シリーズインデックス:激動をよき友に

【第35回】二歩後退しても三歩進む いまいパン(同) 代表者 今井 陽介氏(沖縄)(2021.05.12)

今井陽介オーナー いまいパン(同) 代表者 今井 陽介氏(沖縄)

 世界遺産である識名園(しきなえん)近くの那覇市真地で、地元に愛されるパン屋さん「いまいパン」の今井陽介オーナー(沖縄同友会会員)は、茨城県出身で、18歳から東京の製菓専門学校に通い、卒業後はそのまま東京でパン作り職人として腕を磨きます。その後フランスに渡り、2年修行。若干28歳でパリのバケットコンクールで三位の栄冠に輝きました。

 そしてマレーシアのマハティール首相(当時)が来日した際、日本のパンに感激し「自国に広めたい」という依頼を受けマレーシアに五年間滞在し技術指導にあたります。

 日本に戻ると、神奈川や富山、三重とパン屋の立て直しや新規オープンの技術指導に取り組み、縁あって沖縄での開業に至りますが、指導の立場で教えてきたことをいざ実践するとなると勝手が違い、試行錯誤を繰り返しました。

沖縄同友会で学ぶ

 沖縄同友会への入会は、2014年。お店の前の道路拡張工事を境に売上が落ち込み、閉店が頭をよぎったときでした。ひいきにしていただいているお客様から沖縄同友会の副代表理事を紹介され、「経営者として学ぶべきだ」と叱咤激励を受けます。

 同友会に入会し、例会などに参加することで人との出会いが急激に増え、学んだことを少しずつ実践する中、家業から企業を考えるようになりました。そして昨年、コロナ禍もあり、経営指針作成講座を受講しました。

コロナ禍での取り組み

社屋  新型コロナウイルス感染症は、容赦なく同社にも襲いかかり、昨年上期だけで400万円の赤字。借り入れは膨らみ、拡大していた店舗展開も縮小せざるをえませんでした。しかし、「経営指針」で学んだ理念で、「雇用を守る」ことを決意。同友会の「お節介な人たち」の力を借りながら、デパートの催事を活用した卸や、テイクアウトでなんとか耐え忍んでいます。それでも今井氏は「コロナで立ち止まって考える」ことができたと、プラスに受け止めています。

 また、「経営指針作成塾」で学んだ、経営者として自分と向き合うことを実践。職人気質のリーダーシップからの自己変革に取り組みました。今では朝礼に始まり、月一回の全体ミーティングも定例化し、社員の声が聴けるようになりました。また、労働時間が長いといわれるパン屋業界において、人材の定着に力をいれ、勤務体系や休日を増やせるよう見直しを図りました。同時に 仕事一筋で顧みなかった家庭でしたが、家事、育児も進んで行い、離婚の危機も脱しました。

地域と共同運営し売店を開店

 この春、世界遺産「識名園」の券売所横に「いまいパン」と那覇市真地自治会が共同で運営している小さな売店が新規開店しました。販売している「王国の食パン」と「王妃のぶどうパン」の二種類はこの売店のみの販売です。世界遺産の入口で「地域を盛り上げたい」と企業と地域が協力して一歩を踏み出したのです。

 観光客は園に来ても、周辺は素通りなのがもっぱらでした。「もっと地域に還元されるような取り組みはできないか」。市の公園施設を活用した事業実施についてのアンケートに、今井氏の夫人が答えたことがきっかけでした。

 初めは、市長賞を受賞した「いまいパン」の4つの菓子商品に観光客相手のお土産店にするつもりでしたが、「コロナ」感染拡大の影響で観光客は激減し、状況は一変。「地域のお土産になるようなパンを」と2種類の食パンを約一年かけて開発し、地域を識名園に引き付ける構想に切り替えます。
コロナ禍で、開店は予定より1カ月延び、入園客が落ち込む中でのオープンを、周囲には反対されました。しかし、「閑散としている識名園を見て、どうにかしたい思いが強かった。地元の人にとってここは大切な場所」と、今井夫婦の決意は揺るぎませんでした。

雇用を守る

 「日常に身近なパンで、地元の人にも園に来るきっかけにしたい」と、新しいことにチャレンジする今井氏。「なんとしても雇用だけは守る」という経営者の責任を果たし、パン屋業界では難しい組織経営を確立し、将来は障がい者雇用にも取り組みたいと抱負を語ります。「二歩後退しても三歩進む」と今井氏。地元に愛される沖縄で一番のパン屋をめざします。

会社概要

設 立:2012年10月
資本金:300万円
年 商:9,500万円
事業内容:パン、ケーキの製造・販売
従業員数:正社員八名、パート二十五名
TEL・Fax:098-836-3008
URL:https://imaipain.com/

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