【第39回】経営理念を体現した新店舗がコロナ禍の救世主 (有)歌舞伎あられ池田屋 代表取締役社長 池田 裕児氏(茨城)

池田裕児社長

(有)歌舞伎あられ池田屋 代表取締役社長 池田 裕児氏(茨城)

店舗内の写真

 創業昭和8年(1933年)、日本の伝統菓子あられ・おかきの専門店である(有)歌舞伎あられ池田屋。

 三代目である池田裕児氏(茨城同友会会員)は、代々受け継いだ「技と心意気」を大切にしながら、「伝統と革新で社会に笑顔としあわせをお届けします」という経営理念のもと、変わることのないおいしさの伝承と、時代の変化に合わせた新しい味への挑戦を続けています。

卸販売の売上激減!

 コロナの影響は3月上旬から、広がってきました。年度末・お彼岸など卸販売の売上が1,000万円以上伸び悩み、その後、取引先からのキャンセルが続出、4月、5月の卸販売の売上は70%減となりました。
利益が取れる仕事をやっていこうと観光みやげ、百貨店、高級米菓店など自社が力を入れてきた卸先が総崩れしてしまったのが要因でした。 

 長年、相手先に売ってもらうことに依存してきた卸販売。コロナ禍で、取引先が悪くなると自社も悪くなるということを目の当たりにしました。

 社員が安心して仕事が出来る環境を整えることに心を配り、雇用を必ず守ると約束、給与も基本給100%を維持しました。資金も確保、使える政策はすべて使いました。しかし、卸での売上は国の政策だけでは当然補填することはできませんでした。

新店舗が救世主!経営理念を体現した店舗

新店舗外観

 2020年2月、池田屋は新店舗のオープンを控えていました。「今笑って仕事ができているのもこの新店舗があったからだ」と池田氏は振り返ります。

 卸の売上がない時期に、新店舗での現金収入が池田屋の資金源となりました。確保した資金を使わずにやって来られたのも、店舗収入があったからです。

 当初一年間での店舗収入の予想は3,600万円でしたが、実際は6,400万円という売上をあげることができました。

 「伝統と革新を生かしたサービスで来てくれた方に笑顔としあわせをお届けするような店舗をめざす」。オープンする前から店舗に理念とビジョンを具現化し、お客様が笑顔になれる場所をつくるために、あられにこだわらず、新しいお菓子、見たことないお菓子、こんなところにこんなものがあるんだというお菓子を取り揃えています。

 「今は、店舗なんていらない時代、ネットで何でも買えるから。お客様は何のために店舗に来るのか。それは楽しい空間で楽しい時間を過ごせるから。だからスタッフ一人ひとりが池田屋の顏。楽しんで仕事をしてほしい。それがお客さまに笑顔としあわせをお届けすることにつながる」と池田氏は笑顔で語りました。

 製造直売という池田屋創業時の原点に戻り、過疎の地元に地域のシンボルとなるまちのお菓子屋さんを作りたい。新店舗には池田氏の思いとともに、理念が散りばめられ、体現されています。

同友会の学びと実践

新店舗内の様子

 「今があるのは同友会の学びと実践、そして仲間がいたからだ」と池田氏は語ります。

 池田氏が社長に就任した当初は、取引先に依存し、外部環境に流され、自社に価格決定権はなく、借金を返すことが夢だったという池田屋。なりゆきの未来を歩んでいました。

 しかし、茨城同友会で経営指針を受講し、自分たちの進む未来、なりたい未来を見つけ、自立した事業、価格決定権のある事業を展開することができたことで、コロナによる外部環境の変化の中、卸の売上は落としましたが、理念を体現した店舗をつくったことで売上を補填することができました。

 さらに、店舗がオープンしたころ、世の中はコロナ自粛で閉鎖的になっており、同友会の仲間の飲食店が大打撃を受け、元気を失っていました。「何か一緒にできないか?」と考えた池田氏は、池田屋の店舗で、惣菜、たこ焼き、マスク、干し芋のコラボ販売を始めました。同友会の仲間がいることがコロナ禍の大きな支えとなりました。

 「コロナを経て、改めて未来をつくりだすのが経営者のやるべき仕事であると気づかされました」と池田氏。支え合える仲間とともに、ビジョン達成に向かって池田屋はこれからもまい進していきます。

会社概要

創 業:1933年4月
資本金:300万円
従業員数:26名
事業内容:米菓の開発・製造・販売
所在地:茨城県取手市山王266
URL: https://kabukiarare.net/