【第12回】広島の小さな町工場が世界で特許取得! 同友会で始まったわが社の挑戦 西研(株) 代表取締役社長 寺本 博氏(広島)

西研(株) 代表取締役社長 寺本 博氏(広島)

散髪屋のような仕事をする

 寺本氏(広島同友会会員)が大学卒業後、たった二人で起業したのが西広島研磨工業(現在の西研(株))です。300万円の資本金、汎用工具研削盤2台だけで切削工具の再研磨事業をスタートさせました。

 切削工具とは、自動車・飛行機・医療分野・半導体・家電・機械・メガネ・スマホなどさまざまなものを作る際に使用される工具です。

 西研で行っているのはその再研磨(使用済みの工具を研磨してまた使えるようにする仕事)。この仕事を選んだのは、一回限りの仕事ではなく、散髪屋のように何度も利用してもらえる、循環する仕事をしたかったからというのが理由です。

価格決定権のある商品作り

 西研は再研磨が主力とはいえ、再研磨の競争力が低下しているのが現状でした。東アジアの低価格切削工具の普及やリーマンショックなどが影響し、同業者も廃業に追い込まれました。

 なんとかしなければという思いから、協力会社とともに「クレアボーラー」を開発し特許を取得。これで価格決定権のある独立型商品を作っていこうと決心し、事業再構築補助金を申請しました。テーマは「特許取得による新製品製造可能な独立型企業となり魅力ある企業に挑戦」。ほぼ満額の採択となった補助金は、新型ドリルを内製化するための研磨機や分析機器、加工機素材などにあてられました。

 クレアボーラーは深穴加工用1枚刃ドリルで、従来の工具なら4~5時間かけていた加工が2~3分ででき、真っ直ぐきれいな穴を精密に開けることができます。また、削りかすの排出機構も備えていることが強みです。これまでの顧客は自動車関連などのモノづくりに携わる企業が主でしたが、この新型ドリルで、医療・化学関係や繊維関係、大学や技術センターなど、新たな顧客が見込まれます。また、海外への広がりを見越して、日本だけでなく世界各国で特許を取得しました。西研の自社ブランド比率は現在12%。2年後に20%を目標にしています。

物事のハードルが低くなる

 新商品を開発して今年の9月にはドイツのシュトゥツガルトでのAMB(工具に特化したヨーロッパの2年に1度の展示会)に初めてメーカーとして出展し、日本での発売は11月1日ですが、10月にオランダから注文がありました。11月にはJIMTOF(これも2年に1度開催される日本国際工作機械見本市)にも出展予定です。

 特許を取得するなんて、かつては想像もしていなかったと寺本氏。「同友会に入って、多くの経営者が日々挑戦していることを知り、物事のハードルが低くなったおかげで、いろいろなことに挑戦するようになった」と語ります。

 ほかにも異業種の経営者や金融機関とのつながりができたこと、委員会(経営労働・求人社員教育・広報など)で勉強できたこと、学びのアウトプットの重要性など、さまざまなことを吸収できたことで今の寺本氏があります。

 「イベントが多く、時間を取られすぎたり、「はい」か「イエス」しかなかったりとスパルタなこともありますが」と苦笑まじりの寺本氏でした。

明るく楽しい会社へ

 とはいえ、同友会で学び実践し続けたこともあり、2人から始まった西研も大きくなりました。新卒採用を続けているおかげで、初期に採用した新卒が会社の中核を担うようになってきました。

 創業から27年経ちますが、大手重工のコンペで自社製品が採用、ISOの取得、特許出願、事業再構築補助金の採択事業に選ばれ新工場を建設といろいろなことに挑戦しました。

 人はドキドキわくわくすることが生きがいだと寺本氏は考えています。わくわくしない人生は面白くない。そんな思いを経営理念にも掲げています。西研はこれからも明るく楽しい会社をめざします。

会社概要

創業 1995年
資本金 3000万円
従業員数 21名
事業内容 切削工具の製作・加工・再研磨
住所 広島市西区大芝1-7-12
電話 082-230-9100
URL http://www.nishiken-inc.com/