【第23回】挑戦し続けて生まれた“私たちのお店”~誰でもワクワクする居場所づくりを~ (株)のうえんプランニング 代表取締役 内山 真琴氏(千葉)

(株)のうえんプランニング 代表取締役 内山 真琴氏(千葉)

 千葉県袖ケ浦市の内陸部は田園や山林など豊かな自然が残る地域です。内陸部を車で進むと見えてくるのが(株)のうえんプランニング(内山真琴代表取締役、千葉同友会会員)が運営する「のうえんカフェ」。店内は白を基調とした内装と木材の温かみで、どこか懐かしさを感じます。テラス席はゆったりとした距離が保たれ、天気のよい日は犬を連れたお客がそれぞれの時間を楽しんでいます。そして「おいしいものをおなかいっぱい」をコンセプトに、採れたての地元野菜や卵をふんだんに使用した家庭料理が人気を博し、「2時間の行列ができる店」として多くのメディアに取り上げられました。

台風15号・コロナ禍の試練

 同店も軌道に乗り、系列店をオープンした直後に千葉台風15号(2019年)やコロナ禍の波が襲います。特にコロナ禍により、同店の特徴でもあった“行列”は敬遠され、客足が落ち込みます。「赤字がかさみましたが、条件が合わず、支援の対象になりませんでした。シングルマザーのスタッフはシフトに入れないと生活がままならないので、雇用を維持するためにたくさんチャレンジしました。今思えば、コロナの3年間はターニングポイントだったと思います」と当時を振り返ります。

のうえんカフェのチャレンジ

①経費の見直しとITの導入
 以前は「思い」を優先し、薄利多売の経営をしていましたが、原価率や経費を見直しました。同時にスタッフに現状やなぜ経費削減が必要なのかを真剣に伝えて理解を得たところ、1カ月で改善しました。また「列にならない行列」として、自動発券機による優先券を導入。朝一番に券を取りに行けば、好きな時間に来店することが可能になる仕組みをつくりました。

②店舗改装
 清潔感あふれる壁や床に至るまで、緊急事態宣言下により休業した1週間に自分たちだけで全面改装しました。DIY好きなスタッフを中心に行ったことで、スタッフ同士の距離が縮まり、接客時のコミュニケーション円滑化につながりました。またスタッフ自身も「自分たちの店」という意識が高まり、より積極的に貢献しようとする姿勢が培われました。ほかにも社用車に人工芝を貼り付けたデリバリー用「人工芝カー」もスタッフのお手製です。

③働きたい職場づくり
 おしゃれを楽しみたいスタッフも多くいることから、制服をおしゃれなオーバーオールに変更し、靴下・インナーシャツ・髪色は自由というルールに変更しました。自分たちのお店という意識を持ち、おしゃれを楽しみながらイキイキと働くスタッフの姿を見て、お客から「このお店で働きたい」との問い合わせが多くあり、同店で働くことが地元ではステータスになっていると言います。

 このように利益構造を見直し、スタッフのお店に対する参画意識を高めていったことで、売上も徐々に回復し、今年は絶好調であると内山氏は話します。

「食×農×福祉」の連携~FUN FUN FARM~

 次なる一手は「食×農×福祉」の連携です。内山氏自身、アスペルガー症候群の息子がいることから、使用していないゴルフ場を果樹園にし、ゆくゆくは息子の働く場をつくるなど、障がいを持った方の居場所づくりを進めていました。

 「居場所づくり」という漠然とした使命が形になったのが、インクルーシブファーム「FUN FUN FARM」。この施設は障がいの有無に限らずに伸び伸びと遊べる場として、デイキャンプやバーベキュー、農業体験を手軽に楽しむことができると同時に親御さんが一息つけるよう、安全性を確保した上で情報交換のコミュニティの場を目指しています。将来、遊んでいる子達が果樹園で働く姿を想像して熱くなる思いを胸に来年3月オープンに向けて準備を進めています。

「常にワクワクを探し続けること」

 挑戦し続ける秘訣を聞くと「コロナで赤字を出さなければ薄利多売のどんぶり勘定のまま、どこかで行き詰っていたと思います。頭を抱えるとの同時に自分を見直す時間とスタッフと膝を突き合わせて話し合う機会ができたのは大きな収穫でした。障がい者の居場所づくりもそうですが、自分がワクワクしてやりたいことであれば、辛くても夢中になれます。まだやりたいことがたくさんあるので、止まっていられません」。逆境でもワクワクを求めて前向きに挑戦する経営者の姿が従業員を勇気づけ、コロナを乗り越える一手になったのではないでしょうか。

会社概要

設立年 2014年
資本金 100万円
従業員数 29名
年商 18500万
事業内容 飲食業
住所 千葉県袖ヶ浦市川原井1838
電話番号 0438-75-7335
URL https://nouen-cafe.jp/