【第2回】「運ぶ」仕事から未来を「支える」仕事へ 大栄運輸(株) 代表取締役社長 山根 翔也氏(広島)

大栄運輸(株) 代表取締役社長 山根 翔也氏(広島)

 大栄運輸(株)(山根翔也代表取締役社長、広島同友会会員)は、広島県東広島市を中心に運送業を行う会社です。「平ボディ」と呼ばれる屋根のないトラックで鋼材や建材、輸出関係の貨物を北海道から沖縄まで全国各地に届けています。

 同社は山根氏の祖父が創業し、山根氏は2015年に入社。2024年には3代目として代表へ就任しました。

トップダウンから人を生かす経営へ

 2015年の入社当時、社内は怒号が飛び交うトップダウン経営による「ボス支配」の状態でした。誰も何も教えてくれず、お客さんに直接聞いて仕事を覚えるような異例すぎる環境。会議でもみんな下を向いて発言なし。結果だけを求められる中で、社員の主体性は奪われ、山根氏自身も笑顔がなくなっていました。

 2016年に経営について学ぶことができることに魅力を感じ、同友会へ入会。取引先が2社で売上の90%を占めていた状態から、3,000社まで分散させるなど、例会で学んだ考え方を実践し、8年間で売上を12億円伸ばしました。しかし、会社の中では「俺のやり方が正しい」と部下にトップダウンで押し付け、対立ばかりが起きていました。

 全国行事へ参加をすることで「労使関係の見解・人を生かす経営」について議論を深める場面が多くなったことをきっかけに、書籍を読み込むようになりました。労使見解から「自分と向き合うこと」と、「相手と向き合うこと」と、「互いに認め合い尊重できているか」を問われていると感じました。

そこでマズローの欲求五段階説と重ね合わせ、

1. 生理的欲求=生活できる給与(毎年3%以上の昇給)
2. 安全の欲求=安心して働ける制度・ルールの整備
3. 社会的欲求=仲間意識・家族的一体感
4. 承認欲求=評価・感謝の文化
5. 自己実現の欲求=成長支援・権限委譲

を順に満たし、好循環を作ることが「強靭な経営体質」につながると解釈しました。社員をコストではなく「かけがえのないパートナー」として捉えることが、労使見解の本質だと気づきました。

保育を起点に、福祉と就労へ

 山根氏は大栄運輸(株)の他に、グループ会社である(株)アビリティでも経営に携わっています。アビリティは、人材派遣事業を中心に企業主導型保育園、放課後等デイサービス、就労継続支援B型事業所等を運営しています。

 もともとは、運送業で働ける人を増やすために初めた人材派遣会社がスタートでした。ですが、単身世帯が増え、働きたくても「子どもを預けられず働けない」人がいる現実を目の当たりにしたことで、保育事業・放課後等デイサービスを立ち上げ、生活の土台から支える仕組みづくりに踏み出しました。

 就労継続支援B型事業所では、主に「めだかの育成・販売」を通して、生き物と関わりながら活動できる点が特徴です。育成・管理などの作業から、無理のないペースで「働く感覚」を取り戻し、自信や意欲につながる経験を重ねています。山根氏は、「支援を“点”で終わらせず、将来的にはグループホームまで含めて『人生を一貫して支える』ことをめざし、関わる人を幸せにしていきたい」とビジョンを語ります。

 また、2026年6月には新たに児童発達支援事業所を開設しました。この事業は離職を考えていた若手社員の「児童発達支援の仕事をしたい」という思いを受け入れ、実現したものです。社員の「やりたい」を権限移譲によって支え、同友会の仲間の協力も得ながら、地域に必要とされる新たな居場所を作り上げました。

運び、支え、地域の未来をつくる

 「物流を守ることも、働く・育つ・暮らしを支えることも、地域の基盤を整える仕事。今後はグループ全体で売上30億円をめざしながら、関わる人が幸せになるために事業を展開していきたい」と語る山根氏。事業の枠を超えて社員とともに地域の未来を支えていく強い思いがアクセルとなり山根氏を動かしています。

大栄運輸(株)
設 立 1969年6月1日
資本金 1,000万円
業務内容 一般貨物の輸送、大型重量物、特殊品の輸送など
社員数 49名(うちパート9名)
所在地 広島県東広島市黒瀬町宗近柳国431-2
URL http://daieiunyu.co.jp/