【第32回】下請け脱却をめざす2代目の挑戦~思いをつないでカタチに~ (有)スワコーポレーション 代表取締役 諏訪康彦氏(群馬)

(有)スワコーポレーション 代表取締役 諏訪 康彦氏(群馬)

 (有)スワコーポレーション(諏訪康彦代表取締役、群馬同友会会員)は、1988年に養蚕場を改築した建屋で、現会長が座椅子の組立てをメインに創業しました。現在はウレタン加工を軸に、OEM製品事業、端材を利用し地域と連携するアップサイクル事業、素材の特徴を生かした体操教室事業(マット・跳び箱などの製作)まで行っています。

他人事から自分事へ、経営姿勢の変化

 諏訪氏は大学卒業後、小・中学校の臨時教員として3年間勤務した後、取引先企業でのウレタン加工の修行を経て、スワコーポレーションへと入社。しかし、会社に貢献したい気持ちとは裏腹に取引先の海外進出で受注は減少し、修行の成果を発揮できずにいました。また、売上が落ち込む様子を他人事として捉え、父に言われるがまま午前中はアルバイト、午後から出社するという時期を過ごしました。

 そんな中、取引先の社長に誘われて同友会の例会に参加し、経験豊富な先輩経営者に自社の現状を相談すると「仕事は一貫して待ちの姿勢、客先に言われるがままの単価設定。諏訪さん、それってドMだよね」という衝撃の一言を浴びせられます。初めて問題意識を持つことができ、経営が他人事から自分事に切り替わった瞬間でした。

 以降はアルバイトを辞め、自分にできることを探して実行に移します。ホームページの開設、体操教室への飛び込み営業やDM、新しい設備の導入など、これまでやったことのない分野へも挑戦しました。その結果、思いもよらない業種からの問い合わせや新規の取引などもあり、継続的な売上につながっていきました。

事業承継から始まったメーカーへの道

 ある時、デスクの上に置かれた群馬同友会の機関紙。赤いラインが引かれていたのは「事業承継」をテーマにした例会記事でした。父からの無言のメッセージを受け取り、具体的な承継準備に取り組んだ翌年(2023年)代表取締役に就任します。事業承継の当日、退任のあいさつで「やり残したことはあるが、後継者に恵まれ、悔いはない」という父であり創業者の思いがけない言葉に涙が止まらず、予定していた就任のあいさつは言葉になりませんでした。

 事業承継のきっかけになった機関紙に書かれていたのは「せっかく社長になったのだから好きなことをさせてもらう。自分を信じてやりたいことをやり続けることが大事」という報告者の言葉でした。その言葉に後押しされ、ずっと考えていた下請けからの脱却、メーカーになるための行動を開始します。

同友会のつながりを生かしたモノづくり

 群馬同友会会員の親戚でもあり、仲間の会社の健康サポートを担当していたつながりから、理学療法士の㈱LocoX・丸谷康平氏(埼玉同友会会員)に監修を依頼し、座った状態で姿勢の矯正サポートをするクッションの開発に着手します。硬さの違うウレタンの組み合わせ、座った際の骨盤の角度や筋肉の動きなど、お互いの専門家知識をベースにした意見交換が、そのまま商品の裏付けとなりました。その後、クラウドファンディングで支援を募り、目標金額を達成したことで、ようやく販売にこぎつけます。今では「すわりんショップ」を開設し、ネット販売もスタートしています。

 現在はクッションタイプのみですが、長時間の運転で姿勢が固まりがちなドライバーや介護施設向けの商品も開発中で「自社の商品を“本当に必要な方”に届けたい」と、諏訪氏はメーカーとしての思いを熱く語ります。また、そうした思いに応えるように、さまざまな意見や提案、知人への紹介など、社員も前向きな協力体制でバックアップしています。

思いをつないでカタチに

 廃棄する端材を活用し、新たな価値を生み出すアップサイクル事業について「まだ事業の柱には程遠いですが、地域に根差す中小企業として、SDGsで地域社会に貢献していきたい」と語る諏訪氏。また、群馬同友会が協力する「大学での出前授業」「高校生インターンシップ受入」を通して、地域の若者を育てる活動にも積極的に関わっています。

 創業者(父)の思い、メーカーとしての思い、そして、地域の未来づくりへの思い。たくさんの思いを胸に、諏訪氏はさらなる飛躍を誓います。

(有)スワコーポレーション
創業 1988年(設立は平成7年)
従業員数 16名(パート含む)
事業内容 ウレタンカット、ソファ・ベッド
住所 群馬県伊勢崎市国定町2-1992-4
電話 0270-62-1214
URL https://suwa-corporation.com/
すわりんショップ
URL https://suwarin.theshop.jp/