【第26回】老舗寝具店 メーカーへの挑戦 世界のMIYZAKIブランドへ ~お客様の「寝顔を笑顔に」~ (有)宮崎蒲団店 代表取締役 宮崎哲也氏(静岡)

(有)宮崎蒲団店 代表取締役 宮崎哲也氏(静岡)

 富士山南麓に位置する富士宮市で、富士山本宮浅間大社の西側に店舗を構える(有)宮崎蒲団店(宮崎哲也代表取締役、静岡同友会会員)。創業から146年の歴史を持つ老舗寝具店です。量販店やネット販売の台頭を受け、苦境に立たされていた状況の中で同社を襲った新型コロナウイルス。宮崎氏は、経営理念を胸に10年後の未来を描き、新たな一筋の光を切り拓きます。
 宮崎蒲団店は、江戸時代まで代々浅間大社の神主だったご先祖が明治初期に創業。昔は製綿工場があったものの時代の流れとともに閉鎖し、現在は枕やマットレス、健康寝具の販売を中心に行っています。蒲団店に加え、富士山頂にある山小屋「頂上富士館」も経営しています。宮崎氏は結婚を機に蒲団屋と山小屋経営に携わり、2020年4月に代表取締役に就任しました。

コロナ禍で経営理念・10年ビジョンを作成

 2020年1月にコロナ禍に突入、4月に緊急事態宣言が発令され、お客様の来店がストップし、蒲団屋の売上が無くなりました。7月からの山小屋営業に期待していたものの、状況は改善されず営業中止が決定。全体の3~4割を占めていた山小屋の売上も無くなる非常事態に直面しました。「今までと同じではいけない。今だからこそできることをやろう」と同友会の経営指針を創る会への参加を決意しました。
 経営理念を創る過程で宮崎氏は、自社の存在意義、先代の思いや146年の歴史の重みを改めて知り、関わるすべての人に感謝の念を抱くとともに、「寝顔を笑顔に」の思いを込めた経営理念を作成しました。一方で、この間に寝具メーカーが直販やレンタル事業を始めたことに小売店として大きな危機感を覚えます。10年ビジョンに「小売りからメーカーへ 世界のMIYAZAKIブランドへ」を掲げ、宮崎氏の挑戦が始まりました。

MIYZAKIブランド第1号「ぐうすけ」が誕生

 宮崎氏は、国産オーダー枕の自社商品開発に取り組みました。オーダー枕には20年前から取り組んでおり、同社の専門店としての強みの一つでした。枕から始まったお客様とのご縁も多く、長いお付き合いのお客様もいます。高単価で在庫リスクもある自社商品の開発は難しいと考えていましたが、自社でしか作れない商品を日本全国に販売できるメリットを考え挑戦を決めます。現行品は海外製がほとんどを占めるオーダー枕の中でメイドインジャパンにこだわり、洗える抗ウイルス生地を使用するなど品質にもこだわりました。国内の協力会社を見つけるため、北海道から沖縄まで日本中の企業を探し回ったそうです。こうしてオーダー枕「ぐうすけ」が誕生。自社ブランドをつくることで地元の整体や接骨院、宿泊業など他業種との連携も考えられるようになり、新しい販売戦略が生まれました。

時代に適応した“専門店”のあり方を追求

 宮崎氏は商品開発をきっかけに、専門店として量販店やネットではできないことを追求していきます。次に構想したのは「小売りからの脱却」と「アフターメンテナンス」に取り組むことでした。ちょうど業界内ではコロナ禍で羽毛蒲団のリフォームが急増。羽毛蒲団の普及率は高く、今後もリフォームの需要が増えると考え、この市場への挑戦を決意し、羽毛ふとん製造機を導入しました。製造機を活用した事業構想を提出したところ事業再構築補助金の採択につながり、現在は経営革新計画の申請にも動いているといいます。
 「ここにたどり着くにはこの1年のどれ一つ欠けてもダメだった。今後も、オンライン・対面に関わらずお客様にあった提案を行い、睡眠の悩み解決に寄り添う専門店でありたい」と語る宮崎氏。宮崎氏の取り組みにメディアの注目も集まっています。「今後はMIYAZAKIブランドを富士宮から日本、そして世界へ発信していきたい」と意気込みを語ります。

経営理念

・私たちは地元で愛される会社としての誇りを持ち、一合一会の出会いを大切にし、寝顔が笑顔になる癒しの場を提供します。
・私たちは長年培った知識・技術を地元の方に最大限還元し、お客様の幸せを追求します
・私たちは『明るく・楽しく・元気よく』共に考え、共に歩み、周りに『元気』を伝播できる人間になります

10年ビジョン

「小売りからメーカーへ 世界の MIYAZAKI ブランドへ」

会社概要

創 業:1875年 
設 立:1954年1月
資本金:1,000万円
従業員数:正規1名 パート1名
年 商:6,000万円
事業概要:寝具販売、山小屋経営
住 所:静岡県富士宮市宮町12-22
電話番号:0544-26-3262
URL:http://www.miyazaki-jp.net