ツジコー（株）(Tsujiko Co.,Ltd) 代表取締役 辻 昭久氏（滋賀）
辻昭久氏（滋賀同友会会員）は照明器具の設計・生産、植物工場システム・LED開発のほかメカトロニクス設計などを手掛けるツジコー（株）の代表取締役であるとともに、植物工場事業や食品原料販売事業を手掛ける日本アドバンストアグリ（株）の代表取締役も務めています。
ツジコー（株）は昭和38年創業。当初は大手電機メーカーの協力会社として照明器具の木枠製造を手掛けていましたが、その後、照明器具の設計のほか家電製品の部品加工も手掛けるようになりました。辻氏は1995年に入社。新しいことに精力的にチャレンジしていましたが、大手企業から「新事業をする意味があるのか？」とくぎを刺されてしまいます。「新しいことをしてもだれも理解してくれない」ことを実感したと当時を振り返ります。
健康食品の開発に着手
第二創業しかないと考えた辻氏は、当時滋賀県が推進していた長浜バイオインキュベーション支援を活用し、長浜市で植物工場を営む日本アドバンストアグリ（株）を立ち上げました。地元の大学の協力を得ながらアイスプラントの生産や植物から得られる栄養成分をもとに健康食品を開発。インターネットで販売し売上も順調に伸びていました。また、大学との共同研究で食品の味や色味が変わらない殺菌技術も開発しました。
しかし、2011年の東日本大震災の影響で電力不足になり、節電要請を受けたことから植物工場事業を縮小せざるを得ませんでした。また、福島原発事故で影響を受けた地域に国が植物工場を誘致しますが、大手企業が中心で、ベンチャー企業は太刀打ちできませんでした。それに追い打ちをかけるように、健康食品業界では「機能性表示食品」という制度ができ、認証を受けていない健康食品の販売が難しくなりました。
天然の青い着色料
転機となったのは、2014年にJICA（国際協力機構）の事業を通じてラオスで「バタフライピー」と出合ったことです。バタフライピーは、東南アジアを中心に熱帯・亜熱帯地域で栽培されている青い花で、産地では乾燥させてハーブティーにしたり、絞り汁をお菓子の着色などに利用していました。
天然の青い着色料が無いことを知り、バタフライピーの青い殺菌パウダーは食品着色に利用できると考え、殺菌技術の改良や食品利用への研究開発を経て2017年に厚生労働省から青い殺菌パウダーに関して食品原料として、2019年には食品着色料としての許可を得ました。また、2018年に滋賀県の海外販路チャレンジ事業でドイツの展示会に出展したところ、天然の青い着色料は珍しいと注目を集め、世界のトップ企業から引き合いがあり、その内の一社とパートナー契約を結ぶことができ、欧米の食品安全基準を満たす手続きを進めています。
日本では、日本アドバンストアグリ（株）より着色原料やハーブティーとして販売しているほか、チョコレートメーカーと提携して「幸せを呼ぶ青いチョコレート」を販売しており、大手ECサイトのチョコレート部門でトップを取るなど評判を博しています。当初はメーカーがインバウンド需要で忙しく、試作を断られましたが、コロナ禍でインバウンドに歯止めがかかるとやっと試作に至りました。
今年は、ものづくり補助金を活用して滋賀県でこだわったチョコレートを製造する体制を構築し、「びわ湖ブルー」ブランドで売り出すほか、OEM製造にも取り組む予定です。
ニッチな活動で夢を語り続ける
「中小企業が前に進むためには、アイデアはもちろん、お金も必要です。前に進むためにさまざまな施策を活用してチャレンジし、時間をかけて育てていく。市場を地道に探りながらニッチに物事を進めていくことが大事です。私がいろいろなことにチャレンジするのは仕事が好きだからです。もちろん好きなだけではだめで、計画もつくりますし、数字も読みます。銀行には夢を語る必要もあります。夢を語りつづけることで人材が集まり、ワクワク、ドキドキしながら育ってくれています。逆境をプラスに変えるにはこういうところが大事だと思います」。
辻氏の夢はこれからも広がり続けています。
会社概要
会社名：ツジコー株式会社 (Tsujiko Co.,Ltd)
本社所在地：528-0057 滋賀県甲賀市水口町北脇1750-1
電話番号：TEL 0748-62-2233 FAX 0748-62-2234
創立：昭和38年 3月 1日 辻興産所
設立：昭和40年 5月19日 辻興産株式会社
資本金：2,400万円
主な事業内容：照明器具の設計・生産 メカトロ設計・生産
植物工場システム、植物育成用LED開発・生産
食品原料開発・生産
従業員数：92名
HP：http://www.tsujiko.com/company/
