【第38回】行政と連携して地域の健康を守る (株)丸大 取締役部長 植田 奈利子氏(沖縄)

(株)丸大 取締役部長 植田 奈利子氏(沖縄)

 (株)丸大(植田奈利子取締役部長、沖縄同友会会員)は、沖縄本島中南部を中心に10店舗を展開しており、「丸大(まるだい)」と大きく書かれた赤い看板が目印です。今年で創業76年と、県内では老舗のスーパーマーケットです。

 植田奈利子氏は、創業者のお孫さんで現在取締役部長。経営陣の一人として、管理部門の統括と販売促進を担っています。

コロナを経て変化した社員教育

 コロナ禍で県外へ出張が難しい間、社内では会議をはじめ(株)丸大が所属をしている『CGCグループ』の研修のリモート参加も増え、現在もなお主流になっています。その理由に、今まで集合研修だと様子をただ見ていることしかできなかったのが、現在は部署ごとに集まり、慣れている管理者がオブザーバー参加して、社員の理解度の確認や声掛けでフォローができる環境が整ったと話します。

 また、通常の集団でのリモート研修に加え、個人で受講できるオンデマンド研修を導入。これまで1日拘束して行っていた研修を、30分の動画を6コマ配信し、受講者がいつでも視聴できる環境を実現しました。

コロナ禍で『スマートミール弁当』誕生の秘話            販売継続が厳しくなるも、お弁当部門優秀賞を受賞

 コロナが流行した2020年1月、植田氏はお客様が健康に敏感になったと感じ、翌月の2月から免疫を高める食品の案内ポップを設置。感染対策ももちろん大事ですが、自己免疫力を高めてもらうためにお客様自身が口にするものにも注意を向けてもらうような取り組みを行いました。この取り組みは社内外に理解を促すことができ、健康意識の高まりにつながりました。この好循環の中誕生した新商品が『スマートミール弁当』です。

 当初売れない日々が続き、廃棄や値下げでロス率が高く、販売継続自体も厳しくなっていました。しかし、担当するバイヤーも健康に関する沖縄の現状に危機意識をもっており、どうにか製造数を調整し続け販売から1年後、東京で毎年開催される『スーパーマーケットトレードショー』に出店。全国から集まった数万食のお弁当の中から『沖縄煮つけ弁当』がお弁当部門優秀賞を受賞しました。その後テレビや新聞の取材により一気に認知度を高め人気商品へ。それから売り上げも順調に推移し、コロナ禍でよりお客さまの健康に対する意識が手助けをしてくれました。

南風原町と連携し、地域の健康改善から必要とされるスーパーマーケットに

 スマートミールの認証は、外食・中食・事業所給食で「スマートミール」を継続的に、健康的な空間で提供している店舗や事業所を認証する制度です。生産性を重視するスーパーマーケットでは難しく、全国的に事例があまりないと言います。今回実現できたのも、「スマートミール」を紹介してくれた南風原町役場との連携があってこそでした。南風原町の管理栄養士の助言のもと、丸大のバイヤーと開発責任者が商品開発を行い、「健康的な食事=味が薄い/値段が高い」というイメージを払拭するような味と値段でスマートミール弁当を提供することができるようになりました。

 特定健診後に課題のある受診者や妊婦さん、高齢者に南風原町役場の栄養士からスマートミール弁当を紹介するなど、健康的な食事を必要としている人たちにも情報が届き、認知度も少しずつ上がってきました。実際に、受診者の数値が好転した割合が7割にもなり、さらに改善した受診者には、南風原町からスマートミール弁当の一つである沖縄煮つけ弁当のチケットを配布するなど密接な連携ができています。受診者の健康も改善傾向にあり、チケットで沖縄煮つけ弁当を食べた方や他のスマートミール弁当を購入された方からは、何を、どの程度の量を食べたらいいのかの目安が分かるなどの声が届いたそうです。

 この取り組みは全国的にも珍しく、民間と行政が手を携え、県民の健康数値を一緒に高めていくものです。㈱丸大はこの南風原モデルを構築し、全国的にも広げていくことをめざしています。

(株)丸大
設立年 創業昭和23年
資本金 3000万
従業員数 626名(正社員、パートナー・アルバイト含む)
年商 86億
事業内容 小売(一般食料品、日用雑貨および家庭用品の販売)
住所 901-1104 沖縄県南風原町宮平251
電話番号 098-889-3465
URL https://www.okinawa-marudai.co.jp