【第38回】「動けばチャンスはある!」コロナ禍に生き残りをかけキッチン&カフェをオープン (有)梯梧 代表取締役 山城 朝美 氏(沖縄)

(有)梯梧 代表取締役 山城 朝美 氏(沖縄)

 沖縄県糸満市米須は、日本で唯一地上戦が行われた沖縄の戦争を知ることができる「ひめゆりの塔」があり、観光客の足が絶えない場所。周辺には観光客向けのレストランやお土産品店が立ち並んでいますが、2021年末にオープンしたのが、地元住民向けのコミュニティー空間提供にこだわる「キッチン&カフェでいごプラス」です。1972年創業以来、修学旅行生や団体観光客にとって欠かせない施設である「ひめゆり観光センターでいごレストラン」(以下、「でいご」)の一角をリノベーションし、地域に根ざした店舗へと様変わりしました。
 「コロナ禍で先の見えない将来に焦り、行動するしかなかった。動けばチャンスはある!」と、開業までの経緯と店づくりのこだわりを語るのは、店舗を経営する(有)梯梧の山城朝美氏(沖縄同友会会員)です。

2度訪れた経営危機

 山城氏は、「でいご」(糸満市)の他に首里城観光土産品売店(那覇市・首里城)も営んでいましたが、2019年10月31日に首里城本殿で火災が発生。1度目の経営危機です。当該店舗は営業不能となり、売上は大きく減少。それでも、従業員は解雇しませんでした。「でいご」で雇用を吸収したのです。
 そのような中、2020年1月16日に国内初の感染者が確認された新型コロナウイルス。同4月以降に緊急事態宣言が発令されるなどの影響により2度目の経営危機に直面します。コロナ前と比較して、売上はマイナス80%まで減少しました。「観光客に依存した経営基盤ではダメだ。外部要因に影響を受けにくい新たな基盤が必要だ!」と孤軍奮闘します。

孤軍奮闘から地元自治会や沖縄県中小企業家同友会の仲間の力

 「地元の人間は、あそこ(「でいご」)は観光客向けの場所と認識しているから食べに行きにくいよ!」と、相談先の地元自治会長に断言されたことに大きな衝撃を受けました。
 これをきっかけに、「地元の野菜やお米、加工品の販売を通じて地域に愛されるコミュニティーの場を提供したい!」と経営の見直しを覚悟します。そして、沖縄同友会の仲間である宮沢財務管理オフィスの宮沢賢氏に相談。他にも、同ネットワークにて多くの方々から助言を受けることができました。まさに同友会理念の実践を感じることになります。
 新型コロナ感染症の影響も約1年が経過し、先の見えない状況に陥っているころ、一緒に地区活動をしている桑鶴真人氏に相談した事業戦略が補助金(事業再構築補助金)の活用に進展し、新規事業が具体化します。事業採択を受けたことで、山城氏の思いも加速することになりました。

経営危機から生まれた一体感

 「新型コロナウイルス感染症は大変大きな打撃を受けたものの、経営の再構築を通じて、風通しのよい会社風土を創出できたのではないか」と山城氏は話します。修学旅行生や団体観光客への接客などに追われ繁忙な日々を過ごしていたコロナ前の日常から一転し、従業員とゆっくりと話す機会も増えました。事業の実行計画を推進する上では、全従業員でアイデア出しや意思決定プロセスを設けるなど団結力も高められました。「解雇はしない」という山城氏の思いは、決意に変化したのです。

動きを止めず変化し続けている「キッチン&カフェ」

 「どうやったら地元の子供たちが集まってくれるかな? もっと地元の人が集まれる場所にするためのアイデアを出そう!」と、山城氏そして従業員の動きは店舗がオープンしてもなお止みません。
 従業員が一体となって現状に向き合っており、「キッチン&カフェでいごプラス」は地域密着の魅力的な店舗となりそうです。

会社概要

創業:1972年
設立:2009年
資本金:900万円
正社員:7名(パート・アルバイト:20名)
事業内容:飲食業レストラン(550席)・観光土産品店
住所:沖縄県糸満市米須1056番地
TEL:098-997-3385
URL:http://www.himeyuri-deigo.com/