【第11回】ものづくりで新たな価値創造と社会課題解決をめざす 【第11回】ものづくりで新たな価値創造と社会課題解決をめざす (株)筑紫工業 代表取締役 新内 一秋氏(福岡)

(株)筑紫工業 代表取締役 新内 一秋氏(福岡)

「人は決して借り物ではいけない」創業の精神を受け継ぐ

 (株)筑紫工業(新内一秋代表取締役、福岡同友会会員)は、木製建具・内装造作材の企画、設計、製作、施工など住宅リフォーム専用商品の製作販売をしており、近年では不動産事業、リノベーション事業を展開しています。同社は1973年のオイルショック時、先代の新内三千秋氏が工場長を務めた大手パルプ会社の木工部門工場で工場閉鎖・解雇の指示を受ける中、「部下を路頭に迷わせてはならない」と、木工部門の社員11名と共に独立したことから始まりました。創業以来、「人は決して借り物ではいけない」という精神のもと、全社員を正社員として雇用。人を大切にし、社員と一心同体で歩むことで「美しい企業」をめざしてきました。子どもの頃から父の背中を見て育った現在二代目の新内一秋氏も、この精神を受け継ぎ、社員と共に数々の経営危機を乗り越えてきました。

リーマン・ショックで売上が3分の1に。「売上至上主義」からの転換

 新内氏は1990年に同社へ入社し製造部長を任されました。納期の遅れなどの対策から始まり、従来の手形決済をやめ資金繰りの安定化に取り組み、1992年に入会した同友会では2001年に経営指針セミナーに参加して利益管理に取り組みます。2003年には42歳で代表取締役に就任しますが、2005年の姉歯耐震強度偽装事件に伴う建築確認遅滞問題や、2008年のリーマン・ショックの金融危機により、わずか2年で売上は13億円から3分の1に激減しました。

 危機を乗り越えた背景には、同友会の先輩の助言から取り組み始めた「売上額1%貯金」で厚くした手元資金がありました。セーフティーネット融資や雇用調整助成金も活用し、社員の退職勧奨等の厳しい経営判断を迫られながらも、できる限り社員の雇用を守る努力を続けました。この経験を機に「売上至上主義」から粗利率や限界利益を重視する経営へ転換。仕入れや工程、固定費を見直し、利益計画と実績の差異を分析する仕組みを整えました。会社の数字を社員と共有することで、ただ不安になるのではなく一人一人が危機感も持って経営を自分事として捉える土台を築いていきました。

危機を乗り越えた原動力は、社員の声だった

 大きな転機は、全社員ミーティングでの対話でした。「仕事がない、足りない」という状況に対し、社員から「わが社の製品の品質は落ちていないのか?」と売上が落ちた原因を自社内で見つけようという姿勢がみられました。全社一丸で危機感を共有することで、経営環境だけのせいにせず、自社のものづくりの原点を見つめ直すきっかけとなりました。経営指針書の作成や朝礼での輪読、社員アンケートを通じて意見や要望を集め、会社として一つ一つ「すぐできること」「すぐにできないこと」「やらないこと」などを回答することで、信頼関係を深めていきました。

 これらの成果は新事業にもつながり、2010年には既存の窓やドアに化粧フレームをかぶせて短時間で刷新する独自の工法「Re-mado(リマド)」「Reドアー」を開発し、特許を取得。新築中心の事業から改修・リノベーションへと領域を広げ、新たな顧客と仕事を生み出し、2012年に黒字化に転換できました。

次世代へつなぐ、社会課題解決とものづくりの精神

 現在同社は、ものづくりの強みを生かした新たな価値創造と社会課題の解決をめざしています。これまでのリノベーション技術の蓄積を生かし、ゼネコン下請け中心のBtoB事業から脱却するため、30代の子育て世代をターゲットとしたFC方式で住宅リノベーション事業を始め、BtoC領域に進出しました。資材価格高騰により新築市場の頭打ちが予測される中、手頃で安心な価格をお客さまに提供するとともに、深刻化する空き家問題の解決に社会貢献することをめざしています。さらに、リノベ不動産事業への進出により、エンドユーザーのニーズや声を聞けるようになることで、建具など本業の新開発研究に生かすことを狙っています。オリジナル造作家具のパターンオーダー化なども構想しつつ、自社の強みをさらに生かした独自のビジネスモデルの構築をめざしています。

 社員と共に幾多の危機を乗り越えてきた筑紫工業。ものづくりの精神を礎に、社会課題の解決と次世代への承継を見据え、これからも挑戦は続いていきます。

(株)筑紫工業
設立年 1973年7月6日
従業員数 35名
年商 6億円
事業内容 木製建具・内装造作材の企画、設計、製作、施工。住宅リフォーム専用商品の製作販売。不動産事業、リノベーション事業。FC「リノベ不動産」福岡那珂川南店
住所 福岡県那珂川市片縄東1-26-19
電話番号 092-952-5468
URL https://www.chikushi-410.com/