【第1回】社員とともに地域の産業を守る (有)岩橋シートワーク 代表取締役 岩橋 昭宏氏(和歌山)

(有)岩橋シートワーク 代表取締役 岩橋 昭宏氏(和歌山)

苦難の幕開けと家業への飛び込み

 岩橋氏((有)岩橋シートワーク代表取締役、和歌山同友会会員)は大学卒業後、大阪の建設会社に入社。しかし時代は2008年のリーマンショック真っ只中で、景気後退により仕事は激減し、現場では職人同士が仕事を奪い合う凄惨な状況に直面します。精神的に疲弊した岩橋氏は退職を決意。2009年、義父が経営する(有)岩橋シートワークに自ら飛び込む形で入社しましたが、同社もまたリーマンショックの打撃を色濃く受けていました。

停滞と葛藤の時代──「明日から来なくていい」からの覚悟

 入社後3年間は「一社員」の感覚を脱せずにいました。大きな転機は会社の忘年会での一幕でした。社長から公然と「明日から来なくていい」と言い渡されたのです。失意の帰宅後、見かねた妻が直接社長へ掛け合ってくれたのですが、その姿を見て、強い情けなさと、「このままではいけない」という強烈な反省が走りました。朝礼の導入や工場のレイアウト変更に着手したものの、古参社員からは「なぜ変えるのか」と強い反発を受け、社長からも「いらんことするな」と釘を刺され、「何を提案しても反対される四面楚歌の中、孤独な戦いを余儀なくされた」と岩橋氏は振り返ります。

覚悟の設備投資とコロナ禍直撃の危機

 特定の主要顧客への依存リスクから脱却するため、岩橋氏は自ら量産品を担当しながら新規顧客を開拓していきます。また2019年には働き方改革として36協定を導入。社員から激しい反発が起こりますが、年収が下がらないよう綿密なシミュレーションを重ねました。

 同時期、高額の最新鋭レーザー加工機を導入できる好機が到来し、将来の危機を予感していた岩橋氏は、会社の未来を賭けて社長を粘り強く説得し購入を断行。しかしこの巨額投資により一時的に減価償却費が膨らみ、債務超過へと陥りました。

絶体絶命の危機から劇的なV字回復へ 経営理念の確立

 絶体絶命と思われたこの投資が、同社の運命を大きく変えることになりました。機械が納入された2020年5月、コロナ禍が社会を直撃。しかし、この最新機の高い生産性によって、当時需要が爆発していたアクリルパーテーションの大量受注を確立、危機を回避でできたのです。また資金繰りが緊迫するなかでも諦めず、財務諸表への理解を深めて金融機関へ事業の将来性を訴え続け、融資を取り付けることに成功。経営体質を根本から見直した結果、売上は倍増し、巨額の減価償却費を計上しながら利益を出す劇的なV字回復を果たしました。

「他責」からの脱却と、地域に根差す理念

 この渦中で新たに雇用した3名の若手社員の存在が、岩橋氏の視座をさらに一段引き上げました。それまでの「岩橋家と自分を守る」という視点は、「社員を守る」、そして「この地域に産業を残す」という経営理念へと昇華していきました

 その背景には、同友会の存在があり、先輩経営者からの学びや「人を生かす経営(労使見解)」を定期的に読み返すことで自戒を促しました。また青年部を通じて他府県の同世代経営者が外部環境を言い訳にせず成果を出す姿に触れ、「環境や他人のせいにしていた自分」と完全に決別しました。

社長就任と未来への展望

 かつて60%ほどあった特定顧客への売上依存度は15%まで縮小し、価格競争に巻き込まれない強い経営スタイルを確立。この8月に社長に就任した岩橋氏はさらなる設備投資を見据え、より一層利益を意識した経営を推進しています。「和歌山県内での消耗戦に終始するのではなく、県外から積極的に仕事を獲得することで地域経済に貢献し、『地域の産業を守る』という理念を具現化していきたい」と熱く語ります。BtoBであっても認知度向上と発信が不可欠な時代と捉え、岩橋氏は、社員とともに地域の産業を守る確固たる未来を描き続けています。

(有)岩橋シートワーク
設立 1993年
資本金 1,000万円
従業員数 13名
年商 2億3,000万円
事業内容 精密板金加工業(板状の金属を切断、曲げ、溶接を行い図面で指示された物を製作する)
住所 和歌山県和歌山市内原677
電話番号 073-447-1577
URL https://iwahashiseatwork.com/