【第20回】地域にとってなくてはならない企業になる~大山こむぎプロジェクトの挑戦~ (株)大山こむぎプロジェクト 代表取締役 笠谷 信明氏(鳥取)

 笠谷信明代表取締役

(株)大山こむぎプロジェクト 代表取締役 笠谷 信明氏(鳥取)

 小麦畑

 笠谷信明氏((株)大山こむぎプロジェクト代表取締役、鳥取同友会会員)は、鳥取県米子市生まれ。地元の高校を卒業後、日本大学法学部に入学。近年では関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科で経営管理修士(MBA)を取得し、現在経営コンサルタントと社会起業家の2つの法人経営者として活動しています。同友会に入会したのは2020年4月で、米子支部の広報委員として活躍しています。その笠谷氏が代表取締役(事務局長)として関わっているのが「大山こむぎプロジェクト」です。

大山こむぎプロジェクトの紹介

 実際のパン

 「大山こむぎプロジェクト」は、地元のパン製造販売事業者と農業者を中心とした農商工連携事業の取り組みとして始まったもので、小麦の生産拡大、小麦粉を使った商品開発・販路拡大、学校給食パン用小麦としての活用増進などを進めるプロジェクトです。笠谷氏も(株)山陰農業研究所の社長として、自らトラクターに乗り、小麦を生産しています。
 プロジェクトのスタートは2010年。米子市内のパン屋のシェフから、国内産ではなく地元産の小麦でパンを作りたいとの熱い思いを受け、1軒の酪農家が生産を開始。鳥取県では1980年ごろから小麦の生産農家がなく、小麦生産量ゼロからの栽培でしたが、2021年6月に質のよい小麦を2.7トン収穫することができました。2013年からは大山こむぎを学校給食のパン用にも供給する取り組みがスタート。2014年に笠谷氏が事務局長として参画後、2018年に株式会社に法人化しました。
 2011年に2.7トンだった収穫量は、年々協力する農業者が増え、耕作面積を増やし、2021年は230トン収穫することができました。とはいえ全国の生産量764,900トン(2018年)の1%にも満たない量です。

プロジェクトの役割

 生産者の名前が入った商品

 大山こむぎプロジェクト事務局の機能としては、次年度の利用小麦量の目測と収量の調整や生産者部会との播種前契約、収穫後の小麦を製粉会社へ配送する段取り、学校給食など大口取引先と来期の利用量の調整などがあります。また、大山こむぎのブランディング、情報発信と共有化、生産者部会(小麦生産農家)と協働、これらを通じて大山こむぎで地域を元気にする使命を担っています。コロナ禍で先行きが不透明な中にあっても、農業と食は必ずあり続けなければいけません。生産者の生産意欲向上を狙って生産者の名前の入った商品展開をすることで「生産農家の顔の見える化」を図っています。
 農林水産省は「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」として、「強い農林水産業」、「美しく活力ある農山漁村」の実現に向けて、農山漁村の有するポテンシャルを引き出すことにより地域の活性化、所得向上に取り組んでいる優良な事例を選定しています。「大山こむぎプロジェクト」は、中国四国地区独自の特徴ある優れた取り組み、今後の活躍が期待できる取り組みとして「中国四国農政局『ディスカバー農山漁村(むら)の宝』」に選定されました。

今後、何をめざすのか?

 笠谷氏は「全国一人口の少ない県ではあるが、食の関心度の高い集団(県民性)を創造する。大山こむぎを食べに来て頂く仕組みの創造をめざし、小麦の持つ可能性を職人(作り手)の技で広げていきたい。そして、“真”の地域にとってなくてはならない企業になるためには、多様性を尊重することと素早い変化に対応すること、量より質を追求すること、食の安心・安全はもちろん生産者の顔や作り手の思いを直接お届けすることが必要。さらには、連携事業(農商工連携・6次産業化)を通じて生産者の生産意欲と小麦の生産を振興し、品質向上化をめざすサイクルづくりと大山こむぎのブランディング向上をめざします」と意気込みを語ってくれました。

経営理念

鳥取県産小麦を通じ、地域社会に新しい価値創造を提供する

会社概要

創 業:2018年
事業内容:鳥取県産小麦の卸業・鳥取県産小麦商品の販売、商品開発プロデュース
所在地:鳥取県米子市旗ヶ崎2-14-15
TEL:0859-57-7708
URL:https://daisenkomugi.com/