【第24回】地域課題を自分ごととして捉え企業変革に挑戦 (株)アサギリ 代表取締役 簑 威賴氏(静岡)

簑威賴社長

(株)アサギリ 代表取締役 簑 威賴氏(静岡)

自然豊かな施設

 酪農地帯として緑豊かな朝霧高原が広がる富士山西麓にある(株)アサギリ。人々の生活や生産活動から発生する有機性の廃棄物(牛ふんや食品残渣)を、優良な堆肥・肥料(コンポスト)に生まれ変わらせる産業廃棄物処分業の会社です。森の中のテーマパークのような施設内からは雄大な富士山を望むことができます。

コロナ禍を機にDX化でファンを増やす

 コロナ禍による行動制限や感染対策への取り組みとして、DX(デジタルトランスフォーメーション)、すなわち社内外にむけデジタル技術を駆使した変革に素早く取りかかりました。社内では社員同士の接触を減らすために無線機を導入したことで、離れた場所で業務していた社員の動きがお互い把握しやすくなり、業務の効率化による残業時間の大幅削減にもつながりました。また社外に向けてはZoom(オンライン会議システム)を活用してリモートでの視察や商談を始めたことで、いつでも富士宮本社・工場と山梨工場両方の状況をリアルタイムで見てもらえるようになりました。お客様からは「ここまで透明化している企業は珍しい」「移動時間の短縮になってよい」と好評を得ています。

日ごろの積み重ねが企業変革の後押しに

 「ピンチはチャンスとよく言われますが、外部環境の変化を企業変革のきっかけにすることができたのはこれまでの努力の積み重ねがあってこそ」と語る簑氏。取引のある金融機関に毎月の月次試算表を直接持参し、自社の現状を知ってもらうと同時に信頼関係の構築に努めています。そんな金融機関との日々の面談の中から作成された「事業性評価シート」は、自社の課題と強みを客観的に把握するのに大いに役立っていると言います。

富士山を望む美しい景観を守るのが私たちの使命

アサギリMIX PELLET

 同社では地域の課題を自分ごととして捉え、行政や農協と連携を図りながら解決にむけて取り組んでいます。朝霧高原では、牧場の片隅に積み上げられ放置されたままの牛ふんが富士山の景観に悪影響を及ぼしていることを知りました。そこで同社が培ってきた技術と思いをもとに、リサイクルされた製品の流通の構築とニーズに合った商品づくりに着手し、牛ふん混合堆肥をペレット化した「アサギリMIX PELLET」を開発しました。肥料散布機械の流用が可能で、臭気が無いこのペレットは質の高い牛ふん堆肥としてホームセンターで一般販売を開始するなど注目を集めています。簑氏は「過剰になっていた牛ふん堆肥の有効活用ができ、結果として地域の観光資源を守ることにつなげたい」と語ります。来年度には製造量を現在の3倍以上にする計画を立てています。

 経営理念に「たゆたえども 沈まず」を掲げる同社。荒波を乗り越えながら地域内循環の「環」を拡げる中心的存在としてまい進しています。

経営理念

「たゆたえども 沈まず」

会社概要

設 立:1965年
資本金:1,000万円
年 商:4億8,000万円
事業概要:産業廃棄物中間処分、肥料製造・環境関連エネルギー事業
従業員数:25名
所在地:静岡県富士宮市人穴203-51
TEL:0544-52-0212
URL:http://asagiri.info