【第4回】癒しを届けたい、その想いをアクアリウムにこめて (有)グッピー園 代表取締役 高橋 明氏(山形)

高橋明社長

(有)グッピー園 代表取締役 高橋 明氏(山形)

店内の様子

 山形市で観賞魚販売事業を展開する(有)グッピー園(高橋明代表取締役、山形同友会会員)では、コロナ禍の中、全国発となる水槽や熱帯魚などをセットにして自宅に届ける「おうちに水族館」のサービスを開始し、多くの方に“癒し”を届けています。

「おうちに水族館」の誕生

 同社は、昭和46年(1971年)に高橋氏の父が鑑賞魚専門店として創業。2009年に山形同友会に入会した高橋氏は、2010年に山形で開かれた青年経営者全国交流会をきっかけに、経営指針作成セミナーを受講します。セミナーで何のための経営か、自社の存在意義を問われ、「熱帯魚を売る店」から「水世界創造業」に事業領域を定義し、「癒し」を提供してきました。

 新型コロナウイルスのまん延により苦境に立たされる飲食店を見て、高橋氏は対面型の商売ではなく、お客様がお店に来なくてもいい方法はないのか、営業ができなくなる場合を想定し考え始めました。その時、自社の経営理念「水と熱帯魚による『いのちの輝き』で、『最高の癒し』をつくります」が頭をよぎります。「コロナ禍で閉塞感が漂うこんな時こそ、安らぎと癒しを提供したい。癒しだけを考えたら、一つずつ飼育環境を整えていくという従来の方法はただ煩わしいだけなのではないか」と考えました。そして、癒しを届けることだけを追求した結果、アクアリウムのデリバリーサービスが誕生しました。

業界の当たり前を見直して

おうち水族館

 熱帯魚を飼育する際は、水槽を購入し、水を循環させるなどした上で、魚や水草を入れ、少しずつ飼育環境を揃えていくのが一般的です。従来の手法から、一切の“手間”を代行し、完成形をお届けする商品が「おうちに水族館」です。

 全国初となったアクアリウムのデリバリーサービスは、全国6紙の新聞、7つのニュース番組と数多くのマスコミに取り上げられ、県外からも問い合わせが入りました。半径30kmを商圏と考えていた高橋氏でしたが、何とかしてその思いにこたえたいと、熱帯魚が納品される時と同じように酸素を充填し、発送する方法を思いつきます。すぐにアクアリウムとして使用できるようマニュアル、カタログ、水替え道具一式、飼育に必要なものをすべて詰込み発送しました。試行錯誤の中で最適な発送方法を見つけ出し、「現在では遠くは近畿地方まで発送できるようになった」と高橋氏は言います。
 横浜にお住まいの方からは「就職したばかりの娘がコロナ禍の中、毎日電車通勤をして東京まで通っている。緊張感でいっぱいの娘に癒しのひと時としてプレゼントしたい」という問い合わせがあり、その想いに共感した高橋氏はすぐに発送に取り掛かりました。家に届いた「おうちに水族館」は娘さんに大変喜ばれ、コロナ禍を忘れる癒しとなったと感謝の電話があったと言います。

 業界の当たり前を見直すこと、そして自社の固有の役割は何かを深掘りすることで、新たな商品を生みだし、商圏の拡大にもつながっていきました。また、今までマニアックなお客さんが多かった同社にとってビギナーの顧客層を掘り起こす機会にもなりました。

同友会のネットワーク

 高橋社長は家庭用アクアリウムだけではなく、商業施設内の大きなアクアリウムの設営にも携わっており、2014年には北海道の札幌市に熱帯巨大淡水魚水槽(50トン)、15年には函館市にマゼランペンギン飼育水槽、18年には釧路市で熱帯海水アオウミガメ水槽(36トン)も手掛けています。北海道での水族館のシステムを導入したアクアリウムの施工の際には、つてがない中で一から施工業者を探すのではなく、北海道同友会の会員企業の力を借りてつくり上げることができました。「同友会のネットワークを生かすこと、これも会員であることの恩恵の享受だと教えてくれました」と高橋氏は語ります。

会社概要

創 業:1971年
資本金:300万円
事業内容:ペット生体・飼育用品卸売及び小売、水と観賞魚のトータルプロデュース、インテリア水槽レイアウト及び出張メンテナンス、インテリア水槽リース・レンタル、オーダーメイド水槽設計、施工
従業員数:3名
所在地:山形市江俣2-2-41
TEL:023-681-7188
URL:https://www.guppy-en.com/