【第17回】業界の常識を変えCS・ESアップ!結果的に収益アップ!! あぶらや燈千 代表取締役 湯本 孝之氏(長野)

湯本孝之代表取締役

あぶらや燈千 代表取締役 湯本 孝之氏(長野)

 長野県の北部に位置する「湯田中渋温泉郷」で旅館業を経営する湯本孝之氏(あぶらや燈千代表取締役、長野同友会会員)。温泉に入る野生の猿「スノーモンキー」や毎年全国各地からスキーヤーが集う志賀高原など自然に恵まれ観光資源が多いまちです。
 湯本氏は3代目として、2017年に経営を引き継いでから行動力と決断力でさまざまなことに挑戦し、取り組んできました。

お客様のニーズをキャッチ

あぶらや燈千外観

 コロナ以前から食事は提供していましたが、「部屋食」の需要には対応できず断っていました。そんな中、コロナ禍がきっかけとなり、客室でシェフが目の前で料理を作って提供し、お風呂も自室で満喫できるよう今年の8月に館内をリニューアル。ほかの旅館と差別化を図り、「密」を心配することなくお客様が安心・安全、かつぜいたくに楽しむことができるようになりました。

「稼働率」から「利益率」重視に

あぶらや燈千館内廊下

 昨年の緊急事態宣言の際は宿泊がまったくありませんでした。極めて異例なことですが、この空いている時間を活用し、オペレーションマニュアルの見直し、マルチタスクの習得、固定費の見直し、人材育成&CS(顧客満足)アップ、SDGs研修、組織力向上などさまざまなことを行いました。そのおかげで、売上はダウンしましたが、利益は大幅にアップしました。そして「結果的にコロナ前よりも経営はよくなっている」と笑顔で語る湯本氏。さらに社員研修によって社員の意識も上がりました。現在は、マルチタスクによりスタッフのスキルが向上し、シフトに入る社員も最小限の人数で最大限のお客様を受け入れることで非常に効率が上がっています。

業界の常識を変えよう

あぶらや燈千の玄関

 旅館業には、以前から「中抜け」という課題がありました。これはお客様がチェックアウトしてから新しいお客様がチェックインするまでの5時間ほどが休憩時間となり、お客様のチェックイン後にまた働きに来るというものです。この働き方は、特に最近の若い人にはなかなか受け入れられず時代に合わなくなってきました。あぶらや燈千では、12月~3月は完全週休2日制として水・木曜日は完全休館としています。これも社員研修の成果のひとつであり、社員一人ひとりの頑張りが自分たちに返ってきて実感できることでES(従業員満足)向上にもつながっています。
 また、近年「マイクロツーリズム」という考え方が浸透してきており、改めて近隣の観光が見直されてきています。事業再構築補助金も活用しながら、敷地内に「日帰り複合施設」の設置を来年8月のオープンをめざして進めています。これにより「昼間の売上をつくる仕事」ができ、社員の働き方改革にもつながっています。「日帰りのコンテンツがない中のチャレンジで失敗はできない」としながら湯田中渋温泉郷エリア全体がにぎわう施設にしたいと湯本氏は力強く語っています。それにあわせ来春は新卒を7名採用しました。現在、観光業は全体的に人手不足ですが、以前旅館業で働いていた人が戻って来られるような体制を構築し新たなファンの獲得も進めています。

企業理念

「笑顔をわかちあう」

経営理念

(1)私たちは新たな価値を創造し、事業の成長と社員の幸福実現を目指します。
・「旅館」という枠にとらわれず、常に新しい価値を導入し発展し続ける
・全員参加の経営で会社の発展を目指し、全従業員の幸福実現を目指す
(2)私たちは学び続け、成長し続けます。
・自ら考え、自ら行動していく
・向上心を持って切磋琢磨しあう
(3)私たちは地域と観光の発展に貢献します。
・あぶらや燈千にかかわるすべての人に喜び、感動を
・あぶらや燈千の発展が地域と観光の発展に貢献できるように

会社概要

創業年:1965年8月
資本金:1,000万円
年商:約3億6000万円
事業内容:旅館業
従業員数:40名
所在地:〒381-0402 長野県下高井郡山ノ内町大字佐野2586番地5
TEL:0269-33-3333
HP:http://www.aburaya-tousen.co.jp/