シリーズインデックス:わが社の強みは??

【第18回】不況が会社を成長させた (株)中農製作所 代表取締役 中農 康久氏(大阪府)(2011.08.31)

中農氏 (株)中農製作所 代表取締役 中農 康久氏(大阪)

売上半減をチャンスに変える

商品  (株)中農製作所(中農康久社長、大阪同友会会員)は創業61年。社長の父親が東大阪でミシン部品の製造を始めました。その後、受注型企業に軸足を移し、さらに超精密金属切削加工部品をリアルタイムにマーケットに提供できる部品メーカーへと成長。2007年には「飛躍するKANSAIモノ作り元気企業100社」、2008年には「あすの日本を支える元気なモノ作り中小企業300社」を受賞。高い技術力に裏づけられ順調な経営を展開していました。

 その最中に、リーマン・ショックの影響に直面したのです。2008年10月が売上のピークでした。それが、翌11月にはまず自動車関連の売上が半減し、2009年2月には全体の売上が半減してしまいました。落ち込むスピードに対策が追いつきません。しかし2009年5月には、売上が7割に回復し、経常利益では黒字を計上。半年の間に減収増益の体質に変わりました。「特に目新しいことではなかったのですが、やるべきことを行いました」と中農氏は言います。

リーマン・ショックから回復へ

社内の様子  「リストラはしない」の一念で、役員および管理者の給与を一時的に引き下げました。そして、内製化率を高めるため、断腸の思いで外注企業から仕事を引き上げました。また、雇用調整助成金も活用しました。弁理士、弁護士の顧問契約の一時解除、税理士・社労士への報酬の削減など、あらゆる固定費の削減に努めました。

 一方、社員からの自主的な提案がありました。それは「直間比率を変える」ということです。事務所の間接部門の3名が、直接部門である製造現場に出ようと言ってきてくれました。1人は営業担当者が2年間の期限付きで、営業先で技術的な即答ができるスキルを身につけたいとの動機から。あとの2人は生産管理担当者。一人は以前から現場と一緒に管理を進めたいと考えていたそうで、半日は現場、半日は管理を行っています。もう一人は女性で「現場は楽しい」と言ってくれます。これによって、現場に刺激が生まれ全体のモチベーションが上がりました。今は社長以外の給与は元に戻し、外注も戻せるところから順次戻しています。

 現在では、売上はピーク時の7割ですが、経常利益は倍になりました。不況になって時間ができたことが幸いでした。時間がないことを理由にして手を付けていなかったことが多かったのです。中でも知的資産経営報告書は、経営を向上させる大きな手段となりました。

「知的資産経営報告書」の取り組み

 「知的資産経営報告書」とは、企業が有する技術、ノウハウ、人材など重要な知的資産の認識・評価を行い、価値創造につなげることを示すための報告書のことです。売上が半減した2009年2月、帝国データバンクから知的資産経営報告書の作成を勧められました。帝国データバンクとは、4年ほど前に大阪同友会のオンリーワン研究会の勉強会以来の縁で、製品の売り込み先など情報を提供してもらっていました。オンリーワン研究会は大阪同友会の産構研委員会付属の研究会であり、1998年9月創立しました。月例研究会の実施、新製品・新サービス・新事業の開発及び研究・産学官連携など活動を行っています。

 中農氏は「今はそれどころではないし、費用も痛い」と思いましたが、次期社長と相談したところ、彼は「ぜひやりたい」と言うので、「費用は私のポケットマネーを出せばいい」と考え実行に移しました。

やる以上は意義を持たせたいと思い、以下の通り目的を定めました。

1.次期社長の求心力を高める
2.自社のことをもっと知る(知っているようで知らない)
3.活動を公表することで自社のモチベーションに火を点ける(現在の自社と将来の自社に対するコミットメントを決めた)


 次期社長が取りまとめ役となり、メンバー13名を決めて2009年3月にスタートさせました。今振り返ると、わずか半年でこれほど効果を生んだ活動はありませんでした。

経営はぶれてはいけない

社内2  SWOT分析に全社員が参加して、自社の強み・弱みを書き出してもらいました。200枚以上のレポートが集まり、それを掘り下げていきました。

 そこで「社員のモチベーションの高さ」が大きな強みであることに気がつきます。ところが個人面談で「上司に相談しても返事がすぐに返ってこない」と訴えがありました。また、不況下に取引先が10社増えても、ほとんどの社員がその理由を知らないことも分かりました。せっかくのモチベーションを下げてしまうような現状を変えるため、具体的な対策を立てていきました。

 会社の未来像を具体的に示す必要もあります。製品を売るだけでなく、コア技術以外は最適な製品のつくり方と検査方法をセットにして売ることを考えました。すでに実現している製品もあります。「ホームページや会社案内だけでは見えない将来の自社の姿が現れてきます。この報告書は外部に対して嘘をついていない証明でもあり、将来の自社に対する約束でもあります。何かあると自社に返ってきます。ぶれてはいけないし、ぶれることは許されません。知的資産経営報告書が分析のみであったり、経済産業省のフォーマットをなぞって終わったりというケースもあるのではないでしょうか。とことん掘り下げることが一番重要だと思います」と中農氏は言います。 

質の高い経営

 中農氏は大阪同友会オンリーワン研究会の初代代表を務めていました。「中小企業は行政施策に意識が低い。助成金を利用して人材の育成もできる。産学官のネットワークができたのも、研究会で一緒に勉強させてもらったおかげ。知的資産経営報告書などのことは、いくらでも同友会の仲間に公開します」と語ります。

会社概要

設 立:1957年4月
業務内容:金属製品製造業
従業員数:50名
所在地:大阪府東大阪市新町21-26
TEL:072-981-0969
FAX:072-982-4561
URL:http://www.nakanoss.com/

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