【第32回】社員を想い 働き方改革 (有)入江鉄工 代表取締役 入江義伸氏(熊本)

(有)入江鉄工 代表取締役 入江義伸氏(熊本)

 熊本県宇城市の小川町で鉄骨工事、倉庫や店舗などの建設物の下地となる鉄骨の骨組みの作成をしている(有)入江鉄工(入江義伸代表取締役、熊本同友会宇城支部長)。
 企業ビジョン「ネジからビルまで売ってない物を作ります‼」の精神で、施工図の作成から資材の発注、組み立て、発送までしています。入江氏の父である先代が創業してから63年の歴史を持つ老舗企業です。

働き方を考えたきっかけ

 建築業界では人手不足、職人不足が問題となっています。求人を出してもなかなか人が集まらず、若手がいないため職人も減少傾向にある状態です。
 (有)入江鉄工では1名の若手社員が働いていますが、一昨年に首のヘルニアを患い、力作業が伴う現場で働くことが厳しくなりました。社員のモチベーションは下がっていき、会社に出てくることも難しくなってきたため、現場に出ず、なおかつ力を使わずできる仕事はないか、と入江氏は考え始めました。

新型コロナウイルスをきっかけにIT導入

 そんな時に新型コロナウイルスが蔓延しはじめました。
 建築業界では影響はすぐにはありませんでしたが、次第にお客様の景気が落ち込むと融資も減り、仕事も減少し、運良く仕事がきたとしてもキャンセルや作業人数の制限、防護服を着用しての作業などのさまざまな影響がありました。
 そんな中でも、入江氏は先述の若手社員が働ける環境を作るためにはどうしたらよいのかを考え続けていました。そして、国や地方自治体などがさまざまな対策を進めている中、ポストコロナを見据えた対策の1つでもあるIT導入補助金を活用し、鉄骨の施工図を起こすCADシステムを導入します。今までは人間が汎用のCADを使用して施工図を描いて発注をしていたため、溶接して組み立てると長さが合わない、部品が足りないなどのヒューマンエラーが生じることもありました。今回導入したCADシステムについて入江氏は、「新型コロナの影響で導入まで時間がかかり、まだ活用しきれていませんが、自動で必要なボルトの数や鉄骨の施工図を描きだし、発注まで行うことができるため作業効率は約10倍に上がりました」と語ります。また、「大企業でこのシステムを導入しているところは多くありますが、中小企業で導入している企業は多くはありません。施工図の需要は増えてきていますが、コストがかかってしまい中小企業はなかなか導入できませんでした」とも言います。
 さらに入江氏は、施工図を描く技術者も減少しているため、分業制も取り入れました。以前までは設計から溶接、塗装、運送までの全工程を自社で行っていましたが、今はすべてできる職人がおらず、溶接や塗装、運送とそれぞれ専門の業者に委託しています。「分業制で取り組んでいるからこそ最初の施工図にミスは許されません。委託先は施工図を基に作業するので、正解か間違いかはわかりません。そのためにもCADシステムを導入し、ヒューマンエラーをなくし、なおかつ作業効率を上げることが重要なのです」と入江氏は言います。

CADシステムを活かした雇用

 今後は、今回導入したCADシステムで施工図専門の雇用を考えています。
 「若手社員を何としても雇用継続したいという思いからIT導入補助金を活用し、CADシステムを導入しました。このシステムは需要も高く、仕事の作業効率も上げる重要なものとなっています。身体に障害のある方、在宅勤務の方が働きやすい方なども含め、CADシステムを用いてダイバーシティ雇用をしていきたいと考えています」と入江氏は力強く語ります。

会社概要

設立年:1959年
資本金:300万円
従業員数:社員2名 パート2名
事業概要:建設業(鋼構造建築・一般建築・金物作成)
住所:宇城市小川町川尻369
電話番号:0964-43-3248
URL:https://www.big-advance.site/s/156/1866/company