【第6回】技術の先にある「人」と向き合う (株)アサハン 代表取締役 岡村 耕平氏(鹿児島)

(株)アサハン 代表取締役 岡村 耕平氏(鹿児島)

 鹿児島市北部の高台、吉野町に社屋を構える(株)アサハン(岡村耕平代表取締役、鹿児島同友会会員)は、公共事業以外の民間工事が9割以上を占める測量・設計・開発の会社で、岡村耕平氏は創業者である父・豊治氏から2023年に事業を承継しました。

 測量の現場は危険を伴う場所も多く、かつては「3K」と呼ばれ、業界としても人手不足や後継者不足という大きな課題を抱えていました。そうした状況を変えようと、アサハンはICT施工やドローンによる測量など、省力化・無人化に向けた技術革新に積極的に取り組んできました。

 しかし、岡村氏が事業承継後に向き合ったのは、機械や技術だけでは解決できない「人」の問題でした。

採用活動を通して生じた変化

 以前の岡村氏は、「人が多い会社が強い」という考えを持っており、門戸を広げ、適性を十分に見極めないまま採用しては、入社後にミスマッチが生じて、早期離職へつながる。そんな苦い経験を重ねるうちに、岡村氏の採用に対する考え方が変わっていきました。

 採用は、その人自身をしっかり見る。入社後、仕事で壁にぶつかったときには、社員だけに解決を求めるのではなく、「会社として何ができるのか」を考える。こうした採用方針の転換のほかにも、積極的に新しいソフトウェアを導入し、社員が働きやすい環境づくりを整えるなどの取り組みを行った結果、社員の定着率が向上し、人手不足が課題とされる業界にあって、今では若手からベテランまで(20歳~55歳まで、平均年齢約40歳)幅広い世代の人が働く会社へと変化していきました。

経営指針を軸に社員と会社を育てる

 岡村氏の経営を支えているものの一つが、同友会の経営指針セミナーで作成した「経営指針書」です。指針に沿って毎年1名以上の採用を続けるとともに、社員との面談を年2回実施。日頃から社員とのコミュニケーションを意識し、社員が自分の考えを話しやすい職場環境づくりに取り組んでいます。

 また、岡村氏が大切にしているのは、「自分が会社の中で一番低い位置にいる」という姿勢です。社長が上から答えを示すのではなく、社員一人一人の声を引き出し、現場から意見が上がってくるボトムアップ型の会社をめざしています。技術を進化させるだけでは人手不足や後継者不足といった業界の課題は解決できません。だからこそ、アサハンでは、技術を使う「人」を育て、働きやすい環境づくりにも力を注いでいます。

学びを会社へ持ち帰る

 岡村氏は、同友会の例会に積極的に参加しています。それは、岡村氏が、同友会活動と自社経営の「不離一体」が自分には難しいと感じているからです。そうであるからこそ、例会という学びの場に参加し、経営者として学び続けようとしています。

 何より大事にしているのは、学んだことを自身の「学び」で終わらせないこと。例会に参加した翌朝には、必ず社員にその内容を報告します。社員からは次々に質問が飛んできて、「正直、例会のグループ討論より厳しい」と岡村氏は笑います。経営者が同友会で学んできたことを社員に伝え、学びを共有する。その繰り返しの中で、自社では「できない」と思っていたことが、いつの間にか社内で実践できている「学びの好循環」が生まれていると言います。

地域に根差す測量会社をめざして

 地域に根を張り、地元の企業や人々の暮らしを支える測量という仕事。その現場を担う人材を育て、業界のイメージを変え、技術の進化に挑み続けるアサハンは、2年後の2028年には創業50周年を迎えます。

 先代から受け継いだ会社を次の世代へと引き継ぐため、人と技術の両面に磨きをかけ続ける岡村氏の挑戦は、これからも続きます。

(株)アサハン
設立 1978年
資本金 1,000万円
従業員数 10名(うちパート1名)
年商 1億3,000万円
事業内容 調査・測量・設計・開発
住所 鹿児島県鹿児島市吉野町2039-1
電話番号 099-243-9827
URL https://asahan.jp/