【第30回】港町気仙沼から船出「アンカーコーヒー」物語(株)オノデラコーポレーション 専務 小野寺靖忠氏(宮城)

小野寺専務

(株)オノデラコーポレーション 専務 小野寺靖忠氏(宮城)

アンカーコーヒー設立の思い

シアトルスタイルのコーヒーショップ

 小野寺靖忠氏((株)オノデラコーポレーション専務、宮城同友会会員)は海外での留学・就職を経て27歳で宮城県気仙沼市に帰郷しました。

 2003年からアメリカ北西部でイワシの買い付けを始めると同時に、シアトルを中心にしたコーヒーショップの研究を始めました。シアトルは大手のコーヒーショップの力が強く、他の中小規模の店は苦戦していましたが、その中でも道沿いにつくられた「ドライブスルー型」のコーヒーショップはコアなファンをつかんでいました。アメリカでは1990年代からコーヒーショップが急増し、小野寺氏も学生時代にはよく利用していました。

 気仙沼に帰った小野寺氏はカフェラテを飲みたくても店がないことに気づきました。「豊かさとは選択肢が豊富にあること。アメリカも東北も基本的には車社会であり、生まれ育った気仙沼に少しでも豊かな選択肢があればいいな」と考えた小野寺氏は、シアトルスタイルのコーヒーショップを地元気仙沼につくることを決意し、2005年に「アンカーコーヒー」1号店をオープンしました。

東北の可能性を模索

 小野寺氏は事業を始めるうえで東北にはどのような可能性があるのかを模索しました。東北地方6県を合わせると人口は963万人の世界第85位で、下位はスウェーデンやデンマークやスイスなどです。GDPは33兆円の世界第26位で、下位はギリシャやポルトガルなどです。

 このことを知り小野寺氏は「『東北』で1位になることは、こうした各国で1位になることよりも素晴らしいことだ。東北というマーケットはとても恵まれている」と考えました。小野寺の父親である社長には「気仙沼に戻ってこい」と言われたことはありません。しかし「幸せ」を考えた時に、生まれ育った気仙沼で親と一緒に暮らし、子どもを育てていくことに小野寺氏は大きな意義を感じました。

アンカーコーヒーの行動指針とこれから

社内風景

 アンカーコーヒーでは「店長」を「キャプテン」、「スタッフ」を「クルー」と呼び、店舗を1つの船としてとらえています。同社が1号店を出すことで、気仙沼で朝6時半からいれたてのコーヒーを飲めるという選択肢ができました。

 小野寺氏は、「お客様により幸福で豊かなライフスタイルを提供していることを感じながら取り組んでいる」と言います。社員とは「常に世界最高水準を目指そう」という思いを共有しています。コーヒーは嗜好(しこう)品ですから「世界一」とは決められませんが、自分たちの行動については「世界最高水準」という自負が持てるように、常に環境を整えていきたい考えです。

 今後、「お客様のためのスーパーポジティブ(積極的な)集団の育成」をベースに、2015年までに東北に50店舗の展開を目指しています。小野寺氏は「自分たちがやるべきことをきちんとやっていれば自然とそうなる」と考え、また店舗拡大を推進するために、2~3年かけてキャプテンに計数管理や人材育成について集中的に学んでもらい、社長になって巣立ってほしいと考えています。

 「私の夢はアンカーコーヒーにかかわる全ての人たちが満足と喜びと幸せを感じてくれること」と語る小野寺氏、今後を考えるときに重要なこととして「品質の伴わない成長は選ばない。品質には人や店や商品の品質があり、成長よりも品質を選ぶことで結果的に成長できると思う」と力強く語りました。

会社概要

設 立: 1997年
資本金: 600万円
社員数: 40名(パート含む)
業 種: 輸出入業及び飲食店経営
所在地:宮城県気仙沼市魚市場前7番13号3F
TEL:0226-23-8091
FAX:0226-24-4566
URLhttp://www.anchor2fullsail.co.jp/index.html

どうゆうみやぎ No.209(2008年11月号)より