シリーズインデックス:激動をよき友に2
【第21回】どんな時でも仕事はある (株)行廣国際アカデミー 代表取締役 行廣 智明氏(栃木)(2022.1.12)
(株)行廣国際アカデミー 代表取締役 行廣 智明氏(栃木)
青天の霹靂
2020年3月、コロナショックは栃木市で日本語学校、鬼怒川で外語観光専門学校を営む行廣智明氏((株)行廣国際アカデミー代表取締役、栃木同友会理事)にとってまさに青天の霹靂でした。海外からの留学生および労働者の入国が停止されたのです。日本語学校と海外人材紹介事業の売上は前年対比−71%に落ち込みました。さらに、観光専門学校に通う国内留学生80名のアルバイトが一時停止し、生活困窮者が続出しました。待望の新入生を迎え入れることができない、しかも現役生は学費を払えない。会社の資金繰りは一気に悪化しました。
留学生の暮らしを守る
行廣氏はすぐに自社の資金確保を行います。緊急融資、持続化給付金、家賃支援補助金などの政府系助成制度を活用。困窮する留学生には緊急小口資金貸付(社協)の申請を行いました。初めは「定住外国人は可能だが、留学生は無理」と融資を断られましたが、行廣氏は本部へ再三にわたり連絡をとり、最後は直談判を行って何とか留学生の当座の資金を確保します。この取り組みは全国に先んじて行われ、この後、留学生に対する貸付が可能になりました。
次は学生のアルバイト先の確保です。鬼怒川の旅館はどこも厳しかったのですが、コロナ禍で売上を伸ばしていた食品工場などに振り分け、学生全員のアルバイト先を確保しました。「生徒たちの暮らしを守る」という行廣氏の思いを知り、力を貸してくれた仲間たちの協力の賜物でした。
どんな時でも仕事はある
怒涛の春・夏を乗り切りましたが、来期の留学生の受け入れは見えてきません。学校としての売り上げは見込めない状況です。業界内では廃校や身売りが相次いでいました。日本国内の外国人労働者の生活や帰国困難者にとっても非常に厳しい状況が続いていたのです。
同社では政府の救済措置である「雇用維持支援制度」を活用して、自社のゲストハウスの空室を無料開放し、全国各地の外国人労働者への救済事業を行いました。また、10月に入り、日光市内の鶏頂山にあるホウレンソウ生産事業者の来春の人材不足問題に対して、「雇用維持支援制度」を活用した国内人材マッチング企画を日光市の人材派遣業者と農事業者へ提案しました。「国内人材マッチング事業」は試行錯誤の繰り返しでしたが実績が徐々に拡大して、約80名の新規労働者の働く場を確保し、4月入学生の売上分を補てんしました。
七転び八起き
2021年1月、再度海外からの留学生と労働者の入国停止により、4月の入学が10月以降に延期になり再び売上が減少。一方で鬼怒川の観光専門学校は、三回目の緊急事態宣言により、再び観光客が激減します。しかし、観光専門学校の第一回卒業生も無事に就職(留学生就職率は全国でも優良)、栃木市の日本語学校も過去最高の就職率と進学率を達成しました。
ここで仕事をつくり、ここで仲間たちと生きる
2021年6月から再び鶏頂山への収穫人材の供給が開始されました。これにより会社全体としては過去最高の収益を出すに至ります。結果的には農業分野を中心に、人材紹介だけでなく人材派遣業にも進出することで危機の打開を図りました。
行廣氏は「栃木に骨を埋める覚悟ができ、心の整理がついたことが今回の危機に向かう力を与えてくれた」と語ります。広島出身の行廣氏ですが、この栃木でさまざまな人と出会い、ここを終の棲家として墓を建てました。「ここで生きる」の一念がこの地域での仲間づくり、ひいては仕事づくりにつながりました。「どんな時でも仕事はある」「どんな時でも打つ手はある」その言葉はこの地に住むすべての人へのエールとなりました。
会社概要
設立:2012年
事業内容:日本語教育
社員数:(グループ全体)20名 パート社員9名
所在地:栃木県栃木市大宮町2496番地5
URL:http://www.yukuhiro.jp