【第38回】「文化」をもつ建物にするのが“不動産管理業”の目標-吉原住宅(有)部長 吉原 勝己氏(福岡)

吉原住宅(有) 部長
吉原 勝己氏(福岡)

古い建物の「弱み」を「強み」に

 不動産管理を主な業務とする、吉原住宅(有)(吉原勝己部長、福岡同友会会員)は、自社物件を自社管理した上で,米国の不動産管理の手法を取り入れることで同業他社との差別化をはかり、より高い顧客満足をめざしています。同社の歴史と比例して管理物件は古いものが多く、ともすれば「弱み」にもなるものが、さまざまな取り組みで、むしろ「強み」にしているというユニークな試みをおこなっています。

 吉原氏は1961年に博多の中心部清川で生まれ、地元小中学校、高校・大学を経て、東京の大手企業医薬品開発部門の仕事に従事。海外との熾烈な競争に身を置き、多くの得がたい人との出会いとあわせて、「薬は情報のかたまり」という学びもありました。

 事業継承のため帰福後、2002年に同友会に入会。積極的に参加し、最も学んだことは、経営革新の必要性とそこにかける会員の方々の思いや取り組みでした。多くの交流を通じて会員同士のコラボレーションにもつなげるとともに、現在所属している南支部の経営革新委員長として、若手リーダーの1人になって活躍しています。

活動テーマは「不動産」「再生」「コミュニティ」「街の活性化」「産学連携」

 吉原住宅(有)の活動テーマは、「不動産」「再生」「コミュニティ」「街の活性化」「産学官連携」の5つに整理することができます。

 「再生」では、古い建物でも最新のハード(技術)とソフト(アイデア)を用いれば、壊さずに再生でき、逆に古いことがよい特徴になりうる可能性があることを重視。現在「リノベーション賃貸(再生デザイナーズ賃貸マンション)」に、同友会会員の他業種の方と連携して取り組んでいます。

 「コミュニティ」としては、賃貸ビルの価値や使い心地は、ハード(設備)よりもむしろ入居者間の連携にあるとして、天神パークビルでは1階に「エントランスカフェ」を開き、屋上緑化と開放にも取り組み「ビオト-プ(自然生態系の構築」)をめざすなど、入居者のコミュニケーションを図っています。
 「街の活性化」については、建物はその「土地の文化」の発信基地と位置づけ、簡単に壊さずに活用することで環境問題もあわせて取り組んでいます。建物は「不動産」というように動かせないため、どんな地域に立っているかでその価値は変わります。地域活性化に取り組むのは必然の流れとして積極的なかかわりを続けています。

 最後に「産学連携」においては、特にデザイン系学生によるスペースリファインプロジェクトを通じて古い物件の再生の試みやアートイベントを企画するなどユニークな試みも続けています。(この取り組みは、屋上利用提案競技2006において「優秀賞」を受賞しました。)

建物は引継ぎ、受け継いでいくものという文化を

 2005年末に明らかになった、建物耐震強度偽装事件をみても、従来建築の発想は、何年先に「壊すか」という発想が主流でしたが、欧州の建物の発想は引継ぎ、受け継いでいくものという文化になっています。不動産を考える上で避けて通れない「利回り」という点から見ても、今後新たな価値観として広がっていくことが期待されます。

会社概要

 創業:1965年
 従業員数:7名(内パート3名)
 資本金:500万円
 年商:1億8000万円
 事業内容:テナントビル・賃貸住宅マネージメントおよび医薬論文翻訳
 所在地:福岡市中央区大名2-8-18天神パークビル9F
 TEL:092-721-5530
 e-mail:yiu36930@nifty.com
 URL:http://www.tenjinpark.com/