【第26回】社員が安心して働き続けられる会社づくり~経営者の覚悟と指針経営の実践~ サツマ電機(株) 代表取締役 梶川久美子氏(静岡)

サツマ電機(株) 代表取締役 梶川久美子氏(静岡)

 静岡県東部の沼津市にあるサツマ電機(株)(梶川久美子代表取締役、静岡同友会会員)。東名高速道路沼津インターから約5分の工業団地でクレーンやベルトコンベア、河川の水門に使用される産業用ブレーキの設計開発・製造・販売をしています。1970年に祖父が創業、2016年に4代目社長として梶川氏が就任しました。同友会には2013年6月に入会、現在は女性部ダイヤモンドカレッジの会長を務めます。

 大学卒業後、東京で就職した梶川氏は東日本大震災の被災地ボランティアに参加。被災者の方からの言葉をきっかけにこれまでの人生を振り返り、支えてくれた人に恩返ししたいと静岡に戻ることを決意しました。

社員の不安を取り除く経営者としての覚悟

 梶川氏は2013年5月に専務として入社。当時はリーマンショックの余波で経営は赤字でした。社内では社員の不満が募り、会社の雰囲気が暗い状況でした。梶川氏はまず社員の考えを知ろうと面談やワークショップを実施。現状に対してさまざまな意見が出ました。給料が高く休みが多い会社を社員が望んでいると受け止めた梶川氏は一念発起し「社員が本当に望むことを経営者として実現しよう」と決意しました。

言語化により社内の連携を強化

 入社当時、先代と社歴の長い社員は阿吽の呼吸で業務を進めていました。しかし、それを理解できる人ばかりではありません。社員との共有や業務間の連携に言語化が必要と考え、2014年に経営指針書を作成しました。社員が生き生きと働ける会社、社員が支え合い成長し合える土壌を作ると改めて覚悟を固めました。特に強化した取り組みは社員共育です。製造に関わる技術的な内容とコミュニケーションの研修を取り入れました。内容もさることながら、社員同士がグループワークを行うことでお互いを知る機会となりました。現在は、月1回の研修の中で“人として何が大切か”の思いが醸成され、その結果、担当業務を越えた社内連携が深まっていきました。経営者一人ではよい会社はつくれないと語る梶川氏。社内の小さな要望や意見を汲み取り言語化し、リーダーを中心にディスカッションしながら、会社全体の改善に繋げ、経営者と社員の信頼関係を日々築くことを実践しています。

社員の思いを経営指針書に落とし込み、社員とともに働きやすい会社をめざす

 指針書には社員の声を反映し、経営者と社員の約束事を決めました。例えば年間休日は現在120日、毎年1日ずつ増やし130日をめざすとしています。給与のあり方も記しました。指針書に記すことで社員も達成すべき目標への理解が深まり主体的に会社に関わる風土ができてきました。

 会社の付加価値と生産性向上にむけ①ブレーキの講習会、②NEWSレター発行、③短納期化、④社員の多能工化の4点を重点的に取り組んでいます。ブレーキ講習会はお客様の会社でメンテナンス技術の引き継ぎが課題となっており、その解決のために始めました。NEWSレターは製品のよくある質問を解決できる内容やサツマ電機からの案内をお届けし、お客さまとの関係構築を図っています。近年は原材料高騰の影響が大きく製品の値上げが不可欠になりました。サービス価値を向上するためより短納期への対応に注力しました。社員の多能工化にも磨きをかけています。会社のめざす姿を指針書に落とし込むことで経営者の覚悟がより強靭なものになりました。

誰もが活躍できる社会にむけて

 ある時社員から「子どもを預ける先がない」と悩みを聞きました。人口減少、少子高齢化は地域社会の大きな問題です。会社には介護している人、子育てをしながら働く人などさまざまな社員がいます。梶川氏は「男女関係なく誰もが安心して働ける社会にしたい。工業団地内に企業主導型保育園と老人ホームを作りいつか地域にとって大事なコミュニティとなる場を作りたい」と活力あふれるコミュニティづくりへの夢を語ります。

サツマ電機(株)
設立年 1970年2月
資本金 1,000万円
従業員数 正社員(嘱託社員含む)35名 嘱託社員(65歳以上)7名 パート1名
年商 5.5億円
事業内容 クレーン、一般産業機械・圧延補機用ブレーキ、電子ユニット、ハンドリフター
住所 〒410-0001 沼津市足高292-26
電話番号 055-921-2577
URL https://www.satumadenki.co.jp/