作りが増えました。誰かのために作る、人への思いやりが詰まった「手作り文化」が再認識されてきたのではないでしょうか。この手作り文化をウィズコロナやアフターコロナでも広げていき、地球環境に貢献したい」と五島氏は語ります。

経営理念

私たちは手作り文化を創造し感動と生きがいを手のぬくもりと共に届けます。
私たちは認め合い、支え合い豊かな生活と充実した人生をおくります。

会社概要

創 業:1931年
設 立:1960年
資本金:1,000万円
従業員数:8名
事業内容:手芸材料卸・小売
所在地:徳島県徳島市問屋町47番地
TEL:088-622-8595
URL:http://www.syugei.co.jp/syoukai/index.htm