【第15回】誰もが安心して働ける社会へ MAZAQ(株) 代表取締役 小竹 康裕氏(新潟)

MAZAQ(株) 代表取締役 小竹 康裕氏(新潟)

 MAZAQ(株)(小竹康裕代表取締役、新潟同友会会員)は、就労継続支援A型・B型事業所と地域活動支援センターⅢ型を運営しています。アクセサリーのインターネット販売を行っていた小竹氏が、MAZAQ(株)を立ち上げた背景には、家族と社会環境が大きく関わっていました。

起業とターニングポイント

 2002年、携帯電話を使ったインターネット物販事業をベースに(株)Juraiceを創業。「今後IT業界は絶対に伸びてくる」という自信があり大手ネットショッピングモールに店舗として参入しました。妻と共に始めた事業でしたが、売上が増える中でパートを採用。大手IT企業に憧れていた小竹氏は、給料は真似できなくても、それ以外は取り入れようととにかく働きやすい環境を大切にし、ライフステージに合わせた働き方ができる仕組みを整えました。

 事業は拡大していましたが、2015年、突然主力の店舗が運営元から閉店に追い込まれました。ネット販売のリスクでしたが、「まさか自分が」という思いだったそうです。未入金の売上も回収できず、多額の借入の返済期限も迫っていました。絶望の中、社員に謝罪しながら事情を説明し、残った店舗の売上では雇用を継続できず、全社員を解雇することとなりました。

 「社員の人生を狂わせてしまった。返済はどうすれば」パニックに陥っていた小竹氏を励ましてくれたのは、共同代表である妻の「大丈夫、大したことはない」という言葉でした。

「向き合うべきこと」MAZAQのスタート

 小竹氏の第2子の長女は先天的な難病がありました。14歳まで生きられるかどうかと診断され、症状が出ると入院となってしまう状態でした。「向き合わなければいけない絶望と比べたら、今の状態は大したことはない」そう思い、できることを一つ一つやっていきました。結果として、完全ではないものの終息し、未入金の売り上げも回収でき、1つの危機は去りました。蓄積されたノウハウのおかげで、再び事業を進めていくことを決意し、トラブルから3か月後、一方的な解雇となった社員全員に「勝手だとは思うが戻ってきてほしい」と連絡。5名中3名が復帰してくれ、「本当にうれしかった」と小竹氏は話します。

 同じ轍を踏むことがあってはいけないと、事業転換についても考え始め、2022年にスタートしたのがMAZAQ(株)でした。

生活を守り、暮らしを守り、社会を変える

 娘が大きくなるにつれ、「長生きしてくれた時にどんな人生になるのだろう」と、障害・難病を抱える子どもたちの将来を考えるようになります。また、障害のある子どもを持つ保護者とつながる機会も増え、福祉事業所や、障害者雇用に対する不安も耳にすることが増えたそうです。福祉事業について調べていくと、「自分の娘を預ける」ことに確かに不安を感じました。それならば、「娘に寄り添いながら事業ができないか?」、「自分たちのノウハウを生かせるのではないか?」と考えるようになり、就労継続支援A型・B型事業所を立ち上げ、地域活動支援センターの運営も市に申請し、利用者が自身のステージに合わせ環境を変えずに働き続けられる事業所にしました。

 「社員はMAZAQに移行しても仕事内容はほとんど変わらず、社会貢献や福祉事業のやりがいについても話をしてくれて、とても感謝している。娘が小さいころから顔を出していたこともあり、事情を知ってくれていることも大きい」と小竹氏は話します。高校2年生になった彼女の夢がパン屋さんだったことから、ベーカリー部門もスタートしました。

 小竹氏が大切にしているのは、とにかく事業としての成果を上げていくこと。強固な経営で、家族・社員の生活を守りながら、MAZAQのめざす「障害者が諦めなくていい社会の実現」へ一つ一つ取り組み続けます。

 自社の活躍を拡大することで、同じ志を持つ企業が増えてくれることを、小竹氏は願っています。

MAZAQ(株)
創業 2022年
従業員数 12名
事業内容 障害者就労支援A型・B型事業所
住所 柏崎市松波2丁目3-29(施設名GRANBASE)、ベーカリー部門:(HARD BREAD GRAN)柏崎市新田畑2−2
URL https://www.mazaq.jp/