【第16回】顧客との信頼、社員との信頼をつくるのが社長の仕事 宇陀化成工業(株) 代表取締役社長 栗林 浩二氏(奈良)

宇陀化成工業(株) 代表取締役社長 栗林 浩二氏(奈良)

 宇陀化成工業(株)(栗林浩二代表取締役社長、奈良同友会会員)は、プラスチック製品の製造工程で発生するロスをリサイクルし、再生原料としてフィルム・シート製品を製造しています。100%再生原料にこだわり、良質な製品を生み出すために、強度、コシ、粘りなどさまざまな特性を持った原料の配合を創業時から研究・開発し続けています。1998年には国内で初となるエコマークを付けたごみ収集袋「ポリハイ」の製造販売を開始し、以来今でも中核製品のひとつです。栗林氏は30歳のときに先代から事業を承継し、経営指針の成文化と実践をベースに社内の組織づくり、風土づくりに注力してきました。

誰もわからないものは、追いかけてもしょうがない

 商品

 環境志向の高まりもあり順調に業績を拡大してきましたが、コロナ禍では外食産業向けのごみ袋の売上が30%ダウン。さらに1年先5年先に感染は収まるのか、社会はどうなっていくのか、将来の姿を誰も断言できない状況のなかで、栗林氏は「誰もわからないものは、追いかけてもしょうがない」と、今できること・新たに自社が力になれることに思考と行動の舵を切りました。
 当時はレジや受付などで飛沫防止シートが設置され始めて、品薄になっていることを知り開発に着手。再生原料では難しかった透明性を、新しい技術で実現し新商品の高機能フィルムを誕生させました。このフィルムは、大手小売店との直取引に至るとともに、思いがけず建築分野から、ブルーシートに代わる資材にならないかという問い合わせがあり、2000万円投資をして新たな資材を開発。大手ハウスメーカーの受注につなげることができました。

信頼を土台に、もっと相手の力になれる提案を

社屋

 コロナ禍でも、建築現場はあまり影響なく動いている感覚がありました。この分野に力を入れようと、土木建築関連の既存顧客に提案営業も始めました。原材料や配合を変えて機能性を高めたり、コスト削減をしたりと、往来が難しい時期にも電話で顧客のニーズをヒアリングしてはサンプルを作成し送ることを繰り返しました。

 設備

 宇陀化成工業では従来から基本的に営業はせずに、お客さんの紹介やインターネットで顧客を広げてきました。その背景には確かな品質や納期への信頼があります。また栗林氏は「誤解されたくない、曖昧にはしたくない、コソコソしたくない」と、真剣な商談には隠しごとなしに本音で臨みます。原料の価格、商流の都合、いろいろな事情もひっくるめて自社製品が相手の力になれる提案を導き出します。その姿勢が実を結び、コロナ発生から1年半経つ現在では、2年前に導入した大型設備をフル稼働しながら注文に応じている状況です。

ぶれない社長、ぶれない社員 信頼がつくる風土

 コロナの影響で予定通りに進んでいないこともあるなかで、「方針にもとづいて目標を立て日々行動を重ねていくので、コロナ禍でも社員に動揺や混乱はなかったです」と栗林氏。経営指針セミナーを受講して以降、理念や方針を常に念頭にオープンな社風づくりをしてきました。売上などの数字の月次報告は回覧し、また業界の動きや社長が考える方向性も朝礼で常に発信をしています。コロナでどの分野のどの商品がどれくらい減ったのか、逆に力をいれていくのはどこか。社員は社長の言葉に裏表がないことを日ごろの積み重ねから知っており、その信頼関係は方針を理解したうえでのIT化などの現場での業務改善やチームづくりにつながっています。
 SDGsの観点から100%再生資源の商品にオーダーも年々増えており、時代は追い風になっています。来年からは部門ごとの体制を強化し、組織体制の変革にチャレンジしたいと語る栗林氏。社会に信頼される商品をつくり出す、高信頼性の企業づくりはさらに発展していきそうです。

経営理念

「想いやりと感謝の気持ちをもって社員の幸福を実現し、環境と経済の好循環型社会の役割を担います。」
私たちは、拘りと誇りをもってお客様の期待にお応えし世界に発信します。
私たちは、常に新しい価値を創造し社会に必要とされる企業を目指します。
私たちは、御取引先様と信頼関係を築き、共に成長し仲間の成長を支えます。

会社概要

創業年:1985年
設立年:1987年
資本金:2000万円
売上高:13億7千万円
従業員数:社員33人・専属加工所 7社
事業内容:再生原料製ポリエチレンフィルムの製造
所在地:奈良県宇陀市榛原篠楽117-1
TEL:0745-85-3001
URL:https://www.udakasei.co.jp/