【第24回】貧困する子どもたちを支え、地域社会に送り出す。地元密着型企業の挑戦 誠建クリエート(株) 代表取締役 NPO法人いいちばみらい 代表理事 宮本 義勝氏(千葉)

宮本義勝代表取締役

誠建クリエート(株)代表取締役 NPO法人いいちばみらい代表理事 宮本 義勝氏(千葉)

 宮本義勝氏(千葉同友会会員)は戸建やマンションを中心に、建物診断から改修、長期メンテナンスなど、建物全体に関する相談業務を行う誠建クリエート(株)の代表取締役を務めると同時にNPO法人いいちばみらいの代表理事も務めています。
 昨今問題視されている「子どもの貧困」。日本の子どもの貧困率はOECD加盟国の中でも最低水準にあり、7人に1人の子どもが貧困だと言われています。その課題解決のため、宮本氏は誠建クリエート(株)の社員と共にNPO法人いいちばみらいを設立し、子どもたちの居場所づくりとして、千葉県船橋市内で駄菓子屋や子ども食堂などを運営しています。

駄菓子屋さん

失敗を恐れず、挑戦し続けること

 地域に愛される企業として、戸建やマンションの大規模修繕営業に力を入れてきた同社。コロナの影響により仕事数も減少しますが、昨年より法人営業も強化し、個人と法人のバランスの安定を図っています。同社の強みは「失敗を恐れず、挑戦し続けること」。3カ月ごとに何かを変えることを習慣にしており、コロナ禍のような未曾有な状況でも柔軟に対応していく基盤ができています。その姿勢は自立型社員の育成やいいちばみらいの運営にも生かされています。

NPO法人いいちばみらいの取組み

おさがり交換会

 宮本氏が子ども支援に関心を持った契機は約15年前。当時OA機器販売会社の取締役だった宮本氏は近親者の子どもの病死を経験します。その時感じたのは「資金援助だけでもできたはずなのに、仕事に夢中で気にかけることをしなかった。自分に何かできることは無かったのか」という罪悪感でした。その後、実兄と共に防水会社を設立。その8年後、業務の一部を分社化する形で誠建クリエート(株)を設立しました。建設業に携わる中で、子どもたちを支援したい気持ちはより大きくなっていき、2017年にNPO法人いいちばみらいを設立します。
 活動の一つである駄菓子屋は、本社に隣接するログハウスで運営されており、多いときでは月700名の子どもたちや住民が集まる場になっています。また社屋の一部をレンタルスペースとして貸し出したり、バナナジュースの販売を行ったり、コミュニティスペースとしても地域に浸透しています。そして活動で得た利益は同法人が運営する子ども食堂「まごめひまわり食堂」の取り組みや地域イベントの開催で地域に還元しています。

「児童自立生活事業×リクルート事業」

 現在、社会的養護下で暮らす子どもたちは18歳で自立を求められますが、自己肯定感やコミュニケーション能力の低さにより、就労困難に陥る子も少なくありません。そこで宮本氏がめざすのは「自立援助ホーム」を開設し、「児童自立生活事業×リクルート事業」を推進すること。具体的には、入所中の子どもたちと企業人との接点をつくり、交流や説明会や研修を行うことで社会性を身につける「社会教育」です。そのような社会教育を経て、子どもたちが企業に共感し、リクルートにつながる可能性も秘めています。宮本氏は「自立するためには忍耐力や社会で生きる術を知る‶教育″が必要であり、子どもたちが社会に触れる機会を創出できるのはわれわれ企業ではないか」と言います。
 また宮本氏はこの取り組みを持続可能なビジネスモデルとして確立、波及をめざしています。「この取り組みが社会課題を解決するソーシャルビジネスとして浸透すれば、参入する人が増え、結果的に多くの子どもたちのためになります。私はそれを人生の使命としており、子ども支援に集中するためにも本業も持続発展していきたいと思っています」とも話します。
 人材不足や人口高齢化の社会問題を抱える日本にとって、子どもたちは大切な社会的資源です。今後の社会を担っていく子どもたちを大人が支え、地域社会に送り出す、それは大人全員の責任です。ホーム立ち上げのため、クラウドファンディングにも挑戦した同氏。今後の躍進が期待されます。

会社概要

設立年:2017年
資本金:300万円
従業員数:誠建クリエート(株)正社員15名、パートアルバイト20名
     NPO法人いいちばみらい 正社員2名、外部委託数社
年商:3億5千万円
事業内容:建設業
住所:船橋市馬込西2-18-14
電話番号:047-460-9661
URL:https://seiken-create.co.jp/