【第42回】異例の長期休業が教えてくれたこと (一社)日々木の森 代表理事 立崎 文江氏(青森)

立崎文江代表理事

(一社)日々木の森 代表理事 立崎 文江氏(青森)

農園カフェ 日々木

 青森県十和田市の郊外、八甲田山を望むのどかな風景が広がる中に「農園カフェ 日々木」はあります。一見、古民家を改装したお洒落なカフェですが、障害者就労継続支援A型・B型事業所としての顔も持っています。カフェを運営するのは2010年に設立された一般社団法人日々木の森です。「はじめは『こんなボロ屋、キレイにできるんだろうか』と不安でした」と代表理事の立崎文江氏(青森同友会会員)は笑います。
 
 就労継続支援事業所としてカフェの運営、菓子・加工品の製造・販売、ブルーベリー農園の運営、放課後などデイサービスを手掛ける同社。コロナ危機が拡大し始めた2020年4月に創業以来初めてとなる長期の休業を経験します。その間、テイクアウトと前払い式の食事券の販売だけが売上をつないでいました。毎朝5時にカフェに行き炊飯器のスイッチを入れ、ひっそりと静まり返った店内で黙々とテイクアウトの折り詰め作業を続ける毎日。目前に5月の大型連休が迫る中、一つの転機が起こります。

大型連休中での長期休業

 大型連休中は例年であれば一番のかき入れどき。スタッフ・利用者に対して「絶対に休まないでね!」と檄(げき)を飛ばすところですが、先の見えない状況に嫌気が差していた立崎氏は、開き直りとも言える「全員で4日間休む」という決断をします。その結果、シフトで休むのではなく「全員が休んでいる」ことが安心感を生み、その後の業務に弾みがつきました。休み明けからは「いつか来る」営業再開のための接客・接遇の社内研修や、生産・加工を展開するB型事業所の充実を進め、カフェの休業からおよそ2カ月後となる6月15日に営業を再開しました。

「待ち」から「攻め」へ

店内

 休業明けからちょうど1年が経ち、売上は約8割まで回復しました。コロナ危機以前の水準には戻っていませんが、それでも焦りはないと言います。それは、立ち止まらなければ見えなかったことに気づかされたからです。カフェの再開後、常連客の来店頻度が上がりました。以前はインバウンドなど団体客への対応に追われ、店内もガヤガヤした雰囲気でしたが、コロナ危機を経て店内は「ちょうどよい雰囲気」になり、当初のコンセプトである「来店されたお客さまに癒やされていただく」ことを置き去りにしていたことに気づかされたと立崎氏は言います。また、カフェの営業を「待ち」と捉え、農作物の生産と加工という「攻め」の要素を強くする重要性にも気づきました。

 これからはそうした部門を増やし、65歳以上の高齢障がい者も活躍できる場所を設けたい、と立崎氏の夢は膨らんでいきます。

会社概要

設 立:2010年
年 商:1億円
事業内容:障害者就労継続支援A型事業所(『農園カフェ日々木』の運営)・同B型事業所(菓子・加工品の製造・販売)、放課後などデイサービス(『てみる』の運営、就学児童対象サービス)、ブルーベリー農園の運営(2,200坪)
従業員数:27名
所在地:青森県十和田市大字相坂字高見147-89
TEL:0176-27-6626
URL:http://www.nouenhibiki.com/