(株)自然計画ペンションししくい 代表 西口 哲浩氏、麻紀氏（徳島）
経営は寄せては返す波
徳島空港から車で南に約2時間、高知県境に位置する美しい海岸線の先にある徳島県海陽町。その中でも目の前にプライベートビーチを独占しているペンションししくい（西口哲浩代表、徳島同友会会員）は、有名なサーフスポットが連なるこの地域でも特別な存在です。
夫婦でペンションを営む西口哲浩氏、麻紀氏。コロナ禍以前は国内だけでなくインバウンドの宿泊客も増えて経営は順調でした。
しかし、2020年2月に起こったコロナウイルス感染症では、ニュースで報じられると同時にキャンセルが相次いで新規予約も停止し、一時は前年売上比8割減を経験しました。また、宿泊しても非対面を望むお客様が増えて接客方法の見直しを迫られましたが、その変化にもすぐに対応できたのは小さいペンションだからこその強みでした。
人の動きがこれだけ止まった経験は初めてで、余暇に対するニーズがなくなる不安と、このまま収束しなかった場合を考えたときに強い危機感を覚えました。それでも何も手を打たないわけにはいかない、お客さまが宿泊していない今だからこそできることは何か…？経営がどんな状況であっても変わらない波の音を聞きながら、大掛かりな改修工事を決断しました。
ペンションの一番奥にある一室を、プライベートビーチに一番近いログコテージ「波音(ハノン)」としてリニューアル。海をイメージした部屋に質感にこだわった家具や調度品をそろえ、ぜいたくな時間を過ごせる空間です。
春とともに吹く風
いつかは出したいと思っていたパン工房の事業にも着手し、今年1月に「海辺のパン工房Hana」をオープン。朝食で出していた奥さまの手作りパンはお客さまにも好評で、販売してほしいとの要望が多かったことが決め手となりました。イチオシの絹ふわ食パンは厳選した食材にとことんこだわり、何もつけなくても素材本来の味わいを楽しめます。地元の方にも気軽に立ち寄ってもらえる環境を目指した工房から漂う焼きたてパンの香りが、ペンションをふんわりと包んでいます。
また、初めての新卒採用にも取り組みました。高校卒業後、ほとんどの子どもたちが出てしまうこの街では、新卒採用が長年の課題でした。そこで相談を持ちかけたのは会員企業の専門学校。宿泊施設に就職を希望するネパール人の留学生とニーズがマッチし、来春の入社が決まりました。彼が新しい風を運んでくれると同時に、インバウンドが戻ることを期待しています。
会員企業との連携も加速しました。シェフとワインソムリエを招いたワイン会は地元食材をメインにした料理を提供し、同時にワインの即売会も行って参加者に楽しんでもらえるイベントになっています。
描いた夢を叶える力
「すぐに叶う目標より、長期の目標は温められて面白い」と語る西口夫妻。2人で描いた夢を少しずつ実現してきました。
大変なこともあったけれど、会員企業との連携が進んで夢に一歩近づけたことが大きな収穫だった2021年。今年からはこれまで温めてきた構想に向けて一気に走り出します。グローバル化を見据えてヴィーガン対応の食事を提供できる体制づくりをすすめ、長期滞在型のゲストハウスも2024年夏のオープンを目指しています。
「これからも人とのご縁を大切に」と語る素敵な西口夫妻が、海陽町のペンションししくいで皆さまをお待ちしています。
会社概要
設立年：1978年
資本金：1,000万円
従業員数：正社員1名、パート6名
年商：3,800万円
事業内容：宿泊業
住所：徳島県海部郡海陽町宍喰浦字古目84-18
電話番号：0884-76-2130
URL：https://www.p-shishikui.com/
