【第31回】生産者の想いを込めて、飛騨高山の食材を岐阜の中心地へ 山一商事(株) 代表取締役社長 山下 喜一郎氏(岐阜)

 飛騨の小京都・高山市。中心市街地には江戸時代以来の城下町・商家町の姿が保全されており、古い町並みに飲食店や名産品の店が立ち並びます。アクセスは、高速道路を使って岐阜市から約2時間、富山市からは約1時間。高山本線を利用すれば、飛騨川沿いの絶景を楽しむこともできます。日本三大曳山(ひきやま)祭の1つである高山祭はもとより、スキー場や温泉も数多く、四季を通じて国内外から多くの観光客が訪れる人気の観光地です。

 ところが、新型コロナウイルスにより、状況は一変しました。

苦境に立たされた生産者の声

 高山市に本社を置く(株)山一商事(山下喜一郎代表取締役社長、岐阜同友会会員)は、大正14(1925)年の創業以来「食べることは生きること、美味しく食べることは楽しく生きること」の理念のもと、飛騨高山の食品の加工・卸・販売を行い、全国に飛騨高山の味を販売してきました。ところが、コロナ禍、ホテルや旅館からの注文が激減し、仕入先である農家が農産物を出荷できない状況を目の当たりにします。

 「なんとかして農家を助けたい。新たな出荷先を確保し、市場を拡大したい。そして、飛騨高山産のおいしい食材や地場メーカーの商品をPRすることで地域を守りたい」。そんな思いから、同社は岐阜市にアンテナショップを出すことを決意します。出店地に選んだのは、飲食店が立ち並ぶJR岐阜駅北側の玉宮地区。以前から飛騨高山の食材を卸していたこの地区にある飲食店からの要望も出店を後押しし、9月16日、わずか3カ月ほどの準備で「飛騨食材の店ヤマイチ」をオープンしました。

 広さ約50m2の店内には、赤かぶら漬や朴葉(ほおば)味噌などの伝統料理や飛騨高山産のトマト、りんご、飛騨地鶏などの特産品、さらには業務用のPB商品である飛騨牛のしぐれ煮や飛騨産野菜のペーストなど、市内のスーパーでは手に入りにくい商品を含め、700点以上が所狭しと並んでいます。客層は一般のお客様から飲食店関係者まで。「飛騨高山のものがいっぺんに見られる」「日ごろから飛騨高山産の食材を使っているが、じかに見て、すぐに買えるのはありがたい」との声が寄せられています。

 地元・飛騨高山の仕入れ先農家を守りつつ、飛騨高山の活性化につなげていく―。東日本大震災の際、被災地に食材を運び炊き出しをした経験から、自分たちが暮らす飛騨高山のために役立ちたいという思いで3代目社長に就任した山下喜一郎社長の決意は、「飛騨食材の店ヤマイチ」にも存分に生きています。

会社概要

創 業:1925年
設 立:1948年
資本金:5,000万円
社員数:109名
事業内容:一般食品・業務食品卸業
所在地:岐阜県高山市問屋町30番地88
TEL:0577-33-0111
FAX:0577-33-0113
URL:https://www.yama-1.com/