【第29回】日本最後のもくめん屋の新たなチャレンジ (有)戸田商行 代表取締役 戸田実知子氏(高知)

(有)戸田商行 代表取締役 戸田実知子氏(高知)

 創業63年、2代目のご主人から会社を引き継いだ3代目の戸田実知子氏((有)戸田商行代表取締役、高知同友会会員)。日本最後のもくめん屋を守りながら、新たなチャレンジを始めました。

エッセンシャルオイルの製造へ

 エッセンシャルオイル事業に取り組むことになったのは、木毛(もくめん、丸太を裁断して作られる糸状の製品)の商品開発の延長線上で、高知県でエッセンシャルオイルの製造をしている会社に販売していたところ、その製造現場を見に行った時に疑問を覚えたことがきっかけでした。木毛は材料選びから管理しながら作り、お客さまに送り出すという商品自体に自分たちの責任が入っていますが、そこのオイルを製造せず、販売だけをするということに製造責任が持てるのか、という疑問でした。

 元々オイルに関しては自分の手で作りたいという思いがあった戸田氏。そんな戸田氏の元に、2020年、オイルを販売する会社から、木毛を自分たちの商品の緩衝材として使いたいという連絡がありました。その時に、「御社はどういう理念で木毛を作っていますか」という、今までのお客さまからはなかったアプローチをされ、その担当マネージャーに戸田氏が会社を引き継いでからの木毛に対する思いなどをプレゼンテーションすること1時間、「御社の木毛を使います」と返事をもらいました。

 その後、日本で1番エッセンシャルオイルを販売するアメリカ企業の日本法人を知ります。その企業では、メンバーさん(100人規模)を連れて、全国にトリップを開催しており、その中で戸田商行へ行きたいとの話があがり、木毛の工場見学ののち、購入が始まりました。その後、日本法人の社長や役員、スタッフの皆さんも来られるようになり、交流が始まって2~3回くらいトリップを受け入れた時、出会って1年も経っていないころに、「戸田さんオイル作ってみませんか?」との提案がありました。

地元への恩返し

 その企業は、世界中からオイルを仕入れ、それをアメリカで製品にして、日本法人はそれを仕入れて販売します。日本の中で製造から販売までしたいという希望があったそうですが、日本の中でその企業とパートナーシップを結んでいる製造拠点がなく、探していた中で戸田商行に出逢ったというわけです。

 戸田氏は「相手は巨大企業だけど、地元のものを買って、作って、それが売れたらビジネスチャンスにもなる。社員にとってもまた違うもので、反応が広がるという希望を持ってもらえるだろうし、ぜひチャレンジしたい」と思ったそうです。

 自分なりのオイル事業に関する目標・目的を書いたプレゼンシートを作り、将来的にはこの地域をオイルの蒸留拠点とし、蒸留施設を見学してもらい、レストランやハーブガーデンもある、そういう施設を将来的に作りたいという中で、オイル販売を行う企業にお声がけいただいたことに答えるという形になりました。その後、補助金(コロナ事業再構築)もタイミングよく申請できたことで、「こういうビジネスでトライしよう」と動き出しました。

 現在、木毛に使用する杉とヒノキのオイルを作っていますが、持ち込みで試験的に希望のオイルを作ることも可能です。それというのも、蒸留器がものすごく大きいわけではないので、できることだとか。現在は、土佐市の名産である文旦のオイルづくりの真っ最中です。高知大学のインターンシップ生も皮むきなどに参加しており、「TOSA MOKUMEN LABO」の「TOSA」には、戸田さんの地域への愛が込められています。

 「土佐市のこの地で創業以来お世話になっている地元への恩返し。この地のものを使い、この地のものを知ってもらいたい。そのための拠点にしたい」。目をキラキラと輝かせ、夢を語る戸田氏のチャレンジはまだまだ続くことでしょう。

会社概要

創業 昭和36(1961)年
TEL 088-855-0426
FAX 088-855-1278
資本金 500万円
従業員数 9人(うち正社員7人、役員2人)
主要商品 高級もくめん・緩衝材・梱包資材
URL https://www.toda-shoko.com/