【第29回】感動の答え合わせを体感してもらう (株)お茶の富澤。 代表取締役 富澤 堅仁氏(熊本)

うまくいかないのは全部人のせい

 富澤堅仁氏((株)お茶の富澤。代表取締役、熊本同友会会員)は22歳の時に就農します。当時は茶園管理にもあまり身が入らず、失敗したときはすべて人のせいにして、経営者としての自覚が足りていませんでした。

 しかし子どもが生まれたことで、子どもに誇れるような経営者をめざしたいと考え始めました。

 そんな中、熊本地震が発生しました。震源地に近かったため店舗は崩壊、自宅も全壊し、絶望を味わいます。そんな非日常の中、茶園を見に行ったときに何も変わらずいつも通り収穫を待つ茶畑に勇気づけられ、再建に向けて立ち上がります。今まで人のせいにしていた考えを正し、物事の起こりはすべて自分から起こる物だと気づきました。

 その後、熊本同友会に入会し、「経営指針を創る会」に参加。その甲斐もあってどんぶり勘定からの脱却や、新商品開発の着手などで結果を出し、2018年には法人化するまでに至りました。そして同社の直営店として、いれたてのお茶を味わってもらうためのカフェ「Greentea.Lab」をオープンしました。

 しかし2020年に入ってすぐ新型コロナウイルス感染症が流行し、緊急事態宣言の影響で営業時間の短縮、座席数減少、イベントや集客に対する規制などで、売上に大きく影響を受けてしまい、2020年4月時点の売上は前年度の半分以下まで落ち込んでしまいました。

インスタグラムから増えた売上

インスタグラムQRコード

 少しでも売上を取り戻すために最初に取り組んだのは、インスタグラムのよる発信強化でした。テイクアウトメニューのみでの営業となってしまったため、“映える”写真を投稿し続けました。おすすめのお茶セットの情報や、季節感のある新商品を発信し続けることで、リピート率の向上に努め、お客様の満足感や新しい価値観を与えられるよう投稿し続けました。

 その結果、自粛期間中に検索数が伸び、「緊急事態宣言空けに行ってみたいお店」の候補として挙がり、多くのお客さんが来客するようになりました。また、一度来店した若い方が両親や祖父母を連れての再来店にもつながり、その結果、月単位での過去最高売上と来客数を8月に記録しました。

お茶のライブ配信

お茶セット

 「Zoom茶会」という企画も考えましたが、周囲ではZoomがさほど浸透していなかったので、まずは利用者の多いインスタグラムライブから始めました。手始めに、急須とお茶、そして「秘密の箱」をセットにしたものをお正月の福袋として販売しました。この「秘密の箱」の中には、お茶と文書が同梱してあります。その文書には「後日インスタグラムで告知するので、中のお茶は大事に取っておいて下さい」と書かれていています。それを見たお客様は告知の日を楽しみに待っているわけです。そして期待感が高まったころに、「ライブ中継でのお茶の淹れ方」を告知します。すると、さらにどういう内容なのか興味を持ち、その時間に合わせてインスタライブを見に来てくれます。そこで初めて福袋に入っていた急須とお茶は、実はライブの中で富澤氏が使用しているものと同じもの、という事がわかります。実際に富澤氏がお茶を淹れて、その様子を見ながら自分で淹れることで「プロが淹れたお茶」を味わうことができるという仕組みです。

 プロの「ワザ」に魅力を感じ、次回も参加してみたいと思っていただければしめたもの。インスタライブよりもさらに交流できる「Zoom茶会」へ参加してもらうために、月に1度お茶が届くサブスクリプションの会員へと誘います。

 コロナ禍の中、店舗に来店しなくても富澤氏の自慢の一品がお客様の手元に届く、なおかつ一番おいしい方法で召し上がっていただける、という双方にとって“WIN WIN”の企画なのです。

 「今回のコロナ禍を受け、本質の重要さ、環境への柔軟さが求められるときになったんだと痛感し、これからの新たな時代へチャレンジしていくことが重要」と富澤氏は語ります。

経営理念

「茶を以て和を成す。」

ロゴデザイン

ロゴデザインの『○○と、○』は人と人と人の間に富澤のお茶があって、『、』で一休みや小休止して想いや、物を人に結んでいく、寄り添っていくという思いです。

会社概要

創 業:1929年4月
設 立:2018年1月
事業内容:日本茶の生産・製造・販売・お茶を使った飲食の提供
従業員数:正社員4名、パートアルバイト10名
所在地:熊本県上益城郡益城町小谷102
TEL:096-286-2231
URL:https://www.ochanotomizawa.co.jp/