
(株)ワンウィル 会長 山本倍章氏(神奈川)
独立から苦境に立たされて
岡山生まれの山本倍章氏(㈱ワンウィル会長、神奈川同友会会員)の企業家人生は大学生起業家としてスタートしましたが、大学卒業と同時にその権利を小売店に売り渡し、両親に借金を全額返済した後、就職することに。東証一部上場の繊維商社に入社しましたが、28歳で独立宣言し、30歳の時に建築シートの輸出を行う㈱ワンウィルを創業しました。
独立したものの何の目算もなく、販路がないためうまくいくはずもなく資本金はみるみる減少。その苦境を救ってくれたのは商社時代のかつての取引先でした。
困っていることを商売に
創業当初、輸出が主体だった業務は、1985年のプラザ合意を待たずに輸入に舵を切りました。円高を見越し、輸出が不利になっていくと踏んだからです。しかし輸出と異なり、輸入には資金力が必要となるため、一計を案じてコンテナごと購入してくれる顧客を開拓しました。契約書をしっかりと交わしていれば、銀行が融資に応じてくれるからです。
最初は、ブルーシートを韓国や中国から輸入しました。ブルーシートを日本で最初に輸入したのは、実は同社だったといいます。しかしブルーシートは付加価値が低く、フレコンバッグ(ポリエチレン等の化学繊維でできた大きな袋)に切り替えました。
そしてフレコンバックのリサイクル事業にも着手し、使用済みのものを有価で買い戻し、中古として安価で販売しています。損傷の激しいものは、再生原料として再利用もしています。
顧客は、産廃業者に処分費を払ったり、煩雑な書類を作成したりする手間が省けるため喜ばれています。また焼却もしないため地球環境にも優しいのです。「商売は、相手が困っていることをしてあげることが大切なのです」と山本氏は語ります。
住宅事業の失敗
会社は着実な成長を遂げていきましたが、大きな失敗もありました。
住宅事業に参入し、当時人気があった輸入住宅を手がけ、5年間で230棟を建設していました。しかし無垢材での建設は見積りの2倍以上の工期がかかってしまい、売り上げはどんどん伸びていきましたが、1棟建てるごとに赤字が出てしまっていたのです。材料の保管料も重荷となり、途中でやめたくても、資金繰りを考えるとなかなかやめられず、会社の立て直しが急務となりました。
珪藻土壁材の開発

会社の立て直しと並行して始めていたのが、珪藻土の壁材の開発でした。
開発した珪藻土の商品は、業務用の粉末漆喰珪藻土、すでにペースト状にした漆喰珪藻土左官材、壁紙の上からも塗れる珪藻土塗料、珪藻土の壁紙などがあります。
アレルギーや健康を気遣う人が増えている現代では、需要は年々高まっていますが、一部業務用を除き塗料は小売店での販売はせず、もっぱらネット直販のため知る人ぞ知る商品になっています。また珪藻土の塗料はアメリカのホテルで採用されるなど、海外からの注目度は高まっています。
遠赤外線の活用
さらに、昨年から会長職になった山本氏は、ワンウィルホールディングスを立ち上げ、新商品である遠赤外線輻射熱暖房システム(サンウォーム)を開発しました。本商品は、日本古来の和紙にカーボンをすき込んだカーボン和紙ヒーターと多孔質セラミック壁・天井材の組み合わせから誕生。太陽からの贈り物でもある遠赤外線を活用し、冬はエアコン暖房不要、夏は小さな冷房で、省エネの快適健康空間を実現できるものです。
今年から、オーガニックコットンブランドのパイオニアで知られる「天衣無縫」を取り扱う㈱新藤(神奈川同友会会員)の代表取締役会長にも就任した山本氏は、天衣無縫コンセプトショップを全面リニューアルしました。ここで前述の珪藻土壁材やサンウォームを導入し、体験できる空間を提供して注目を集めています。

社会の一隅を照らす仕事
山本氏のチャレンジ精神は留まることを知りませんが、「健康と環境に配慮したビジネスを展開したい」という熱い思いから、数々の付加価値が高い商品やサービスを創出しています。「社会の役に立つことをしないと企業は生き残っていけません。社会の一隅を照らす仕事をしていくことが大切なのです」と語る山本氏のさらなる飛躍する姿が想像に難くありません。
(株)ワンウィル | |
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設立 | 1983年 |
資本金 | 4,900万円 |
社員数 | 50名 |
年商 | 15億3,000万円 |
事業内容 | 環境資材事業、リサイクル事業、エコ健康建材事業 |
URL | https://www.onewill.co.jp |
(株)新藤 | |
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設立 | 1962年 |
資本金 | 6,000万円 |
事業内容 | オーガニックコットン・リネン・ウール等を原料としたタオル・肌着・寝具・ソックス・ベビーウェア等の企画・製造販売。各種ブランドのOEM生産等。 |
URL | https://tenimuhou.jp |