【第45回】社員と未来を共有し、ものづくりを次世代へつなぐ (株)加藤木工 代表取締役 加藤 宜之氏(茨城)

(株)加藤木工 代表取締役 加藤 宜之氏(茨城)

永く愛される家具に込めた、受け継がれる価値観

 茨城県城里町にある(株)加藤木工(加藤宜之代表取締役、茨城同友会会員)は、1945年創業の家具・建具製造業です。住宅や店舗の特注家具・建具を中心に、お客さまの要望を一つ一つ形にするオーダーメイドのものづくりを手がけています。同社が大切にしているのは、「永く愛される家具をつくる」こと。耐久性、メンテナンス性、美しさ、木目や材料の向きにまで心を配り、使う人の暮らしの先を想像して製作するその姿勢は、先代や職人たちから受け継がれてきました。加藤氏は、もともと建築家を志していましたが、赤字経営だった同社を立て直すため家業へ戻ります。建築家やお客さまと共にものづくりをしたいという思いが、現在の特注家具づくりの原点となっています。

社員の問いが、経営者としての転機に

 加藤氏が家業に入った当初、職人の世界には「この仕事に未来はない」という空気もありました。それでも、先人たちの技術、伝統を守りたいという思いから、同世代の仲間と共に新規取引を増やし、売上を伸ばして社員数も増えていきました。仕事を取ることが経営者の仕事だと考え、選別なく仕事を受けていましたが、会社は忙しくなった一方で、社員たちは何をめざして働いているのかが見えず、退職や転職を考える声も出始めました。社員から投げかけられた「この会社はどこへ向かっているのですか」という問いに答えることができず、社員と未来を共有できていなかったことへの気づきが、経営指針づくりへ向かう大きな転機となりました。

理念を社長だけの言葉にせず、社員と語り合う

 経営指針づくりを通して、加藤氏は自社が大切にしてきた価値観を改めて見つめ直します。先代や職人たちが大事にしてきた「よいものを永く使ってもらう」「お客様の未来を想像してつくる」という姿勢は理念として言語化されました。加藤氏が大切にしたのはそれを社長だけの言葉にしないこと。毎月の全体会議では、理念の中にある「誇り」「ものづくり」「美しい時間」といった言葉を一つずつ取り上げ、社員がそれぞれどう受け止めているのかを出し合うようにしました。ある社員にとっての誇りとは家族に胸を張れることであり、別の社員にとっては一流の技術者になることでもある。解釈は一人一人違っても、対話を重ねることで理念は共有され、会社としての判断基準になっていきました。

プレーヤーから、社員が役割と責任を担う組織へ

 以前は、社長や専務が自ら打ち合わせから設計、製作、取付までを一貫して担う「プレイングマネージャー」の体制でした。ところが、受注が増えると責任者に負担がかかり、属人化による業務の停滞を招いていました。そこで加藤氏は、自分が担っていた仕事を洗い出し、設計、製作、現場などの役割に整理して、社員に役割と責任を渡していきました。現在は、目標を決め、工程を話し合い、安全面についても朝礼で意見を出し合うなど、社長がすべてを見なくても仕事が進む体制へと変わりつつあります。経営者が一方的に指示するのではなく、社員が自ら考え、関わる社風が育ち始めています。

共に育ち、次世代へつなぐ「ものづくりが集まる遊び場をつくる」

 加藤氏が掲げる大きなビジョンは、「ものづくりが集まる遊び場をつくる」こと。自社の工房にとどまらず、椅子張り職人、陶芸家、作家、設計者、カフェ、ギャラリーなど、さまざまな人が集まり、ものづくりが完結する場所をつくりたいとの思いが込められています。若い世代へ技術と価値観をつないでいくため、採用では理念やビジョンに共感する人との出会いを大切にしています。社員が胸を張って「この会社で働いている」と言える会社へ。加藤木工の実践は、社員を最も信頼できるパートナーと考え、共に学び、共に育ち、地域に根ざしたものづくりを次世代へつなぐ中小企業の姿を示しています。

(株)加藤木工
設立年 2018年
創業年 1945年
資本金 100万円
従業員数 10名
年商 1.7億円
事業内容 家具建具製造業
住所 茨城県東茨城郡城里町粟726-1
URL https://katowoodworks.jp/