【第50回】地域の特性から新たな仕事の創出 (有)コウ・キタダ建築設計工房 社長 北田耕一郎氏(長野)

北田社長

(有)コウ・キタダ建築設計工房 社長 北田耕一郎氏(長野)

経営者として意識・物の見方が変わった

新事業をつくる会

(有)コウ・キタダ建築設計工房(北田耕一郎社長、長野同友会会員)は長野県の八ヶ岳の麓の原村にあります。1年前から毎回車で2時間かけて長野同友会の「新事業をつくる会」に参加してきました。最初は「大学内の装置・施設の研究活動を知り学問を聞いても、自分にはあまり関係ないな」などと感じていた北田氏。何回か参加し、さまざまな分野の方と接するなかで、自分の会社や仕事に対する見方・考え方が「まわりから支えていただいているからこそ」というように、大きく変化していきます。

 この頃、北田氏は、数年前より寒冷地において自然石による蓄熱床暖房を信州に導入したいと思い、全国の寒冷地の事例を調べていました。しかし、どこも蓄熱させる石の乾燥に費用と時間がかかり苦労していました。砕石にして乾燥させ、利用できる石はないかと探しているところでした。

答えは地域にありました!

鉄平石

 そうこうしているうちに、諏訪支部長の宮坂典利氏((株)みのり建設・社長)から諏訪鉄平石を紹介されました。北田氏も職業柄、諏訪に鉄平石があることは知っていました。しかし、諏訪の特産品であるということは、当初知らなかったそうです。また、用途についても、屋根材・床材・壁材・風呂材・庭石など「建材」としての鉄平石でした。例えば、特に蓄熱保温性がよいことは昔から経験的に知られており、全国の温泉・露天風呂で広く使われていました。

 諏訪鉄平石は、諏訪地域の霧ケ峰で産出されます。産出のピークは戦後から1955年頃まで。1965年以降の高度成長期に入るとプレハブ住宅や量産型住宅が現れ、徐々に需要が下降しました。現在の活用は、最盛期の数分の一となり、砕石としては透水舗装や路盤材など「建材」として使われているものの「機能材」としては取り扱われてきませんでした。

 「お年寄りや子供がいるお宅でも安心・低コストで本当に暖かい暖房を!」「諏訪の特産品である鉄平石を機能材として蘇らせ、地域と信州を元気にしたい!」、北田氏はそのような思いと課題を持って「新事業をつくる会」に参加し、さまざまな方々と話していくうちに、(財)長野県中小企業振興センターの職員の方からも積極的なアドバイスをもらうようになりました。

諏訪鉄平石の特性を解析

太子先生

 第2回目の「新事業をつくる会」の際に、最新情報コーナーで信州大学「先端研究施設共用促進事業(運営責任者・橋本佳男教授)」について太子敏則助教から丁寧な説明がありました。現在、日本全国の大学・研究施設など37施設が事業対象となっていて、大学などの研究機関が持っている先端装置を可能な案件については、無償・有償で測定や分析など委託・利用できるという制度でした。

 ちょうど北田氏は諏訪鉄平石を「機能材」として使って蓄熱床暖房の建物を定住型・別荘型でそれぞれ建設し、いろいろと調べている時でした。しかし「語り継がれている鉄平石の優れた特性を科学的に解明したい」という強い願いを持ちつつも、実現できないままでした。そこでさっそく、太子先生の研究室を訪ね相談したところ、要望に応えられる装置があり、「先端研究施設共用促進事業」の活用・協力を得られることになりました。

 北田氏も分析結果などについては、積極的にオープンにしても良いということで、信州大学の共用装置活用事例集などに紹介することができ、信州大学側としても、社会貢献への事例ができ喜んでいる、とのことです。

異分野交流・連携こそ

 「地域の中で埋もれようとしていた資源に再度違った視点から光をあて、地域活性化に繋げていきたい。地域の中で小さくとも沢山の仕事があることこそが強い経済を創ると思う」と目を輝かせながら語る北田氏。そして「地域に貢献する大学であり研究活動を目指して、ますます同友会の皆さんと共に進めていきたい」と話す太子先生。
 2人の姿に地域の未来への明るい希望を感じます。

会社概要

設 立:1989年
業 種:建築士事務所
住 所:長野県諏訪郡原村上里17781-22
TEL:0266-75-3419
URL:http://www1.sphere.ne.jp/country/