【第32回】三つの課題から生まれる新しいビジネスモデル (株)マスナガ 代表取締役 森 弘国氏(熊本)

(株)マスナガ 代表取締役 森 弘国氏(熊本)

 創業74年を迎える(株)マスナガ(森弘国代表取締役、熊本同友会会員)は、戦後復興とともに工具や建築資材を多く取り扱ってきました。1969年ごろからは半導体に関連する商品を取り扱いはじめ、現在では鉄道や自動車関係などのさまざまな業界と関わりをもち、販売以外にも幅広くお客様の要望に応えています。

 同友会には先に父である会長が入会しており、森氏自身は2007年に入会しました。事業承継の時期から青年経営者部会で活発に活動し、2017年から2018年は青年経営者部会長を務めました。

現場から感じる三つの課題

 森氏は、お客様にNOは言わない、というスタイルで困りごとを一緒に考えるようにしています。すると次第に、ネジや工具類の注文に加えて作業を自動化したいという要望が多くなり、いろいろなメーカーの部品を組み合わせてお客様に納品する仕事が増えてきました。そのような仕事をしていく中で三つの課題を感じます。

 まず一つ目の課題は、労働人口の減少により自動化が進むことと設計するエンジニアの不足です。いろいろな産業で人口減少に伴う自動化やロボティクスの需要が多くなり、仕事の依頼も多くなっています。機械を組み立てるにあたって、設計するエンジニアが不足していると実感しています。

 そして二つ目の課題は、メーカー同士での交流がないことです。(株)マスナガで取り扱っている要素技術()は専門性が高く、ほかのメーカーと交流する機会が少ないため新しい技術が生まれにくいと言います。

 最後に三つ目の課題は、どのような仕事をしているかが分かりづらく、興味を持つ人が少ないことで採用活動が難しいことです。また、熊本での特徴的なことで世界的大手の半導体メーカーTSMCの進出により、さらに採用が難しくなると予想しています。

 この三つの課題を解決するために、森氏は新たな挑戦を試みています。

※要素技術:製品を構成する要素に関する技術。製品の開発に必要な基本技術。製品の根幹をなす技術。

新しいビジネスモデルに向けて

 三つの課題解決のために、従来の店頭販売を自動化し24時間いつでも購入できる店舗と、エンジニアやメーカーが交流できるハブ施設を併設した新社屋を建設しています。ハブ施設には、最新の3Dプリンターや加工機械などを導入し、自由に利用できるようになります。エンジニアは趣味で工作や設計をするそうで、そこに対して新しいアイデアや新技術を生み出す場を提供し、交流が持たれることを期待しています。また、その施設を利用してメーカーの商談会や新技術の発表会を開催することでメーカー同士の交流の場をつくることも想像しています。「最新の機械を導入しているため工業系の高校、大学と連携して人材育成にもつなげていきたい」と森氏は話します。

 これまでのように仕事があって集まるのではなく、エンジニアやメーカーが自由に交流できる場をつくるなどして新しいイノベーションを起こしていく森氏の今後の活躍に注目です。

会社概要

設立年 昭和50年(1975年)8月
資本金 1,200万円
従業員数 21名(正社社員19名、パート2名)
年商 6億円
事業内容 半導体関連機器、産業機器、物流管理機器その他機械部品の販売
住所 〒860-0834 熊本市南区江越2丁目7-8
電話 096-370-5000
URL https://msng.jp/