【第29回】目を向けていなかった商品が武器に!~逆境の中、光触媒コーティング剤に先行投資~ (株)リレース 代表取締役 盛下 元氏(埼玉)

(株)リレース 代表取締役 盛下 元氏(埼玉)

コロナで施工ができない!

 2017年に盛下元氏(埼玉同友会会員)が、それまでのハウスコーティングの営業経験を生かして創業した(株)リレース。コロナ禍以前の主軸であった事業は、住宅やオフィスの床面と外壁を液剤でコーティングして、美観維持、汚れ防止を行うコーティング事業でした。ところが、コロナ禍により、家に他人が入ることを好まない人が圧倒的になっていきました。リフォームと違って必要性や緊急性を伴うものではないため、ほとんどの顧客は発注を先送りし、ハウスコーティングという主事業での売り上げはほぼゼロにまで落ち込みました。
 「この先どうなるのかと不安が襲いましたが、ふと自社で扱っていた光触媒コーティングに目が留まったのです」と語る盛下氏。光触媒とは光を受けることでウイルスや菌、悪臭を無害化するもので、新型コロナウイルスにおいての抗ウイルス性が実証されています。もともとリレースでは施工用の液剤を自社で製造しており、その優秀性に自信を持っていましたが、それまでは積極的に販売しておらず、施工する際に使う以外はたまたま知った業者からの発注が入る程度でした。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大により、抗菌に対しての需要が高まり、光触媒にピンポイントで問い合わせが来るようになったのです。
 それまで、液剤製造を主としていたわけではなく、液剤の注文があったとしてもキロ単位でしかなかったものが、コロナ禍を機にトン単位での受注へと展開していきました。

今が先行投資の時!

 ちょうどそのころ、リニューアルしたホームページのSEO対策も功を奏し、日に10件を超える、光触媒への問い合わせや注文が入るようになりました。
 光触媒の問い合わせが増える一方で、既存のハウスコーティング事業やリフォーム業の先行きは読めない状況が続きました。しかし盛下氏は「今はこの光触媒事業への投資の時期。ここをしのぐことで、安定供給のフェーズに入る」と判断しました。そこで、絶対の品質保証を担保するべく、業界でもっとも信用性のある認証テストを受けることにしました。その認証を取るには多くの時間を割かねばならず、人員やコストのリスクもありましたが、結果として二つの認証試験に合格し、そのうち一つは全国で2番目の取得になったことで、圧倒的な信頼性を得ることにつながりました。
 また、トン単位の注文に応えるために、分子レベルまで攪拌(こうはん)できる超音波撹拌機も導入しました。製造現場拡張のため、昨年本社の移転も決断しました。「移転後、多くの見学者が訪れるようになりましたが、製造過程を見てもらうことは、大きな信頼につながり、売り上げにも貢献しているようです」と自信をのぞかせます。
 この一連の決断は、時代にもうまくマッチし、コロナ前は光触媒コーティング事業としては独立した部門になっておらず、商品パンフレットさえもありませんでしたが、今では、全体の3分の1くらいまでの大きな売り上げとなってきました。病院や介護施設、幼稚園やホテルなどのほか、一般家庭にまですそ野は広がり続けています。

組織の新たな段階

 5年前、たった2人でスタートしたリレースは今や35名の社員を抱える規模に成長し、当初のアットホーム的な雰囲気を残しつつ、組織として全員が同じ方向を向くことの難しさも出てきました。そのような中で、自社製品に誇りが持てるよう、盛下氏ならではの取り組みがありました。「光触媒を全社員の家に施工したのです。社員だけでなく、ご家族にも健康であってほしいということが第一ですが、皆が自社製品に、さらなる愛着と誇りを持ってもらうことができたのではないかと思います」。
 コロナ禍でありながらも挑戦を止めず、昨年度は大阪と石川に営業所を開設しました。「全国展開を見据え、組織もそして自分自身も次の段階に来た」とも語る盛下氏の今後の展開が楽しみです。

会社概要

設立年:2017年
資本金:500万円
従業員:35名
事業内容:光触媒コーティング溶液製造・販売・施工、トータルコーティング、リフォーム事業等
住所:埼玉県越谷市柳町2-383-1
電話番号:048-990-1771
URL:https://www.relays.co.jp