【第7回】幸せを感じて働き、暮らせる地域に向けて (株)東海テクノ 代表取締役 市田 明氏(三重)

(株)東海テクノ 代表取締役 市田 明氏(三重)

社員を大切にする経営への転換

 三重県四日市市にある(株)東海テクノ(市田明代表取締役、三重同友会会員)は、1972年の創業から、環境の調査や分析を中心に、品質受託試験や農業を支援する分析など、仕事の幅を広げてきました。人手不足が課題の中、東海テクノは「働く人を大切にする」経営を重ね、地域に根づく会社をめざしています。市田氏が社長になったとき、最も力を入れたのが「社員をお客さまのように大切にする」という考え方でした。もともと技術や営業の現場で長く働いてきたわけではなかったため、まずは社員一人一人と面談を重ね、そこで聞いた声を会社づくりに生かすことから始めました。

社員の声を生かすしくみづくり

 大きなきっかけとなったのが、役員の何気ない一言に、社員から抗議の声が上がった出来事です。社長交代から間もない時期に、社員の信頼を損なうことだけは避けたい――。そう考えた市田氏はすぐに社員全員に謝りました。そしてそれまで部長や役員も見ることができた「意見箱」を、社長だけが読む仕組みに変えました。立場を気にせず社員が本音を伝えられるようにし、その声を自ら責任をもって受け止めるためです。それ以来、「素直に言えば、ちゃんと受け止めてもらえる」という安心感が社内に広がり、毎月の会議には現場からの提案が次々と届くようになったそうです。

 面談を通じた社員の声から評価の仕組みも見直しました。会社の目標を部署や個人の目標に落とし込み、成果が評価につながるようにしました。あわせて理念について話し合う研修やグループディスカッションを重ね、社員が自分の仕事と会社の考え方のつながりを感じられる場を増やしました。新しく入った社員には、年齢の近い先輩が仕事だけでなく生活のことまで相談に乗る「里親制度」を用意しています。困ったときに気軽に頼れる存在がいることで、早くに辞めてしまう社員を減らすことにもつながっています。

同友会の仲間から学んだ工夫

 採用では、大学との付き合いを大切にすることや、社員からの紹介に加えて、奨学金の返済を会社が支援する制度を取り入れました。このアイデアは、同友会の仲間である会員企業から教えてもらったもので、奨学金を利用している社員は少なくなく、就職先を選ぶ決め手の1つになっているようです。また、健康診断の内容についても、同友会の会員企業による講演をきっかけに、女性や男性それぞれがかかりやすい病気の検査項目を加えるなど、社員の声を形にしてきました。会員企業とのつながりが、日々の職場づくりのヒントになっています。経営指針は同友会の仲間に相談しながら磨き、学び合いながら会社づくりを進めています。

社員が主役の、これからの挑戦

 最近では、社員自身のアイデアから生まれる新しい取り組みも増えています。もともとの強みである環境分析の技術を生かした、顧客自身が現場で瞬時に測れるセルロース分析のソリューションは、大手の自動車メーカーにも採用されました。市田氏は将来、環境やアグリ、品質管理といった事業ごとに会社を分け、社員それぞれが経営者として活躍できる仕組みをつくりたいと考えています。

 さらに市田氏は、人が幸せを感じながら働き、暮らせる商品や職場、地域を共につくりたいと考えています。その一環として、いわゆる「幸せホルモン」と呼ばれる、人の活力や心身の状態に関わる指標を測定・可視化し、職場や地域づくりに生かす新たな分野への挑戦も温めています。「会社を潰さない」という思いから始まった経営は、社員が自分で考え、動く会社へと少しずつ姿を変えてきました。同友会での学びを重ねながら、人を生かす経営を積み重ねる東海テクノの歩みは、人手不足の時代を生き抜くための、地域の会社にとっての1つのヒントになりそうです。

(株)東海テクノ
設立 1972年(昭和47年)12月
資本金 5,000万円
従業員数 135名(2026年4月現在)
年商 20億円
事業内容 環境計量証明・分析、品質評価試験、農業支援分析、労働安全衛生関連サービス、環境コンサルティング等
住所 〒510-0023 三重県四日市市午起二丁目4番18号
電話番号 059-332-5122(代)
URL https://www.tokai-techno.co.jp/