【第26回】新事業で新たな活路を!「好き」を仕事に! (株)十八屋 代表取締役 石井 和也氏/取締役 石井 芳枝氏(埼玉)

石井和也社長と芳枝取締役

(株)十八屋 代表取締役 石井 和也氏/取締役 石井 芳枝氏

社屋外観

 (株)十八屋は埼玉県吉川市で90年続く酒の卸問屋です。

 3代目の石井和也氏(代表取締役、埼玉同友会会員)と石井芳枝氏(取締役、埼玉同友会会員)の夫婦で経営しています。

 90年前、芳枝氏の祖父母が創業した当時は、味噌やサイダーなどを販売していましたが、その後酒の卸業務を始めました。現在は7割が飲食店との取引で、その経験を生かして新しく飲食店をオープンする事業者に地元の地域性や流行などのアドバイスを行うこともあります。地元の店や住民と一緒にお店を作っていく、そんな地域密着型の酒屋です。

コロナ禍での新事業で新たな活路を!

店内のワインセラー

 5年ほど前、事務所の5坪くらいの小さなスペースで酒の小売販売を始めました。そこでは従業員が事務の仕事の傍らで酒を販売する形だったので、顧客が来れば販売するという、どちらかと言えば受け身の営業でした。

 そんな中、コロナ禍で卸業の売上は大幅に減少し、飲食店への卸しの事業も縮小せざるを得ませんでした。一方で、会食などの自粛により家飲みの需要が上がったことでショップの売上は伸びていました。もう以前のような卸業務に軸足を置いた経営には戻らないと、コロナで受けた融資を使ってショップを本格的に開くことを決めました。

 5坪だった売り場は、5倍の広さになって「18ya-shop/Wine Shop Fusa Fusa」として今年の1月に生まれ変わりました。300種ほどのワインを揃え、それを管理するセラールームを設置。芳枝氏がソムリエ資格を取得し、ワインサーバーも導入して有料での試飲も楽しむことができます。もちろん日本酒やリキュールも充実させ、あらゆるニーズに対応できる体制が整いました。

 「売れる商品をただ売るだけではなく、売りづらい商品でもどうしたら売れるのかを考えることが大切。飲み方や合う料理を見つけ、お客様と共有する。それに、どんなお酒にもよい点があるはずだ」と語る芳枝氏。その思いが従業員にも伝わり、自社の商品を顧客の要望を聞きだした上で、自ら提案できるまでに成長しました。

地元のテイクアウトスポットを開設!

テイクアウトスポット

 18ya-shop/Wine Shop Fusa Fusaでは、緊急事態宣言中の期間限定で地元の飲食店のテイクアウト商品の販売スポットとして、自社の店頭や駐車場スペースを提供しています。これは芳枝氏がお店のオープンの数日前に思いつきました。テイクアウトスポットは大繁盛で、週末は駐車場の警備が必要なほどの混雑です。「通る車がみんなうちの店に入ってくるのが面白い光景だった」と芳枝氏は話します。

 スポットにする事によって、多くの店の商品から選ぶ楽しみができる。そういった付加価値を付け、まるで東京駅の駅弁屋のように商品を選ぶのがワクワクするような場所にしたいと出店者に提案すると、出店者の間でも創意工夫や競争意識が生まれ、大きな売上を出す店舗も出てきました。「つらい状況だからこそ地域と心のつながりを持つことが大切」。コロナ禍で大変な飲食店に少しでも喜びが与えられたのがよかったと和也氏は語ります。

今後の展開

 酒屋の経験値を生かして理想の飲食店をつくりたい。酒屋だけでやっていくのは厳しいので、将来的にはお店のスペースを利用して、オープンカフェやおしゃれな角打ちのような週末限定の「飲んで食べて楽しめる場所」をつくりたいと芳枝氏は語ります。

 ワインが大好きで、「好き」を事業化した芳枝氏ですが、コロナ禍での家飲み需要を味方につけて、今後、ますます地元で十八屋ファンが増えそうです。また、酒屋の強みである地元のネットワークを生かして、今回のテイクアウトスポットのような地域との連携も続けていくことで、地元を知る卸業だからこそできる、新しいビジネスモデルの展開が期待されます。

会社概要

設 立:1951年
事業内容:酒類・飲料水などの卸売業・小売業
従業員数:12名
所在地:埼玉県吉川市美南5-26-5
TEL:048-982-2111
URL:http://www.18ya.jp