【第8回】企業城下町で自立の道を模索-(有)日電舎 社長 弓野 博司氏(茨城)

~協業で独自商品の開発と販売ノウハウの獲得~

(有)日電舎 社長
弓野 博司氏(茨城)

社員が誇りの持てる仕事をしたい

 「人の図面どおりに作っているだけではつまらないでしょ。誇りが持てない」。開口一番、(有)日電舎社長の弓野博司さん(茨城同友会会員)はこう語りました。

 日電舎は、企業城下町、茨城県日立市にあって、日立製作所(地元の人は日製「にっせい」と呼ぶ)重電部門の下請け企業です。電力用・配電用の乾式変圧器、計器用変成器などの製造、販売をしています。

 「大企業のマークの下で言うとおりに仕事をしているだけでは、社員もプライドが持てないし、ただの下請けとしか見られない。とにかく自立したかったんです。自分たちで製品を企画開発して、自分たちで売り歩くことを始めました」。

販売ノウハウを実地に学ぶ

 1995年、今から10年前、下請け製造業は販売のノウハウがないから、それを学ぼうと日立市内の製造業3社で、MRG(Media Reserch Groupe)というグループを作り、独自商品の開発と販売に乗り出しました。MRGは、同友会会員の(資)日立工業所と(有)日電舎、会員ではない(株)高橋工業の3社で構成し、病院で看護師が使用する小型端末、腰が疲れない座椅子などを開発しましたが、どれも失敗。そこで、お金も手間もかかる独自商品の開発ではなく、今ある商品を取り扱うことで販売のノウハウを学ぼうと方針転換しました。

 ドイツの特許を使用し、韓国で製造している「DUO BACK」という椅子の背もたれや逆浸透膜をフィルターにして純水に近い水を作る浄水器「SORGENTE」などを販売しました。MRGが取り扱う商品は、広告を出したり、テレビや雑誌に取り上げてもらった当初は売れましたが、順調に売れているわけではありません。しかし、何にでも積極的に取り組み、失敗にもめげない弓野さんは、ひとなつっこく陽気でまわりの人をうまく乗せてしまいます。その人柄もあってかMRGもうまく機能しているようです。

 販売ノウハウを学ぶ過程で、自社商品の開発を進めていた日電舎は、ついにヒット商品「セイフティ絶縁クリップ」を産み出しました。

 「セイフティ絶縁クリップ」は、電気接続の際に使うクリップに絶縁処理を施すことによって、感電事故や短絡事故を防ぎます。この商品は、平成8年度茨城県工業技術開発奨励賞を受賞し、実用新案登録もしています。この自社開発商品が、現在は、月に1万個も売れる商品に育っています。

経営指針を作り、社員の幸福を考えたい

 弓野さんは昨年の中同協岡山総会で分科会のグループ討論に驚かされたと言います。「グループ討論を初めて体験してこれが同友会なんだと思いましたね」。また同友会では「経営指針、経営指針」と繰り返されますが、それにも違和感を持っていました。しかし、5月14日の茨城同友会総会で(株)太郎庵の目黒督朗さん(和洋菓子製造販売 福島同友会会員)の講演を聞いた弓野さんは、深く反省させられたと言います。「俺は、経営指針も作っていなかったし、あんなに社員のことを考えていただろうか」と。

 弓野さんは、2003年2月入会ながらも4月1日から日立支部長を務めています。会員数が減少していた日立支部も、明るく陽気に自立を模索している弓野さんを支部長に迎え、大きく変わっていこうとしています。

会社概要

 創業:1966年6月
 設立:1984年11月
 資本金:500万円
 年商:2億円
 従業員数:20名
 事業内容:電気機器(各種乾式変圧器、変流器)の製造
 所在地:茨城県日立市東金沢1-12-15
 TEL:0294-36-1652
 URL:http://www.nichidensha.co.jp/