
(株)ワカクサ 代表取締役社長 安本 昌広(奈良)
他責だった自分
奈良県葛城市でプラスチックに関わるものづくりを営む(株)ワカクサ。安本氏(代表取締役社長、奈良同友会会員)は大学卒業後に入社し、28歳から経営に携わってきました。上からものを言い、従わない社員は次々に切り捨てていきましたが、労働市場が売り手優位に変わり、現社員に残ってもらわなければ会社が回らなくなっていきます。仕方なく社員に「意見を聞く」と伝えると、不満が一気に噴き出しました。社員の声を受け止めながらも、本心から寄り添わない戦略的な対応だったため、会社は混乱しました。
転機となったのは、2016年の石川青全交でした。分科会座長をしたことをきっかけに、安本氏は「自分を変えよう」と覚悟を決めます。「今は無理でもこんな会社をつくっていきたい、自分ともう一度やり直してくれる仲間はいませんか?」と社内で頭を下げました。そして、残った3人の社員と再スタートします。
トップダウンから合意形成への転換

安本氏はこれまでの姿勢を改め、社員の意見を傾聴するようにしました。年齢、価値観、育ってきた環境の違う社員にとって「当たり前」は異なります。そこで、社内で問題が起きるたびに話し合い、言葉の意味、会社での正しい考え方、行動を明確にしていきました。その過程で「ワカクサ人シート」という組織基準もできていきます。
意思決定についても合意形成を重視するようになりました。反対意見があっても、全員が受け入れられる落としどころを探し、合意できない案件は決められる状態になるまで進めないことにしています。社内で発言できるルールや風土が醸成され、議論が活発になっていきました。
「理念」から新たなビジネスモデルを構築

安本氏は2016年に経営指針セミナーを受講しますが、「自社の役割、このままのビジネスモデルで発展はあるのか?」との疑問があり経営指針は完成しませんでした。これを機に社内で会議を重ね、リサイクル事業に目を向けるようになります。その過程で、「プラスチックに関わるものづくりを通じ、関わる人が幸せになる会社」という理念が形づけられていきました。そして、数ある社会課題のうち①自社がやれること、②自社がやりたいこと、③社会から求められていること、④収益性、この4つがリンクした部分を事業化していきます。
一つは、環境汚染が問題になっていることもあり、一般家庭プラスチックごみを回収し、物流パレットに再生してリサイクルする新規事業を国や自治体と連携して進めることにしました。
二つ目は、AIセンター向けのケーブル用トラフの開発・販売です。地下にケーブルを通すための部材で、従来はコンクリート製が中心でしたが、再生プラスチック製品として提案し、総工事費では安くなることもあり、採用が進んでいます。
三つ目は、下水道老朽化補修材です。コンクリート製下水道は腐食し、更新工事には大きな費用がかかりますが、コンクリートの上から補修材を貼る工法を大手ゼネコンと共同開発し商品化を進めています。ワカクサでは、大手メーカーや大学などとも連携し新事業の開拓に挑戦しています。
こうしてビジネスモデルができることで、日々の仕事の先が「経営理念」や「ビジョン」につながっているという実感も確立していきました。
「社員主導」の会社へ
ワカクサでは現在、評価制度(成長支援制度)も社員主導でつくっています。安本氏が全国の同友会企業から資料を集め、社員がそれを基に自社向けに組み立てます。自社の仕組みの99%は全国の同友会会員の実践を参考にしているといいます。自身はトップダウンをしないと明言する安本氏。それは、「自分たちの環境は自分たちでつくる」ためであり、社員自身も他責にせず、自らの幸せややりがいは自らの手からつくりだしてほしいからです。その手段として経営指針書をみんなでつくり一つ一つ実現させています。
| (株)ワカクサ | |
|---|---|
| 設立 | 1965年 |
| 資本金 | 1,000万円 |
| 従業員数 | 48名 |
| 事業内容 | プラスチック製品企画・製造・販売、OEM事業、資源循環事業 |
| 経営理念 | PLASTICに生命を吹込む「ものづくり」を通じて、関わるひとが「幸せになる」会社。 ~感謝と愛を持って、三方よしを追求する~ |
| 住所 | 奈良県葛城市兵家227 |
| 電話番号 | 0745-48-2177 |
| URL | https://wakakusa-ltd.co.jp/ |










