【第27回】地域課題を鍬で興し、自社の機会とする (株)フェルマ木須 代表取締役 木須 栄作氏(佐賀)

(株)フェルマ木須 代表取締役 木須 栄作氏(佐賀)

 中小企業家は「いつの時代も平時と捉えて」事業を維持、発展しなければなりません。それが、地域に役立つ、地域に貢献することではないでしょうか。

 社会問題から生じる事象は、地域課題に変容します。佐賀の地域課題の一つとして人口減が挙げられます。県外への人口流出率は96.3%(出生5,000人→60歳 185人)ともいわれています。現在置かれている地域や環境の中で、地域課題=経営問題を、経営課題や経営機会として、木須氏((株)フェルマ木須代表取締役、佐賀同友会会員)は取り組んできました。

ウチの農業は続くのか?遅れていないか?

 木須氏は、大学、そして農業法人での経験を基に最新の技術を取り入れました。県農業青年クラブでの最年少会長を経て、農業の連携や最新の情報を常に取り入れながら、農業の発展こそがこの地の課題だと気づきました。その中で生まれた感情は、佐賀の農業は日本―「経営面」で遅れていることへの焦りでした。

技術を活かすための「経営」

 テクニックや連携では埋まらないことに気づいた木須氏は、地元経営者の勧めで佐賀同友会に入会。この時27歳でした。最年少、若手農業者初の会員で会のあらゆる行事に参加しました。経営指針を作成しましたが、いざ課題解決とはならず、さらに顕在化した課題が山積みとなりました。そして、官や政策主導でない、理念に基づいた自主的な生産、販売をめざします。

 木須氏の影響で、佐賀同友会は現在38%を占めるほどの若手農業経営者が多く入会し、後に続く契機となりました。

経営指針で、みんなが飯を食えるのか?

 高齢化、地域離れにより耕作放棄地は進みます。代理で耕作を行うことで、作業量は増えていきました。人手も必要になり会社規模は大きくなります。しかし、売上は上がりますが、業績改善は思うように進みません。自身の数値マネジメントの不足を補い、利益計画、マーケティングと投資計画を見直しました。作業代行でなく、土地を購入し土地利用型の大規模農業に転換します。生産品目の市場動向も鑑みて、生産する土地面積、一次加工品や備蓄設備を導入し、市内で最大規模の農業法人となります。

自社の生成発展が、地域の永続へ。

 県内有志も集い、同様の土地利用型農業をさらに進めている木須氏。一貫したビジネスモデルで集約化を行い、作業と採算の高度化を行いました。気候や市場に左右されない安定出荷を行い、次代につながる採用も積極的に行っています。若い社員さんもドローンの操作やデジタルで圃場を管理し、女性の社員さんも農業機械を駆使し実作業も難なく行える体制で年々と規模拡大が進んでいます。

 また、莫大な費用をかけていた、圃場の土木整備や管理業務を独自で行うために、建設業の認可も取り、他社の土木業務を行うことで、農業界内の習慣を変え、地域農業の課題解決ができました。

健やかな未来に向けて

 さらに、副産物の麦わらを利用した「ふぞろいのストロー」を全国の仲間で製造し、販売しています。大手飲食チェーン店でも使われるようになりました。ヒトとモノの負荷を機会として価値を引き出し、高齢の方、ハンディキャップのある方の生きる仕事の場を作りました。全国の農業、そして多くの伊万里の農業の皆さんも関わっています。

 「なつかしいと笑ったあの日のことや、気が付けばそこにあるものをなくしてはいけないと思いました。みんながみんなのために そして未来のために」。時代や地域、ふるさとの未来のために、木須氏は問題を課題、そして機会に変え続けていきます。

会社概要

設立 中世の木須町、木須のお殿様が事業開始(法人設立2017年)
資本金 300万円
従業員 20名(パート含む)
年商 3億円
事業内容 穀類(米、麦、米、大豆)、加工品の生産販売。ストロー等の製造販売。一般建築土木業。
所在地 佐賀県伊万里市木須町4938
TEL 0955-23-7618
経営理念 食べておいしい、まわりは健やか、みんなが豊か
URL https://fermakisu.co.jp/
ふぞろいストロー
URL https://fuzoroi.rpa.or.jp/