シリーズインデックス:付加価値を高める

【第1回】農業ビジネスに付加価値を見出す!  (有)さかうえ 社長 坂上隆 氏(鹿児島)(2010.04.07)

 坂上社長 (有)さかうえ 社長 坂上隆 氏(鹿児島)

 坂上隆氏((有)さかうえ社長、鹿児島同友会会員)は、鹿児島を離れていた大学時代に「自然を相手にする農業で生きていこう」と思い、24歳で就農しました。
 鹿児島県の大隅半島に位置する志布志市で作付け面積150ha(東京ドーム約100面分)の広大な土地に主に青汁用ケール、ポテトチップス用じゃがいも、焼酎用のさつまいもを栽培しています。

芝の栽培から野菜の契約栽培へ

 ケール畑  1992年の帰郷した当時は、父が芝の生産・販売を行っていましたが、バブル崩壊による芝の需要減少や冬場は畑が暇になること、野菜技術を習得したいという思いに駆られ、1995年に市場向けの青果用大根の栽培を始めました。しかし、儲け欲が強かったことや情報を鵜呑みにしたことで散々たる結果となりました。

 それが引き金となり、農産物というモノを高く売るという考え方を捨て、モノを売るのではなく、取引先が必要とするサービスを売る仕事に経営の考え方をチェンジしました。それ以来一貫して、付加価値をもった商品・サービスを開発・展開してきました。

 まず、市場価格に左右されない契約栽培に着手し、1996年にコンビニ向けのおでん用大根、1999年には、青汁用のケール、翌年はポテトチップス用じゃがいも、さらにその翌年には鹿児島の名産である焼酎原料のさつまいもの栽培を始めました。

飼料ビジネスの展開~環境にやさしい耕畜連携

 大根を栽培していたころ、線虫防除対策に多額の農薬費を投入していました。加えて、環境汚染に加担しているのではないかという責任も感じていました。そこで、緑肥作物に目を付け栽培を開始。農薬費を削減すること、さらに緑肥を全量すき込むことで土壌改良にもつながりました。

 2002年のある日のこと、たまたま通りかかった酪農家に「すき込むくらいなら餌にするからわけてほしい」と言われました。当時、飼料は外国から安くて良い物が入手でき、国内で飼料を大規模に作るのは馬鹿だと思われていた時代です。早速、坂上社長は酪農家を訪問し、御用聞きに回りました。すると、国際マーケットの動向によって価格が乱高下し、飼料管理が不安定になること、頭数を増加し規模拡大をする中で飼料作物栽培にかける時間が大きく不足しているという事情が分かりました。

サイロール  飼料作物供給がビジネスになると考えた坂上氏は、試行錯誤の結果、デントコーン(飼料用トウモロコシ)を使用すれば茎と葉・子実が利用できるため濃厚で栄養価の高いものができる、飼料をロール成形すれば品質の低下がない、という結論に至りました。収穫したコーンを一度バンカーサイロに詰め込み・踏圧し、3カ月程度発酵させた飼料を取り出し、すぐにロールに再成形する独自のノウハウを開発しました。「サイロール」という商品名で地元を中心に県内外に供給しています。

 このようなサービスモデルにはさまざまなメリットがあると坂上氏は言います。自社としては、連作障害の回避、農薬の低減、夏場の耕地の有効活用、年間を通じての安定雇用、飼料を大規模で生産することによるコストの削減で安価での供給が可能となりました。
 また、お客である畜産サイドでは、飼料作物生産の投資が不要になる、家畜管理に専念できる、高齢者畜産農家も飼養が継続できる、さらに、家畜排泄物が畑で活用されることで地域内循環し、資源循環型の持続的な農業が実現できるなど、多くの可能性を秘めているのです。

羅針盤である経営指針書

 同じ農業法人の経営者に勧められ、同友会には、2007年に入会しました。すぐに、経営指針セミナーに参加し、経営指針の成文化に取り組みました。さまざまな事業を進めていくなかで、家業から企業への転換をしなければならないと考えたからです。

 何百時間もかけて作った経営指針書は、社員教育の考え方にブレが生じたり、事業の方向性に悩んだりするときは必ず読み返します。また、何をすべきか、何が求められているか社員に伝えられ、社員が自ら考えて行動する基準になっています。

 現在、さかうえでは商品を売り込みに行かず、見込み客にはまず指針書を読んでもらうことにしています。「経営者の頭の中が相手に伝わる、最強の営業ツール」と坂上氏は言います。

農業経営のIT化「農業工程管理システム」

 従来の農業では、今年は収穫がよかった、相場がよかった、など年に一度の成功体験が語られてきました。顧客にモノを安定的に供給するためには、「質・量・時間」をどのようにプランするかが必要です。さかうえでは、多様な圃場でさまざまな作物を栽培するため、1998年から表計算ソフトを用いて、作付け面積、土壌管理、栽培管理記録等を行ってきました。
 蓄積されたデータをもとに2007年には「農業工程管理システム」を開発し、栽培の効率化や安定供給に役立っています。このシステムは事業拡大を図る農業関連産業や農業生産法人などの生産課題を解決するシステムであると評価され、各地で導入が始まっています。

 さかうえの皆さん  さかうえには「~農幸社~農業で幸せを創る会社」という思いがあります。お客様への約束履行の積み重ねにより、雇用が生まれ、社員が育ち、家族を養い、地域に貢献する、すべては農業を通じて世の中に幸せを届けたいという思いです。2008年から毎年数名の新卒採用を始めました。今年は、採用数の10倍を超える応募がありました。
 地域に根ざした循環型農業をめざしてこれからもさまざまな挑戦が続きそうです。

会社概要

設 立:1995年4月
資本金:315万円
従業員数:35名(うちパート5名)
業 種:契約栽培事業、牧草飼料事業、農業経営IT化事業
所在地:鹿児島県志布志市志布志町安楽2999
URL:http://www.sakaue-farm.co.jp
e-mail:info@sakaue-farm.co.jp

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